籠の鳥

橘 薫

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性癖

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 一真くんは耐えようとした。その様子にまた彼を焦らす楽しみが増える。わたしは、彼に触れるか触れないかギリギリのところで体を上下に緩やかに揺らした。
「美彩さんっ」
「欲しいなら欲しいって言えば? 指咥えてたって手に入らないわよ」
「欲しいっ……欲しいですっ……、美彩さん、お願いしますっ」
「もっとねだって」
「あ…っ、あ、あ、あ」

 彼の中心に触れ、先端を指で弾く。弾力のあるそれは、容易く先端から透明なジュースを溢れさせた。
「いけない子ね、お仕置きしないと」
 わたしは手を伸ばしてアイマスクを取った。
「なに、するんですか」
「視覚を奪うの」
 ああ、思わず口角が上向く。五感のひとつを奪われることで、他の感覚が鋭敏になる。感触、香り、鼓膜に響く声が、通常以上に効果をあげる。

 一真くんはどんな風にイクだろうか。みっともないほどに貪欲にイってくれるだろうか。この美しい、ミステリアスな雰囲気の青年が、自分だけがピークに達するその様を、つぶさに観察されるという屈辱を、どこまで受け入れてくれるだろうか。

 ゆっくりと、アイマスクを頭にはめていく。ゴムの部分を伸ばし、両目の上に優しくかけ、髪の毛を直してやる。
「どう?」
「なにも、見えない、です」
「そうよね」
 そこでまた、いたずら心がもたげた。彼をさらに興奮させるために、イクのを我慢させないために。

「一真くん、下着を脱がして」
「え、で、でも、手が」
 腰を掴んで彼の体を少し下にずらす。私が膝立ちになったときに、彼の顔がちょうど私の腰の高さになるように調整した。

 顎を掴み、優しく上を向かせる。そのまま腰骨に引っかかっているサイドストリングに誘導する。
「口って、便利よね」
 優しく髪を撫でて上げながら、諭す。一真くんの息が荒くなる。
 やがて彼は、観念したかのように口を開け、歯を出した。

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