籠の鳥

橘 薫

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聖夜

13

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 一真くんがふるっと体を震わせた。その震えが伝染するかのように、わたしの背中にもゾクゾクとした、寒気に似たものが駆け上がる。
 それは期待によるものだ。今も、これからも。彼の快楽はわたしのコントロール下にあり、わたしの好きなようにできるのだ。

「綺麗……すごく、美味しそう。食べちゃいたいくらい」
 美しく雄々しくそそり立つソレ。触れるか触れないかの距離で手をかざす。空気を通して、この熱を、圧を感じるだろう。微細な刺激はさらなる刺激を欲しがり、与えられない快楽を想像して狂いそうなほどに求め始める。

 はぁはぁと一真くんの息が上がる。わたしに触れられることを想像したのだろうか、それとも吸われるところを?

「想像して? 一真くんのココを、奥まで咥えられちゃうところ。
 きゅって吸われて、気持ちいいところに舌がきつく当てられて、唾液たっぷりの口の中で締め付けられるの……」

 切なげに体を捩る彼。さっきから、わたしとの約束を守って快楽に耐え、声を出さないよう懸命に歯を食いしばってる。もう少し……もう少し焦らしたら、ご褒美をあげてもいいかも。

「ねえ、どうして欲しい? 喋っていいから、どうして欲しいのか言ってごらん?」
「あ……」
 半開きの唇を、滑りと舌が舐めとる。その妖艶さに疼く。でも、この子には一人で達してもらいたい。

 欲しいのに与えられない切なさ。自分で高めなければならない諦めと快楽に身を任す投げやりさ。それが見たい。この子はどこまで、快楽を素直に追い求めるだろうか。

 一真くんが、声に出す願望の数々。まだ若い彼が告げる望みは、経験の低さゆえかボキャブラリーの少なさゆえか、決してイメージが豊かとはいえない。それでも、赤面し、ときにはどもりながらも明確な言葉で紡がれる直接的な内容は、わたしの中心を熱くさせ、うねらせるには充分だった。
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