貧乏な家に生まれた俺だが、たまたま魔法が使えて王立魔術高等専門学院に特待生として入学して、選民思想の同級生の中で無双する話。

太古の昔から1万人に1人の確率で人類から魔法使いが誕生してきた。100年前、脈々と繋がる魔術の血統を隠し持っていたウィンザー公爵、エドワード8世が「青の公文書」を魔法界に交付した。

-青の公文書-
「私達はこれまでの歴史でなぜ優秀であることを隠さなくてはいけなかったのでしょうか。
 我々は家族を、同胞を、我々に与えられた力を信頼しています。我々の同胞は今も、魔法の力を持たない家庭から1万分の1の確率で誕生しているのです。私達の始祖ノーブルもごく普通の人間から誕生しました。私達は我々と同じ力を受け継ぐ子供たちを守らなくてはなりません。生まれてくる子供たちに必要なことは、過去の柵ではなく、確かな人権と彼等を守る法制度です。」
(序文 第1章2節 抜粋)


-100年後-

「この100年で随分変わったものね。」

真っ直ぐなブロンドをしたマリンブルーの瞳をもつ少女が、ため息まじりに言葉を漏らした。

隣に座っている少女の言葉を受けて、窓の外を見ていた男の子が少し間を置いて答えた。

「どうしたの?まだ僕たち16年しか生きていないけど笑」

「うざい!!魔法史の予習をしていたのよ!あなたちゃんと勉強してて⁈」

男の子は微笑しながら少し開いていた車の窓を閉めた。ブロンドのくせ毛。女の子と同じマリンブルーの瞳だった。

「100年で変わったということは、青の公文書のところかな?イングランドで魔法憲法の雛形が完成して、実験的な人と魔法使いとの共存コミュニティの実施、魔法使いの為の義務教育機関の設立等、正直いいことづくめだと思うけどね。」

さらっと答えて得意げな顔で目を瞑っていると隣から何の反応もない。

・・・?

男の子は不思議に思い少女の方に目をやると、見開いた教科書を口に当て、青白く震えている様子が目に飛び込んできた。

「酔った。」

教科書から涎が垂れていた。

「ごめん!ミオが吐きそう!どこか止めれない?」

運転手が焦りながら叫んだ。
「すぐ高速降りるからもうちょっと我慢しろ!」

女の子は後部座席を少し倒して、息も絶え絶えに窓から空を見上げていた。

(やばい、まじ死ぬ。吐きそう、、)

(あれ?、、なんか空飛んでる人いない?)

虚ろな意識の中、はるか上空を箒に乗った人が飛行しているのを、豆粒程の大きさで、瞳が捉えた気がした。
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