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星の涙は、幼馴染に落ちて
第二章 「独り占めしたい笑顔」
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昼下がりの中庭。
エミリアは友人たちと談笑していた。
その中に、ひとりの男子生徒が加わる。上級貴族の息子で、華やかな笑みを振りまくのが得意な青年だ。
「エミリア嬢、この本を君にと思って」
差し出されたのは、流行の詩集。
周囲から小さな歓声が上がる。
「ありがとう! でも、こんなに綺麗な装丁……」
エミリアは遠慮しながらも、無邪気に微笑んだ。
その瞬間。
アシュトンの胸に重くのしかかる感情があった。
(……やめろ。その笑顔は……)
彼女が誰かに微笑むのは、珍しいことではない。
いつも明るく、誰にでも分け隔てなく接する。
だからこそ、余計に――。
(どうして俺以外に、そんな顔を)
胸がざわめき、視線を逸らせなくなる。
青年が少し身を乗り出し、彼女に言葉を重ねるたび、手が勝手に強く拳を握っていた。
「……アシュトン?」
気づけば、エミリアがこちらを見ていた。
ぱっと手を振り、嬉しそうに笑う。
「あとでね!」
それだけで、周囲の光景が霞んでいく。
彼女の笑顔が自分に向いた瞬間、胸のざわめきは熱へと変わった。
(俺は……独り占めしたいのか)
自覚したくなかった感情が、はっきりと形を持つ。
守るだけでいいと思っていた。
けれど、もうそれでは足りない。
エミリアの笑顔は、自分だけに向けられていてほしい。
そう強く願ってしまう自分に、アシュトンはただ唇を噛みしめるしかなかった。
エミリアは友人たちと談笑していた。
その中に、ひとりの男子生徒が加わる。上級貴族の息子で、華やかな笑みを振りまくのが得意な青年だ。
「エミリア嬢、この本を君にと思って」
差し出されたのは、流行の詩集。
周囲から小さな歓声が上がる。
「ありがとう! でも、こんなに綺麗な装丁……」
エミリアは遠慮しながらも、無邪気に微笑んだ。
その瞬間。
アシュトンの胸に重くのしかかる感情があった。
(……やめろ。その笑顔は……)
彼女が誰かに微笑むのは、珍しいことではない。
いつも明るく、誰にでも分け隔てなく接する。
だからこそ、余計に――。
(どうして俺以外に、そんな顔を)
胸がざわめき、視線を逸らせなくなる。
青年が少し身を乗り出し、彼女に言葉を重ねるたび、手が勝手に強く拳を握っていた。
「……アシュトン?」
気づけば、エミリアがこちらを見ていた。
ぱっと手を振り、嬉しそうに笑う。
「あとでね!」
それだけで、周囲の光景が霞んでいく。
彼女の笑顔が自分に向いた瞬間、胸のざわめきは熱へと変わった。
(俺は……独り占めしたいのか)
自覚したくなかった感情が、はっきりと形を持つ。
守るだけでいいと思っていた。
けれど、もうそれでは足りない。
エミリアの笑顔は、自分だけに向けられていてほしい。
そう強く願ってしまう自分に、アシュトンはただ唇を噛みしめるしかなかった。
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