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サバゲーって知ってる

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 説明を聞いて、いきなり黙った尋。そして、彼女の心拍が一度だけ強くなったのを”聞いた”音羽は、何か起きたのかと彼女の顔を覗き込む。

「ぐ……」

「ぐ?」

「Great heavenlyiiiiiiiiiiiiiiiiiii!!!!!」

 大声ではなく、普通の音量で尋は叫んだ。しかし、両目は星が出そうなほどキラキラ輝き、頬を上気させている。

「素晴らしい、素晴らしいネーおとチャン! SQR-19みたいネー! Non! みたいじゃなくてそのものネー。もしかし、足音で色々わかるネー?」

 宝くじの一等に当たっても、それほど喜べるかどうか。尋はそれくらいに歓喜している。声を張り上げない癖が染み付いているのだろうか、そのかわりに全身でその感情を表している。

「わ、わかります。場所と、どれくらい離れてるかとか、なら」

「That's incredible! すごすぎるネー! おとチャンぅ!」

 ばふっと音羽の体を抱きしめて、腕の中にすっぽり収めた。

「わ、ふぁ」

「Berry かわいいネー! フーとタッグ組みマシたら、ICBMも、ATBも、なんでも撃墜できるデスヨー!」

 音羽には何を言われているのか、全然理解できなかったが、どうやら手放しに褒めちぎられているようだ。

「やっぱりDiamondの原石デスネー。えへへ、こうなったら、ウチのにスルネー。ちゅー」

 興奮のやまない、むしろさらに上昇する彼女。そのままがっちり音羽を抱きしめて、頬に唇を寄せだした。

「ふあ!? やめ、やめてください!」

「ちゅーして嫁にもらうデ――」

「なぁあにを、していますの?」

 必死に手を隙間にねじ込んで止めていたのに、突然尋は動きを止めた。

 騒がしくて気づかなかったが、新たに入室者がいる。その声が、尋の動きを止めた。

 上品な茶葉を使い丁寧に淹れた真紅のような髪と、透き通るような白い肌。背は高く、若干勝気に目尻がつり上がっている。間違いなく美人に部類される新しい入室者。夏用の制服をお手本の様に着込んでいるからか、仁王立ちをする姿に少し違和感がある。

「二年一組出席番号三番、”元”第一サバイバルゲーム部部長の雨前尋さん?」

 若干甲高い声。上ずっているのは、怒りと緊張の現れだ。

 ――だれだろう。すっごい美人さんだ……――

 音羽は純粋に綺麗な外見に関心しながら、見上げていた。見下す彼女の冷たい目は、完全に音羽を見ていないから落ち着いていられた。

 動かない尋の代わりに、その少女が尋の束ねた髪の毛を鷲掴みにして、音羽から引き剥がす。

「後輩への準強姦の罪で逮捕しますわよッ!」

「Outy! 痛いネー! たまチャン!」

「おだまりなさい!」

 バランスを崩してペタンと座り込んだ尋は、後頭部を押さえて涙目で訴える。それを一瞥して、ふんと鼻で笑った。

「先生が呼んでいるわ。来なさい!」

「Oh! no! そこ引っ張ったら痛いネーッ!」

 ばたばたもがくが、尋の劣勢が変わるわけでもない。むしろ暴れたことで余計に痛んだらしく、掴んだ手を押さえて身悶える。

「ちょっと、まっーー」

「ほら、いきますわよ!」

 ズルズル引きずられて、部屋を後にした。

「ぅん?」

 部屋を出る直前、赤い髪の少女が一瞬だけ、音羽を見た気がした。

 二人がいなくなり、静かになった部屋。
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