Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

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♠︎出会い♠︎弘田宇丈

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 みひろさんの足の間から、溢れそうな蜜を掬い、オレの先端に擦り付けてみせる。
「欲しいよな?」
 みひろさんは決して快楽に対する欲を口に出さない。いつもは、オレが根負けして、欲を暴走させる。
 でも今日は…今日こそは。みひろさんが自分の欲を自分で認めるまで…待ちたい。

みひろさんの頬を涙が伝った。
「みひろさん?」
 動揺した。彼女は歯を軽く食いしばり、声を漏らさないように、嗚咽しないように懸命に…耐えていた。

 もう、何も我慢しなくていいのに。オレの前では、欲しいものを、欲しいって…泣きわめいて言っていいのに。

 まだ自分の欲を表現出来ない彼女は、オレを信頼してないわけではなく。心を許して、素の自分をさらけ出せる相手がいなかったから…どうしたらいいのかわからないだけなんだと思う。

「…認めろよ、楽になるよ?」
「な、に、を…?」
 彼女の口から紡がれる、とぎれとぎれの言葉。熱を帯びた視線と、涙。熱い吐息と、肌に滲む汗。全てが好きで、愛してて…。
「欲しいんだろ?我慢出来ねぇよな?こんなに濡れてんのに」

 彼女と寝るようになってから、付き合いのあった女達を切った。みひろさんとの逢瀬に、全てを注ぎたくて…自慰も控えるようになった。

みひろさんに、オレの全てを受け入れて欲しい。それにはまず、オレ自身が全てを晒さなければ。
 みひろさんは自分が本当に望んでいることを、決して口にしないだろうから。

 なのに結局は、みひろさんの頑固さがいつも勝つ。
 いや…オレが、堪え性がないのか?どんなに誘導しても、焦らしても…オレが我慢出来なくなる。今日も…散々焦らしてるつもりがオレが焦らされてて、彼女を荒々しく抱くハメになる。

 痣をつけないように。キスマークにも、香りにも気を使いながら。なのにみひろさんは、オレに…印をつける。

「…ってぇっ…」
 みひろさんは、行為の最中の声を押し殺すために、オレの肩に唇を押し当てる癖がある。
 今日はいつも以上に激しく攻めたからか…噛みつかれ、歯形をつけられた。

 痛いはずなのに、嬉しかった。この痛みは、この跡は。口にすることが叶わないみひろさんの思いの丈だけ。
 そう思いながらみひろさんの奥を激しく突き上げ、体をわななかせた。
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