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サバゲーって知ってる
06
しおりを挟む音羽をここに連れてきた張本人がいなくなり、どうにも居心地が悪くなった。帰るのも良くない気がした音羽は、そろりとゴスロリ少女を見た。
豪奢に波を打った銀髪に、深い碧色をした瞳。薄く化粧はしているが、薄桃色の頬や、1センチはありそうな長く上向きのまつげは自前だろう。最高級のビスクドールのようだ。
現実離れした、白昼夢の妖精のような少女。改めて見て、その美しさに目を奪われる。
先ほどから軽くうつむいて、金属部品を紙ヤスリで磨いているのがかなり不釣り合いだが。
「なにか?」
音羽の動向が見えているようには見えなかったが、彼女は感づいたらしく顔を上げた。そして若干虚ろな碧い目でまっすぐ音羽を見つめる。
「あ、そ、その……」
現実離れした少女の眼力に、気圧された。それでもしどろもどろになりながら、どうにかうまく回らない頭をひねって、今できる事を考えた。
「ここ、サバイバルゲーム、って、あの……」
「ここは私立武蔵国原高校の、第四サバイバルゲーム部。ちなみに非公認。言いだしっぺはヒーロ。フーは、やつにいいように使われているだけ」
淡々と抑揚のない口調で、言葉を並べる少女、フー。本名だとは思えないが、その真偽を探る術はない。
「サバイバルゲームとは、合法の玩具銃器で行う戦争ごっこ。現代では、アウトドア、インドアで行う戦争ごっこタイプと、限られた小範囲内で行う純然としたスポーツ感覚のフラッグハントの大きく分けて二通りが主流」
そこはかとなく嬉しそうに、フーは語る。手は作業を続けている。
「じゃあ、それは、サバイバルゲームの道具なの?」
専用のラックに立て掛けられた銃器を、恐る恐ると指さす。
「そうだ。これらはサバイバルゲーム、通称サバゲーで使う合法の銃器だ。競技や狩猟などで使うものとは、格段に威力が違う。所持に申請や免許の必要がない」
銃器の知識がない音羽でも、本物のような威圧感を感じるそれが、玩具だとはにわかに信じられない。
「そ、それで撃つの? 痛くないの?」
合法とはいえ、銃器だ。それに小学校低学年の頃、同じクラスの少年に撃たれたことがある。その時はあまりの痛さに、わんわんと声を上げて泣いてしまった。それを思い出すと、疼くように恐怖が芽生える。
「痛くはない。ちゃんと服を着ているから」
「そうなの?」
「ちゃんとした格好をしていれば、痛みはない。それほどない。顔もマスクを付ければ大丈夫だ」
「そうなのかな……?」
疑問はあるが、嘘を言う必要性は感じられない。
小首をかしげていると、フーは手を止め立ち上がった。
「どうしたの?」
見上げると、彼女は部屋の隅へ移動して、小さな戸棚からタブレットを取り出した。
「見るといい。よくわかる」
タブレットを操作してから、それを音羽に見せる。
画面を覗き込むと、なにかの動画が映されていた。
「これは?」
「サバゲーの様子。結構前の」
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