'寄宿学校シリーズ──5つの恋短編集

だって、これも愛なの。

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星の涙に願う夜

第五章 「胸のざわめき」

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 昼下がりの中庭。
 リリアはクラスの友人たちと並んで談笑していた。
 その輪の中に、華やかな笑顔を振りまく上級生の姿があった。

 「リリア嬢、今度の舞踏会ではぜひ私と踊っていただけませんか?」
 軽やかに差し出された手。
 周囲の女子たちが小さく声を上げる。憧れの上級生からの誘い。

 リリアは困ったように首を傾げて、けれど笑顔を崩さず答えた。
 「えっと……考えておきますね」

 その瞬間。
 遠くから見ていたカイルの胸に、得体の知れないざわめきが走った。

 なぜ、あの男が彼女に手を差し伸べる。
 なぜ、彼女は笑って応じる。
 なぜ、こんなにも……苦しい。

 「カイル?」
 気づけばリリアがこちらを見ていた。
 彼女は輪から抜け出し、軽い足取りで駆け寄ってくる。

 「どうしたの? 難しい顔して」
 「……別に」
 短く返す。
 だが、視線を逸らすだけで胸の鼓動は収まらない。

 「ふふ、ほんとに無口だね」
 リリアはいつものように笑って、花壇の花を覗き込んだ。
 その横顔を見つめながら、カイルはようやく気づく。

 ──これは、嫉妬。

 誰に向けるでもなく、胸の奥でしっかりと形を取った感情。
 彼女に向けられる他の誰かの視線が、許せない。
 彼女が微笑む相手は、自分であってほしい。

 その想いを、まだ言葉にはできない。
 けれど、自覚してしまった。
 万能で冷たいと評されたカイルが、ただひとりの少女に心を乱されていることを。
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