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弐
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高崖信一郎という男がいる。どうしようもない碌でなしであったが、文学の才能だけは確かだった。この男の書く物語は癪なほど繊細で、私のような人間も、この男の物語に惹き付けられていた。次第に私はこの男の書く小説ばかり追うようになっていた。
この男に習ってみたい。
私はいつしかそう思うようになっていたらしい。ならば、行動に移さねばなるまい。
私は高崖の家を訪ねてみることに決めた。
実のところ、高崖とは一度目の人生で僅かに面識があった。彼の家の所在も未だ記憶している。高崖の家へ向かうのは、容易であった。
緊張する心持ちで、高崖の家の戸を叩いた。中から現れたのは少し太り気味の背の高い男である。
「何の用だ?」
昔と同じく、低く、透る声。
「初めまして。私は貴方の作品に深く惹かれました。どうか、弟子にして頂けませんでしょうか。」
「…ほう。どれ程書ける。」
試すような眼差しで、こちらを見つめる。
「拙いものではありますが…」
私は昨晩書き上げたあの一篇の詩を高崖に渡した。
手がわずかに震えた。
冷や汗がにじみ、少しばかり逃げ出したくもなった。
これまで誰にも自分の詩なんて見せたことがなかったのだ。自信と不安が渦巻く。
先程まで耳に届いていた鳥のさえずりも
風の囁きも瞬く間に遠ざかり、深い水底のような静寂に包み込まれた。
高崖が口を開いた時、私は思わず息を飲んだ。
「確かに拙ねえが、悪かない出来だ」
高崖が手元の紙を返した。その瞳が、かすかに揺れた。
この男に習ってみたい。
私はいつしかそう思うようになっていたらしい。ならば、行動に移さねばなるまい。
私は高崖の家を訪ねてみることに決めた。
実のところ、高崖とは一度目の人生で僅かに面識があった。彼の家の所在も未だ記憶している。高崖の家へ向かうのは、容易であった。
緊張する心持ちで、高崖の家の戸を叩いた。中から現れたのは少し太り気味の背の高い男である。
「何の用だ?」
昔と同じく、低く、透る声。
「初めまして。私は貴方の作品に深く惹かれました。どうか、弟子にして頂けませんでしょうか。」
「…ほう。どれ程書ける。」
試すような眼差しで、こちらを見つめる。
「拙いものではありますが…」
私は昨晩書き上げたあの一篇の詩を高崖に渡した。
手がわずかに震えた。
冷や汗がにじみ、少しばかり逃げ出したくもなった。
これまで誰にも自分の詩なんて見せたことがなかったのだ。自信と不安が渦巻く。
先程まで耳に届いていた鳥のさえずりも
風の囁きも瞬く間に遠ざかり、深い水底のような静寂に包み込まれた。
高崖が口を開いた時、私は思わず息を飲んだ。
「確かに拙ねえが、悪かない出来だ」
高崖が手元の紙を返した。その瞳が、かすかに揺れた。
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