舞踏会はお洒落比べ ─ 田舎娘と王子の恋はドレスからはじまる

だって、これも愛なの。

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舞踏会はお洒落比べ ― すれ違いの夜

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次の舞踏会の日。
リリアは自分で選んだ藤色のドレスに袖を通していた。
胸の奥にまだ迷いはある。けれど──「次は君が選んだ色で」と言ってくれた王子との約束を、裏切りたくなかった。

王宮に足を踏み入れた瞬間、ざわめきが広がる。
「前回の少女だわ」
「なんて可憐なの……」

熱い視線に頬が赤くなる。
そのとき、視線の先に──王子がいた。

けれど、彼の隣には華やかな令嬢の姿。
肩に触れるほど近く、笑顔で話しかけている。
王子は愛想よく応じていたが、その様子を見たリリアの胸はきゅっと痛んだ。

(……やっぱり、私なんかよりふさわしい人がいるんだわ)

勇気を出して選んだドレスも、ただの思い上がりに見えてしまう。
リリアは静かに会場の隅に身をひいた。

──その頃、王子の心もまたざわついていた。
笑いかける令嬢たちに応じながらも、探すのはただひとり。
(リリアは……どこに? 今夜こそ気持ちを伝えたかったのに)

やっと人混みの向こうに見つけた彼女は、壁際で俯いていた。
けれど王子が近づこうとすると、リリアは一歩、二歩と後ずさる。

「……ごめんなさい、殿下」
小さな声が音楽に紛れる。
「これ以上、期待するわけにはいきません」

その言葉が刃のように胸に突き刺さる。
王子は思わず手を伸ばした。
「待って──!」

けれど、リリアは振り返らずに会場を離れていった。

煌めく舞踏会の光の中で、王子はただその背を見つめることしかできなかった。
(なぜだ……僕の想いは、そんなにも届いていないのか?)

夜空の星々は美しく瞬いていたけれど、ふたりの心には切なさだけが残っていた。
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