『ティアラに誓う、ただひとりのあなたへ』 ──赤いリボンが結ぶ、花園の婚約物語

だって、これも愛なの。

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第八話:満月の花園で、ふたりだけの誓い

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 その夜、空は限りなく澄んでいた。

 雲ひとつない満月。
 まるで、世界がふたりのために静かに呼吸を止めているようだった。

 

 レオンハルトは、リリアナの手を引いていた。

 帝国の城を抜け、湖沿いの小道を歩き、
 ふたりだけの、**“とっておきの場所”**へ向かって。

 

 そこには、幼い頃ふたりが出会ったあの“庭園”が再現されていた。

 満月の下で咲く、白く透けるような花々。
 ふたりの影が寄り添いながら、芝の上に長く伸びる。

 

「……ここに、連れてきてくださったのですね」

「はい。ずっと、あなたをもう一度ここへ連れてきたかった」

 

 レオンハルトの声は、今夜だけの特別な音に聞こえた。
 やわらかくて、でも少し震えていて、でもとても……あたたかかった。

 

「覚えていますか、あのとき――君が言った言葉」

「……『これも愛なの』……って、言った気がします」

「そう。……そのときのあなたは、少し擦り切れた笑顔をしていた。
 でも、どうしてか……その笑顔が、ずっと心から離れなかった」

 

 リリアナは、ふわりと微笑んだ。

「レオンハルト様……あの頃のわたしは、きっと“恋に恋してた”んです。
 幸せになれるなら、どんな涙も正解だって、そう思い込んでました」

「……今は?」

「今は、ちょっと違う。
 幸せになれる“誰か”じゃなくて、
 “あなたと一緒にいる今”が、もう幸せなんだって気づいたんです」

 

 言葉を受けて、レオンハルトは懐から小さな箱を取り出した。

 蓋を開けると、そこには――
 月のように輝く、銀のティアラが入っていた。

 

「これは、幼い頃のわたしが、あなたに贈りたいと夢見たものです」

「……わたしに?」

「はい。君は、“夢を見ること”を誰にも恥じなかった。
 そんな君がいたから、わたしも夢を見てみたいと思えたんです」

 

 そっとティアラを彼女の髪にのせる。
 まるで、赤いリボンの上に、もうひとつの約束を重ねるように。

 

「……君のおかげで、私はこんなにも幸せになれました。
 これからはもう大丈夫です。
 だから、次は君に、幸せになってほしい」

 

 その言葉が、胸にまっすぐ届く。

 リリアナの瞳から、ぽろりと涙がこぼれた。

 

「……王子様。わたし、自分の“夢見がち”なところ、ずっと恥ずかしかったんです。
 だけど、それを好きって言ってもらえたの、初めてで……うれしくて……」

「わたしは、君のすべてが好きです。
 涙も、夢も、そして笑顔も。全部、抱きしめたい」

 

 彼の言葉に、リリアナは震える声で応えた。

「……その幸せ、わたしも……もらっても、いいですか?」

「もちろんです」

 

 ふたりはそっと額を寄せる。

 満月の光に照らされて、影が重なる。

 

 ――これは、誓い。
 ティアラに託された、ただひとりへの想い。

 この花園で、ふたりは未来を贈り合った。

 

(つづく)
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