『仮面舞踏会の秘密』―夢と恋が出会う夜―

だって、これも愛なの。

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番外編『侍女のひそかな祈り』

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 エレナ様は、いつも控えめなお方だった。
 姉君たちが鏡の前でドレスを競い合っているときも、ただ静かに微笑んで、背を向けてしまわれる。

 本当は――あの方が一番、ドレスを似合うのに。
 そう思うたび、わたしの胸はもどかしくなった。

 舞踏会の夜。
 わたしは小さな決心をした。
 姉君たちに譲られた古い衣装を、夜通し縫い直した。
 銀糸を散らし、裾に淡い花の刺繍を添えて。
 まるで「これは、あなたのためのドレスですよ」と語りかけるように。

 仕上げに仮面を渡すと、エレナ様は不安そうに眉を寄せられた。
 けれど、鏡の中の自分を見た瞬間、ふわりと瞳が光った。
 ――ああ、この笑顔を、誰かに見てほしい。

 わたしは陰から舞踏会を覗いた。
 シャンデリアの下、エレナ様が一歩足を踏み出したとき、周囲の空気が変わった。
 誰もが振り向き、見惚れている。
 そして――ひとりの青年が手を差し伸べた。

 胸が高鳴った。
 あれほど自然に導いてくださる方が、この世にいるなんて。
 エレナ様が楽しげに笑われるのを見て、涙が出そうになった。

 夢のような一夜。
 それがどんな結末を迎えるか、わたしにはわからない。
 けれど、ひとつだけ確信がある。

 ――あのお方の本当の輝きに、気づいてくださる人が現れた。

 そのことを知っただけで、わたしはもう十分幸せだった。
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