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星の涙に願う夜
第六章 「はじめての一歩」
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夕暮れの図書室。
窓から差し込む橙色の光が、本棚の背表紙を照らし出していた。
リリアは分厚い本を抱えて、必死にページをめくっている。
「……どうした?」
気づけば、カイルの声が背後から落ちた。
「カイル!」
驚いたように振り返ったリリアの顔が、ふわっと明るくなる。
「うん、明日の試験の範囲……覚えられる気がしなくて」
カイルは無言で彼女の手から本を受け取った。
そして、無駄のない仕草でページをめくりながら、要点を指で示す。
「ここだけ覚えればいい。
それ以外は、出題されない」
「……ほんとに?」
「俺が言うんだ。間違いはない」
言い切る声に、リリアは目を丸くし、それから嬉しそうに笑った。
「ありがとう! カイルってやっぱり頼りになるね」
胸が熱くなる。
普段なら冷たく見えるその言葉も、彼女に向ければ違う意味を帯びる。
彼は視線を逸らしながら、もう一冊の本を手に取った。
「……一緒にやるか」
「え?」
「勉強。……隣に座れ」
リリアは一瞬きょとんとしたが、すぐににっこり笑った。
「うん!」
並んで机に座る。
無口なカイルと、明るいリリア。
沈黙と笑顔が交互に流れる、不思議に心地よい時間。
──もっと近づきたい。
そう思ったのは、これが初めてだった。
窓から差し込む橙色の光が、本棚の背表紙を照らし出していた。
リリアは分厚い本を抱えて、必死にページをめくっている。
「……どうした?」
気づけば、カイルの声が背後から落ちた。
「カイル!」
驚いたように振り返ったリリアの顔が、ふわっと明るくなる。
「うん、明日の試験の範囲……覚えられる気がしなくて」
カイルは無言で彼女の手から本を受け取った。
そして、無駄のない仕草でページをめくりながら、要点を指で示す。
「ここだけ覚えればいい。
それ以外は、出題されない」
「……ほんとに?」
「俺が言うんだ。間違いはない」
言い切る声に、リリアは目を丸くし、それから嬉しそうに笑った。
「ありがとう! カイルってやっぱり頼りになるね」
胸が熱くなる。
普段なら冷たく見えるその言葉も、彼女に向ければ違う意味を帯びる。
彼は視線を逸らしながら、もう一冊の本を手に取った。
「……一緒にやるか」
「え?」
「勉強。……隣に座れ」
リリアは一瞬きょとんとしたが、すぐににっこり笑った。
「うん!」
並んで机に座る。
無口なカイルと、明るいリリア。
沈黙と笑顔が交互に流れる、不思議に心地よい時間。
──もっと近づきたい。
そう思ったのは、これが初めてだった。
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