白紙

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   私は一度死んだ。蘇ったのだろう。
気付けば私は、見知らぬ天井を仰いでいた。
齢十七ほどであろう。私は鏡に映ったその若い顔を眺めながら、奇妙な敗北感を覚えていた。
   四十を超えてなお、何者にもなれなかった記憶が、胸の奥に沈殿している。詩人になることを夢見ながら、生活に追われ続け、人目に触れぬ詩を描き溜めはしたが、私は結局、何も果たせず終いであった。

  ふと、時計の音に意識を奪われる。薄い壁越しに、誰かの咳き込む声がした。なるほど、ここは下宿の一室なのであろう。黒ずんだ壁が、四方から迫っている。なんとも狭い部屋だ。
しかし、不思議と落ち着かぬ訳でもなかった。
畳から立ち上がってみる。妙に身体が軽い。若い体のせいであろうか。
目線を下ろすと低い机の上に、一枚の白紙と鉛筆が置いてある。お前のやり残したことをやれ、とでも言われているようだ。
全く、書いてしまえば自分の無才に打ちひしがれるかもしれないというのに。
今迄も、他人に自分の詩を見せたことなど1度もない。それでも鉛筆を手に取ってしまう。どうやら、私はまだ懲りていないらしい。
我ながら、実に始末が悪い。
   結局、幾時間も費やし、一つの詩を仕上げた。
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