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(番外編:お忍びで街へ)
休日の朝。
リリアーナはそわそわと鏡の前で身支度をしていた。
いつもの豪華なドレスではなく、控えめな生成り色のワンピース。
「……ほんとうに、これで気づかれませんか?」
不安げに袖を直すと、背後から低い声が返った。
「大丈夫だ。誰も、君が私の婚約者だとは思うまい」
振り向けば、アレクシスも質素な黒の外套姿。
いつもの威厳を隠すように、帽子を深くかぶっている。
「では……参りましょうか」
リリアーナは嬉しそうに微笑んだ。
***
街の広場は活気に満ちていた。
露店の香ばしい焼き菓子の匂いに、リリアーナの目が輝く。
「まあ! あれ、とても美味しそうです」
「……買ってくる」
アレクシスは財布を取り出し、屋台に並んだ。
だが、その背を見つめていたリリアーナは、隣の小さな子どもに袖を引かれた。
「お姉ちゃん、きれいだね!」
「えっ……ありがとう」
おっとりと微笑み返した瞬間、アレクシスが戻ってきた。
「……リリアーナ」
「はい?」
「……今、笑顔を向けていたのは誰だ」
「え? あの、小さな子です」
「……子ども、か」
安堵したように眉を緩め、それでも彼は焼き菓子を差し出しながら呟いた。
「……無防備すぎる」
リリアーナは頬を赤らめ、焼き菓子を受け取る。
「でも、殿下のおかげで……とっても楽しいです」
その笑顔に、アレクシスの胸はまた熱くなる。
(……やはり私は、君をどこにも隠せない)
人混みの中でも、ただ一人の存在がこんなにも愛おしい。
お忍びの街歩きは、冷徹殿下の心をさらに甘くしていった。
リリアーナはそわそわと鏡の前で身支度をしていた。
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振り向けば、アレクシスも質素な黒の外套姿。
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「え? あの、小さな子です」
「……子ども、か」
安堵したように眉を緩め、それでも彼は焼き菓子を差し出しながら呟いた。
「……無防備すぎる」
リリアーナは頬を赤らめ、焼き菓子を受け取る。
「でも、殿下のおかげで……とっても楽しいです」
その笑顔に、アレクシスの胸はまた熱くなる。
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お忍びの街歩きは、冷徹殿下の心をさらに甘くしていった。
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