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♠︎三浦の別荘へ♠︎弘田宇丈
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「弘田さん、ランチ行きませんか?」
「あ…中島さん」
明日からみひろさんちの別荘に行く…という金曜日。社内で久しぶりに中島さんに声をかけられた。彼女確か…春の人事異動で部署、移ったんだよな。
「昼メシ?いいけど…」
「この前穴場見つけたんです!弘田さん好きそうだなって思って」
「へぇ…どんなとこ?」
「韓国料理です。すっごくおいしいんですよ!すぐ並んじゃうんで昼休み前にこっそり抜け出さないとですけど」
「ふぅん、じゃあ、行ってみようかな?」
中島さんが案内してくれたのは、古びた感じと雑多な感じが味わい深い韓国料理店だった。
まだ昼前だから人はそれほど並んでいなくて、すぐに席に案内された。
店内の壁には、芸能人のサインなんだろうな…色紙が山のように貼ってある。
「移動したんだっけ?」
「はい、ちょっと相談にも乗って欲しくて」
メニューを広げながら、中島さんが言った。
「あ、ガッツリいくならサムギョプサルとスンドゥブのセットです」
「じゃ、それにしよっかな」
中島さんは店員を呼ぶと、てきぱきと注文した。
「ここ、よく来んの?」
「はい、がっつり食べたい時はここですね」
「女の子にしちゃ珍しいね」
「女子でもがっつり食べたいとき、ありますから」
中島さんはそう言うと、運ばれてきた水をごくっと飲んだ。
「異動先、どう?」
「ん~…」
中島さんの覇気が、なくなった。
「実は明日打ち合わせなんですよね、映画配給会社の宣伝担当と」
「へぇ…どんな映画?」
「それが…アニメなんですよ…」
「アニメ?」
「そうなんです…」
ふぅ、とため息をつくと、おもむろに手首にしていたゴムで髪をまとめ始めた。
*
「洋画だったら良かったんですけど…アニメ好きには悪いけど、全然萌えなくて」
「や、でもさ。最近のアニメはほら「君の名は。」とか「天気の子」みたいな大ヒットもあるしさ」
「そうですけどね…でも正直、自分の興味ある範囲と真逆なんで、やる気がなかなか出なくて」
そう言ったところで、昼メシが運ばれてきた。うわ…すっげうまそ。
「配給会社のほうはすごく力入れてて、明日の打ち合わせ、サントラ担当の人たちも来るんですよ」
「へぇ?珍しいね?」
「そうなんですよ、サントラも絶対にヒットさせる!ってすっごい力入れてるみたいで」
「サントラ担当って誰?有名どころ?」
「うーん、私はよく知らないんですけど…総合プロデュースは男性二人組で、まだ若いです。二十代前半ですって」
「へぇ…じゃあ同い年くらいじゃん」
「そうですね」
中島さんは一旦話を切り、「いただきます」と手を合わせると、食べ始めた。
オレも一口目を口に運ぶ…あ、これ美味い。食べながらも、話す。
「サントラの細かい話も明日聞くんですけど、サントラ込みでの映画宣伝っぽくて、ライブとかも抱き合わせになるかもしれなくて」
「面白そうじゃん。その映画いつ公開?」
中島さんは、食べるのを止めて少し天井を見上げた。
「…今からだと、大体一年半後くらいですね」
「ふぅん…まだ先だな」
「でもね!」
そこで、中島さんの目がキラキラと輝いた。
「サントラにものすごく力入れてる、っていったじゃないですか」
「うん」
「なんとね」
「うん」
中島さんは声を潜めて言った。
「…平井隆司、知ってます?彼が参加するらしいですよ?」
「あ…中島さん」
明日からみひろさんちの別荘に行く…という金曜日。社内で久しぶりに中島さんに声をかけられた。彼女確か…春の人事異動で部署、移ったんだよな。
「昼メシ?いいけど…」
「この前穴場見つけたんです!弘田さん好きそうだなって思って」
「へぇ…どんなとこ?」
「韓国料理です。すっごくおいしいんですよ!すぐ並んじゃうんで昼休み前にこっそり抜け出さないとですけど」
「ふぅん、じゃあ、行ってみようかな?」
中島さんが案内してくれたのは、古びた感じと雑多な感じが味わい深い韓国料理店だった。
まだ昼前だから人はそれほど並んでいなくて、すぐに席に案内された。
店内の壁には、芸能人のサインなんだろうな…色紙が山のように貼ってある。
「移動したんだっけ?」
「はい、ちょっと相談にも乗って欲しくて」
メニューを広げながら、中島さんが言った。
「あ、ガッツリいくならサムギョプサルとスンドゥブのセットです」
「じゃ、それにしよっかな」
中島さんは店員を呼ぶと、てきぱきと注文した。
「ここ、よく来んの?」
「はい、がっつり食べたい時はここですね」
「女の子にしちゃ珍しいね」
「女子でもがっつり食べたいとき、ありますから」
中島さんはそう言うと、運ばれてきた水をごくっと飲んだ。
「異動先、どう?」
「ん~…」
中島さんの覇気が、なくなった。
「実は明日打ち合わせなんですよね、映画配給会社の宣伝担当と」
「へぇ…どんな映画?」
「それが…アニメなんですよ…」
「アニメ?」
「そうなんです…」
ふぅ、とため息をつくと、おもむろに手首にしていたゴムで髪をまとめ始めた。
*
「洋画だったら良かったんですけど…アニメ好きには悪いけど、全然萌えなくて」
「や、でもさ。最近のアニメはほら「君の名は。」とか「天気の子」みたいな大ヒットもあるしさ」
「そうですけどね…でも正直、自分の興味ある範囲と真逆なんで、やる気がなかなか出なくて」
そう言ったところで、昼メシが運ばれてきた。うわ…すっげうまそ。
「配給会社のほうはすごく力入れてて、明日の打ち合わせ、サントラ担当の人たちも来るんですよ」
「へぇ?珍しいね?」
「そうなんですよ、サントラも絶対にヒットさせる!ってすっごい力入れてるみたいで」
「サントラ担当って誰?有名どころ?」
「うーん、私はよく知らないんですけど…総合プロデュースは男性二人組で、まだ若いです。二十代前半ですって」
「へぇ…じゃあ同い年くらいじゃん」
「そうですね」
中島さんは一旦話を切り、「いただきます」と手を合わせると、食べ始めた。
オレも一口目を口に運ぶ…あ、これ美味い。食べながらも、話す。
「サントラの細かい話も明日聞くんですけど、サントラ込みでの映画宣伝っぽくて、ライブとかも抱き合わせになるかもしれなくて」
「面白そうじゃん。その映画いつ公開?」
中島さんは、食べるのを止めて少し天井を見上げた。
「…今からだと、大体一年半後くらいですね」
「ふぅん…まだ先だな」
「でもね!」
そこで、中島さんの目がキラキラと輝いた。
「サントラにものすごく力入れてる、っていったじゃないですか」
「うん」
「なんとね」
「うん」
中島さんは声を潜めて言った。
「…平井隆司、知ってます?彼が参加するらしいですよ?」
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