Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

文字の大きさ
上 下
112 / 171
♠︎過去のトラウマ♠︎弘田宇丈

5

しおりを挟む
「両親、ですか?」
「はい」
「父のことも母のことも…尊敬していますし、大好きですが…」
「言って?ここでは本当の気持ちを話して大丈夫ですから…」
「父は、時々…私に冷たくしました…怖かった…」
「どうしてですか?」
「…」
「お母さんは?」
「母は…大好きだし、尊敬しています」
「お祖母さんほどではないけど厳しかったんですよね?」
「はい…でも、それは私の為ですから…」
「躾、ですか?」
「はい…白石の長女として、どこに出しても恥ずかしくないように、と…」
「そんなお母さんをどう思われましたか?」
「母の期待は…重かったです…でも…」
「でも?」

 みひろさんの表情…目にはアイマスクをしているからわからないが、なんとなく…緊張が走った気がした。

「頑張らなければ…白石の名を汚さないように…」
「なぜ?」
「私が認められなければ、母が…可哀想で…」
「どうしてですか?」
「祖母に嫌われて…私のことでなじられて…だから、私がしっかりして、母を守らなければ…」
「お父さんではその役目はできないのですか?弟さんでは?」
「ダメです…私だけ…」
「どうして?」

 みひろさんの手が、ぶるぶると震えていることに気がついた。胸が浅く、上下している…。

「話して大丈夫です。ここで話す必要がありますよ?」
「…」
「話せば楽になります。でも、話したくなければ話さなくてもいい」
 アオ…?何言ってんだよ、ここまできて…!
「真柴さんの自由ですよ?どっちでもいい…話しても、話さなくても…」
 みひろさんが大きく息を吸った。オレは…固唾をのんで見守る。
 なんなんだ?何を話すんだ?

「…弟も父も、白石の人間です」
「はい」
「私と母は…白石の人間ではないんです」
…え?
「どういう意味ですか?」
「私は…父と、血がつながっていないんです」

 それを聞くと、アオは…そっとみひろさんの手を握った。
「よく言えました…頑張りましたね」
「家族だけの秘密なんです…お願い…」
「わかってます、絶対に口外はしませんから」

 なんだ?どういうことだ?血が…つながっていない?
 じゃあ、みひろさんの父親は…誰なんだ?お祖母さんの厳しかった躾の意味は?
しおりを挟む

処理中です...