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♠︎三浦の別荘へ♠︎弘田宇丈
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仕事を終えて家に帰り、明日の準備をする。着替えと…ひげ剃り、歯磨き…日用品入れて。
あ…タオルとか…いるのかな。
先日、みひろさんから届いた手紙を確認する。
別荘の住所と電話番号。自分は朝からいるから、好きな時間帯に来て欲しい、と書いてあった。
電車で来る場合の来方と、車で来る場合の来方。どこに車を停めて欲しい、とか…色々。
彼女の美しい筆跡を見ると、ほんとに…お嬢様なんだな、ということを改めて実感した。
オレの車でアオをピックアップし、昼前には三浦に着けるようにするつもりだった。
土曜の朝だし、ナビで確認しながら行っても一時間半くらいで着くだろう。
あ…そうだ。アオに、必要なものとかないか聞いておこう。
電話しようとスマホを手に取ったら、アオからLINEが入った。
『今電話できるか?』
それを見てすぐに電話した。アオは1コールで出た。
「なんだよ、電話早ぇな?」
「ちょうど電話しようと思ってたんだよ、どうした?」
「明日なんだけどさ、オレ電車でいくわ」
「なんで?」
「彩花がさ、ちょっと発作出たから」
「え?」
「いつものことだから心配すんな」
「大丈夫か?」
「大丈夫。あいつも不安なんだよ」
「不安?何が?」
「今回はさ」
アオは声を潜めた。
「たぶん、おまえの彼女にすごくシンクロしてる」
「え…?」
「おまえの彼女の気持ちとシンクロしてんだよ」
「どう言う意味だよ」
「彩花さ、不思議なところがあるって言ったろ」
「ああ」
「クライアントとシンクロすると、その精神状態もシンクロするんだよ。そのおかげでわかることもたくさんあるんだけどさ」
「へぇ…」
「自分の過去の経験もぶり返して、過呼吸やパニックの発作が出る」
「なんか大変そうだな…電話してて平気なのか?」
「ああ。今は安定剤で眠ってる。明日、お世話係の三和さんが来るまで側にいてやりたいからさ」
「わかった」
「多分、夕方前には着けると思う」
「ん、なんかあったら連絡しろよ?」
「ありがとな、じゃ明日な」
「うん、じゃあな」
彩花ちゃんを引き取っている、とは言っても、アオは仕事があるし男所帯だ。
身の回りの世話は、彩花ちゃんの母親が昔からお世話になっている、三和さんという年配の女性がこなしている、と聞いたことがある。
その人が来るのが、恐らく昼過ぎなんだろう。
彩花ちゃんの状態…あまり詳しく聞くことができないし、聞くからには彼女の過去に何があったのかも聞くことになる。
それは、アオもオレも、そして彩花ちゃんも…相応の覚悟が必要になるだろう。だからとりあえず、何も聞かずにいた。
実際…どうなんだろう?会った事もない相手に感情がシンクロする?それで自分の過去の記憶がフラッシュバックして、発作が出る?それって相当…本人的に辛くないだろうか。
どんなに良くなろうと足掻いても、いつまでも抜け出すことができない蟻地獄みたいだ。
あ…タオルとか…いるのかな。
先日、みひろさんから届いた手紙を確認する。
別荘の住所と電話番号。自分は朝からいるから、好きな時間帯に来て欲しい、と書いてあった。
電車で来る場合の来方と、車で来る場合の来方。どこに車を停めて欲しい、とか…色々。
彼女の美しい筆跡を見ると、ほんとに…お嬢様なんだな、ということを改めて実感した。
オレの車でアオをピックアップし、昼前には三浦に着けるようにするつもりだった。
土曜の朝だし、ナビで確認しながら行っても一時間半くらいで着くだろう。
あ…そうだ。アオに、必要なものとかないか聞いておこう。
電話しようとスマホを手に取ったら、アオからLINEが入った。
『今電話できるか?』
それを見てすぐに電話した。アオは1コールで出た。
「なんだよ、電話早ぇな?」
「ちょうど電話しようと思ってたんだよ、どうした?」
「明日なんだけどさ、オレ電車でいくわ」
「なんで?」
「彩花がさ、ちょっと発作出たから」
「え?」
「いつものことだから心配すんな」
「大丈夫か?」
「大丈夫。あいつも不安なんだよ」
「不安?何が?」
「今回はさ」
アオは声を潜めた。
「たぶん、おまえの彼女にすごくシンクロしてる」
「え…?」
「おまえの彼女の気持ちとシンクロしてんだよ」
「どう言う意味だよ」
「彩花さ、不思議なところがあるって言ったろ」
「ああ」
「クライアントとシンクロすると、その精神状態もシンクロするんだよ。そのおかげでわかることもたくさんあるんだけどさ」
「へぇ…」
「自分の過去の経験もぶり返して、過呼吸やパニックの発作が出る」
「なんか大変そうだな…電話してて平気なのか?」
「ああ。今は安定剤で眠ってる。明日、お世話係の三和さんが来るまで側にいてやりたいからさ」
「わかった」
「多分、夕方前には着けると思う」
「ん、なんかあったら連絡しろよ?」
「ありがとな、じゃ明日な」
「うん、じゃあな」
彩花ちゃんを引き取っている、とは言っても、アオは仕事があるし男所帯だ。
身の回りの世話は、彩花ちゃんの母親が昔からお世話になっている、三和さんという年配の女性がこなしている、と聞いたことがある。
その人が来るのが、恐らく昼過ぎなんだろう。
彩花ちゃんの状態…あまり詳しく聞くことができないし、聞くからには彼女の過去に何があったのかも聞くことになる。
それは、アオもオレも、そして彩花ちゃんも…相応の覚悟が必要になるだろう。だからとりあえず、何も聞かずにいた。
実際…どうなんだろう?会った事もない相手に感情がシンクロする?それで自分の過去の記憶がフラッシュバックして、発作が出る?それって相当…本人的に辛くないだろうか。
どんなに良くなろうと足掻いても、いつまでも抜け出すことができない蟻地獄みたいだ。
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