蘭妃は冷宮生活を満喫中!〜呪いの猫皇子とフシギ生活〜

明夏 向日葵

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愛の証

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数ヶ月という時が流れた。

春が訪れ、怜花宮の庭に咲く芍薬が白く、柔らかく風に揺れていた。
陽の光は穏やかで、まるでこの日を祝福するかのように、宮全体があたたかな空気に包まれていた。

茗渓の傷はすっかり癒え、以前のように畑に出ては鍬を握り、土に触れて過ごす日々が戻っていた。まだ身体の奥には微かな鈍痛が残るものの、それすらも「生きて戻ってこられた証」として、茗渓は静かに受け入れていた。

ある日、怜綾が本殿から戻ると、茗渓に微笑みながらこう告げた。

「皇帝陛下が正式に、私と君の婚姻の名を掲げられた。――あの日、伝えた願いが、叶うことになったんだ」

「……ほんとに、夢みたいね」
茗渓は手に持っていた収穫かごをそっと置き、目尻に滲む涙を隠すように微笑んだ。

**

そして迎えた、婚姻の儀の日。

宮中の大広間には、華やかな装飾が施され、皇帝の御前に並ぶ文官武官たち、そして麗妃……いや、今は皇后となったその人も、柔らかな面差しで2人を見守っていた。

怜綾は白銀を基調とした礼服に、皇弟の証である冠を戴き、凛とした姿で正面に立つ。
その隣に立つ茗渓もまた、柔らかな淡紅色の婚礼衣を身にまとい、普段の姿とはまるで違う艶やかさを纏っていた。

――だが、誰よりもその眼差しは穏やかで、まっすぐだった。怜綾だけを見つめるその瞳に、嘘も不安もなかった。

祝詞が読み上げられ、2人は盃を交わす。

「これより先、生涯を共にすることを誓うか」
皇帝の問いかけに、怜綾は一歩、茗渓の隣に進み出て静かに答えた。

「誓います。たとえ姿が変わろうと、名を失おうと、この者だけは決して手放しません」

茗渓もまた、震える唇を噛み締めながら、しっかりと応えた。

「私も……この方のそばで生きていくと決めました。どんな嵐が来ようと、逃げません」

静寂のあと、皇帝が穏やかに頷いた。

「ならば、この婚儀、我が名の下に許す」

その瞬間、室内は拍手と歓声に包まれ、祝いの音が鳴り響いた。

怜綾はそっと茗渓の手を握り、微笑む。

「君がいてくれて、よかった」

「私も……貴方と生きていけることが、幸せよ」

2人は、静かに見つめ合い、誰にも邪魔されることなく、誓いの口づけを交わした。

その光景を、皇后となった麗妃は、温かな眼差しで見つめていた。
かつて迷いと悲しみに引き裂かれかけた2人の手は、もう決して離れることはない。

白い芍薬が風に舞い、その祝福を告げるかのように花びらが空に舞い上がっていった。

こうして、怜綾と茗渓は、ついに夫婦として結ばれた。
過去も呪いもすべてを越えて、ただ1人を想う心だけを胸に抱いて。









⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
蘭妃は冷宮生活を満喫中~呪いの猫皇子とフシギ生活~を読んでいただき、ありがとうございました♪
これで完結となります!
呪いが解けた怜綾と茗渓の2人の幸せな生活はこれからもずっと続いていくでしょう✨
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