「くだらない日常に咲いた恋」 ― 完璧な御曹司と花屋の娘 ―

だって、これも愛なの。

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エピローグ

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季節は移ろい、緑が深く薔薇が咲き誇る頃。
青年は彼女の手を取って、とある屋敷の庭園へと歩みを進めていた。

「……ここは?」
少女が目を丸くする。
大理石の小道に、色とりどりの花々。
噴水が水音を奏で、夕陽に照らされて輝いている。

「かつて、お前が憧れていた庭園だ」
青年は少し照れくさそうに笑んだ。
「俺は……この場所を見せたかった。
 ただ華やかなだけではない、静かで、誰にも邪魔されない時間として」

少女の胸に、じんと温かなものが広がる。
あの日憧れたと言ってしまった庭園。
それを彼は、嫉妬ではなく“贈り物”として連れてきてくれたのだ。

「……きれいです」
「だろう」

青年は花々に囲まれたベンチに彼女を導き、隣に腰を下ろした。
風が二人の髪を揺らし、香りがやさしく包み込む。

「でも……」
少女は微笑んで、彼に寄り添った。
「やっぱり、わたしは花屋の方が好きです」

一瞬の沈黙のあと、彼は苦笑し、そっと彼女を抱き寄せる。
「……くだらない娘だ」
けれどその声には、満ち足りた幸福が滲んでいた。

庭園の薔薇よりも鮮やかに、
ふたりの心は寄り添い合い、
これからを共に歩むことを、静かに誓っていた。
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