【完結】恋ではなくなったとしても
十一年前、彼女は納得して切り捨てられた。
没落した貴族家の令嬢アリーネは、王都の社交サロンで同伴者として生きる道を選んだ。
歳月は、すべてを思い出に変えたはずだった。
会うたびにかつての婚約者を目で追うのは、ただの癖。
今ある思いは、恋ではない。
名がつくことのない二人の関係は、依頼主と同伴者となり、またその形を変えていく。
2万字くらいのお話です。
没落した貴族家の令嬢アリーネは、王都の社交サロンで同伴者として生きる道を選んだ。
歳月は、すべてを思い出に変えたはずだった。
会うたびにかつての婚約者を目で追うのは、ただの癖。
今ある思いは、恋ではない。
名がつくことのない二人の関係は、依頼主と同伴者となり、またその形を変えていく。
2万字くらいのお話です。
あなたにおすすめの小説
加護無し令嬢の選択~都合のいい側妃は謹んでお断りし、魔導工学で新領地を開拓します~
「お前を完全に捨てるつもりはない、エルマ。お前には側妃になってもらう」
サイラスは当然の権利であるかのように、高飛車に告げた。
「……側妃、ですか」
「そうだ。正妃はフィリアだが、お前にはこれまで通り、生徒会や王宮の実務、他家との調整をこなしてもらわねば困るからな。フィリアは聖女としての務めで忙しい。泥臭い裏方の作業はお前が引き受けろ。加護無しの身でありながら側妃になれるのだ、光栄に思え」
フィリアもくすくすと意地悪く笑う。
「そうですよエルマ様! 私、難しい書類仕事なんて絶対やりたくありませんから! そういう雑用は全部エルマ様がやってくだされば、私もサイラス様とラブラブでいられますからね!」
二人のあまりにも身勝手な言葉。
エルマはそっと胸に手を当て、静かに立ち上がった。
「――お断りいたします」
部屋の温度が一段下がったかのような静寂が訪れた。
サイラスの顔から笑みが消える。
「……何と言った?」
「私は、貴方の側妃にはなりません。本日をもちまして、王太子殿下との婚約を辞退させていただきます。ならびに生徒会役員も辞任いたします」
「君を愛することはない」なら、私も愛する必要などありませんよね?
「私は君を愛することはできない。それだけは、今この瞬間にしっかりと覚えておいてくれ」
私は動かなかった。
ただ、静かに彼を見つめ返した。
私の沈黙を「絶望」と受け取ったのか、ヴィルフリートは鼻で笑い、部屋の隅にある一人掛けのソファに深く腰掛けた。
「この婚姻が、親同士が勝手に決めた政略結婚であることは君も知っているだろう。我が侯爵家は、一時の財政難により、君の実家であるローゼンタール公爵家の財力を必要とした。だが、それだけだ。私が心から愛し、生涯を誓った女性は、他にいる」
彼が口にした「他にいる女性」とは、社交界でも噂になっている男爵令嬢のこと。
名前は確か、ミリア。
儚げで、守ってあげたくなるような、庇護欲をそそる令嬢だと聞いている。
「今夜は別の部屋で休む。明日からは、互いに干渉しない生活を始めよう」
バタン、と大きな音がして、扉が閉まった。
その瞬間、私の心は決まった。
都合のいい女だとお思いでしたら、どうぞ別の方をお探しくださいませ
クラリッサ・エヴァレット伯爵令嬢は、婚約者であるアルベルト・グランシェル侯爵令息から舞踏会に
「明日の舞踏会は、一人で行ってくれ」と言われる。
その日は婚約を発表する場だった。
セシリア・ローレン男爵令嬢を優先するために、不当な辛抱を強いらされた。
余命一ヶ月の妻が死んでから後悔した夫は、彼女を溺愛する。けど、私に未練はない。
余命一ヶ月と告げられた侯爵夫人リュシア。
夫アルベリクは病気を信じず、愛人に子供を産ませるとまで言った。
「私は愛されていなかったんだ……」
そう思ったまま、リュシアは夫への想いを胸に死んだ。
けれど彼女の死後、アルベリクは初めて自分の本当の想いに気づく。
「どうして、もっと早く伝えなかったんだ……」
妻を失ってから、彼は彼女の肖像画を見つめ続ける。
――けれど、もうリュシアに未練はない。
【完結】毎夜、幼馴染の元へ通う夫へ。完璧な妻の仮面は返上いたします
【祝】HOTランキングランクイン!たくさんの応援ありがとうございます!
社交界で「理想の夫婦」と称えられるグランヴェル伯爵夫妻。だが実態は、毎夜幼馴染の愛人の元へ通う夫レオナルドと、一人冷たいベッドで眠るアメリアの「白い結婚」だった。
愛人に金品を貢ぎ、妻を「冷たい飾り」と見下す夫。しかし彼は知らなかった。己が誇る「優秀な領地経営」を担っていたのが、アメリアの頭脳だったことを――。
限界を迎えたアメリアの知的な罠が弾ける時、偽りの夫と愛人に完膚なきまでの絶望が襲いかかる!
※ハッピーエンド保障
※全5話完結しました
大丈夫、と言いながら私を泥に塗れさせる婚約者など不要です
「大丈夫だ。何も心配は要らないから、お顔をお上げ。不完全な者を許し、正しく導くことこそが、高貴なる血に課せられた使命なのだから。……誰にだって、不運な躓きはあるものだよ」
大丈夫。
その耳ざわりの良い、美しい言葉が応接室に響いた瞬間、私の視界は白く冷たく染まっていく。
まただ。
私の胸の奥で、何かがパキリと小さな音を立ててひび割れた。
それがもう何度目の亀裂なのか、数える気力すら今の私には残っていない。
ダミアン・カトプレシス伯爵子息。私の婚約者である彼は、いつだって優しかった。
彼の口から紡がれる言葉は、まるで聖書の一節か、一流の劇作家が書いた戯曲のように高潔で、無垢で――そして、気が遠くなるほどに無責任だった。
「先に寝ていていい」と言われたので、夫の帰りを待つのをやめました
王宮勤めの夫は、帰宅が遅い。
私はいつも居間で本を読みながら夫を待ち、帰ってきた彼と少しだけ話をしてから眠る。それが、いつの間にか毎日の習慣になっていた。
けれど、ある晩、
「君まで付き合う必要はない。先に寝ていていい」
夫にそう言われた。
確かに、私が起きて待っている必要などない。食事も湯も、使用人たちがきちんと用意してくれる。
だから、その日から私は夫の言葉どおり、先に休むことにした。
ただそれだけのことだったはずなのに、夫の様子が少しずつおかしくなっていく。
私のことは放っておいてください、旦那様
「君を愛することはない。私には心に決めた人がいる。形だけの妻として、大人しく過ごしてくれ」
アルベルトの声音には、一切の感情が籠もっていない。
しかし、新婦であるエルザの胸中に去来したのは、悲哀ではなかった。
(……え? 本当にいいの?)
エルザは睫毛を微かに震わせ、俯いた姿勢のまま、必死に口元の歪みを抑えていた。
(愛されなくていい。つまり、妻としての情愛を強要されない。旦那様の機嫌を伺って、夜怯える必要もない。しかも、公爵家の潤沢な予算で衣食住は完全に保証されている……。これって、最高に割の良いニート生活の始まりじゃない!?)
エルザの脳内では、すでに薔薇色の未来予想図が高速で描かれ始めていた。
旦那様にはどうぞ心に決めた愛人の方と、末永く仲良くしていただきたい。
自分はその影で、誰にも邪魔されずに読書をし、お菓子を食べ、庭をいじり、自由という名の果実を貪るのだ。