籠の鳥

橘 薫

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聖夜

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「もう子どもは寝る時間」
 話を切り上げてしまおう。そう思ったのに、逆に一真くんに火をつけてしまったようだった。
「美彩さん、お願いです。僕、縛られたい……」
「ちょっと」

 好奇心だけで始めてはいけない。これは、あの男から最初に徹底的に教え込まされたことだ。
「覚悟」。それを持て、と。相手に委ねる覚悟。自分を開示する覚悟。生半可な覚悟で行為に及ぶと、後々に後悔するから……、と。

 わたしはどう言えばいいのか分からず、黙った。この子に伝わるだろうか。愛と快楽を混ぜ合わせ、溶け合わせることの大事さが。ソレを知ってしまったら、二度とは戻れない……ありきたりの愛では満足できなくなってしまうということの重要さが。

 立ち上がった。ソファに座る一真くんの目の前に立ち、その細い、神経質そうな顎を掴む。くい、と上を向かせ、その瞳をまっすぐに見つめる。
「わかってる? 自分が何を言ってるか」
「は、はい」
「プライベートで、お金が絡まない相手とソレをするっていうことは、いっときの快楽のためだけにするプレイじゃないのよ、わたしの場合は」
「はい、分かってます」
「お互いをありのまま信頼するって、どういうことだかわかってる?」

 一真くんの目が、怯む。まだまだ甘い……この子は。体の奥まで侵食され、覚えこまされた拘束による快楽は、わたしの体から消えることはない。それと同じことを彼は、ただ気持ちよさから求めている。その覚悟の足りなさに対してイラついてしまう。分からせてやりたい……骨身に染み込むほどに。

「教えてあげる、曝け出す、ってことの本当の意味」
「は……、はい」
「明日は仕事?」
「はい。でも遅番なんで昼過ぎからです」
 遠慮はいらないと得心し、知らず頬が緩む。
「シャワー浴びてきて」
 一真くんは、一瞬雷に打たれたように目を見開き、その目をそっと伏すとゆっくりと立ち上がった。
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