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スィンコ塔のメンツ
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<あらすじ>
非魔法使いの両親から生まれた貧乏魔法使い「山田たけし」が魔高(王立魔術高等専門学院)の入学式を迎えた。多摩地区の山の中に高い塀に囲まれた陸の孤島とかした学院には、7つの寮があり、黒タンクトップの肉体美を誇る沖・キャストレイ・玲子副学長につれられ、ヴィクトリア・未央・オズボーンは隣あうウノ塔とドス塔の方へ向かって行った。一方たけしは、どもり気味の魔術概論の教授、ペルー・仁につれられ、スィンコ塔に向かうのだが、、?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
たけしは困惑した。
40名ほどの初めて顔をかわす学生たちの尊敬と畏怖と好奇の目に囲まれたからだった。
「え、何?」
たけしは若干イライラしていた。
遠巻きでスィンコ塔に入寮する新入生たちがペルー・仁教授の横にいるたけしに注目している。
「う、、うおっほん!ゲフッ!ゲフッ!」
ペルー・仁が咳払いをした。
「えー、み、みなさん、こ、これから、スィンコ塔に、い、移動しますが、我がりょ、寮に、<大転生>のた、たけし君も入寮す、することが、決まって、います!」
一部の新入生が歓声をあげた。
「今年の寮対抗戦はうちで決まりだな!」
「たけし頼むぜ!」
「先生!聞きづらいんでマスクかぶっていいですよ!」
ペルー・仁はびっくりして、歓声をあげた生徒たちを見つめた。
「ん、ん~、そのみ、民族衣装は、き、君たちは万(ワン)さんとこの子達、か、かな?」
それぞれ黒と青のチャンパオ(中華服)に身を包んだ2人が、まってましたと言わんばかりにみんなの前に躍り出てきた。
「あい!待ってました!同寮の皆々様!」
「只今ご紹介賜りましたのは万家の末裔!」
2人は、くるくると踊りながら、ペルー・仁のヨレヨレの白衣をどこからか取り出したはけでパタパタはたき、綺麗に仕立て上げた。
「兄の万麗(ワンリー)と!」
「弟の万洋(ワンヤン)也!」
兄のリーがペルー・仁のメガネのズレを、弟のヤンがネクタイを直して仕上げに入った。
「以後、お見知りおきを!!」
最後は2人揃って立礼した。
緊張していた学生たちもネクタイを頭につけて、逆さまのメガネをつけているペルー教授を見て、さすがに吹き出した。
リーとヤンがたけしの方を向き、笑顔を見せた。
「たけし、よろしくな!リーと、」
「ヤンだ!」
「お、おお。よろしく、、」
たけしは2人のことをミュージカル兄弟と心の中で名付けた。自分より目立っていたので若干腹が立ったが、様子を見てから敵か味方かを判断することにした。
「と、と、とりあえず、、スゥインコ、スゥインコと、と、塔に、い、い、いってなさい!」
ペルー・仁が頭を隠しながら走ってどこかに行ってしまった。
「寮はこっちだから、みんなついてきて!」
リーとヤンが先頭に立ってみんなを誘導してくれた。たけしはここは愛想を振りまいた方が間違いなくいいと判断し、媚びモードに切り替えた。
「ヤンくんとリーくん?だっけか。よろしくな!おれはたけし。色々教えてくれると嬉しいな!」
「おう!学院のことならなんでも聞いてくれ!」
「俺ら兄貴と姉者も入学してるから大体知ってるんだよね笑」
「そうなんだ!だから詳しいんだね!すごいや!」
たけしが目をキラキラさせながら答えた。
「よ、よしてくれよ笑 大転生のたけしにそんなこと言われたら恥ずかしいよ」
「それな笑」
リーとヤンが顔を見合わせて笑った。たけしはここだと思い、意を決して質問した。
「その、大転生?って、、何か教えてくれない?」
2人が急に真顔になった。
「え?知らないの?」
リーがびっくりした顔で言った。
「そ、そうなんだ。知らないんだよね。」
たけしはこめかみにピクピクと怒りのせいで血管が浮き出ていたが、顔はなんとか笑顔を保っていた。
「よ、よかったら、教えて、くれないかな、?」
なんとか明るい声を腹からひりだした。
「えー?ほんとかなー⁈ほんとに知らないの⁈」
リーは自分がからかわれているんじゃないかと思って、聞き返した。
(あ、やばい。キレそう)
たけしの視界が怒りで真っ白になる寸前、ヤンが会話に入ってきた。
「兄さん、それは失礼だよ。たけし君はピュアの生まれなんだから、魔法界の事をこれから学ばれるんでしょ。」
「え?たけし、ピュアなの⁈」
「兄さん、大転生の子はこれまでの統計上、ピュアの生まれからしか誕生してないよ。僕、原作読んだから知ってるんだ。」
「そーなのか!俺、ドラマしか見てないからな~」
「たけし君、ごめんね。大転生っていうのは300年に1度誕生すると言われているすごい魔法力を秘めた魔法使いのことを言うんだ。たけし君は最初の春をいつ経験してる?」
「最初の春ってなに?」
たけしはヤンにならムカつかずに質問出来ると悟った。
「最初の春っていうのは、魔法使いとして産まれたことを証明する最初の不思議な現象のことを言うんだけど、、身に覚えがある?親から聞いたとか?」
「あー、それだったらなんか母ちゃんの腹の中にいる時に、声が聞こえたって、両親が言ってたわ」
「お腹の中で!!」
リーが口をポカーンと開けてたけしを見つめた。
「す、すごい!すごいよ!!最初の春を出産前にしてるなんて!!普通はどんなに早くても1歳後半だよ!」
ヤンは興奮してる。
「それの何がそんなにすごいのよ。」
たけしは2人のリアクションについていけなかった。
「単純に、最初の春が早いほど魔法力が高くなるってのもあるけど、大転生、つまり1歳になる前に最初の春を迎えた子のことをいうんだけれど、大転生の子は継承魔法が使えるらしいんだ。」
「継承魔法?」
「うん、まだ考察の域を出ないんだけど、、何しろ300年単位で1人、しかもピュアの子からしか生まれないもんだから、全然研究が進んでないんだけど、、生まれ変わりってあるでしょ?それの魔法版だと思ってくれていいんだけど、、あ、ピュアっていうのは両親がどっちも非魔法使いなのに魔法使いとして産まれた子のことを言うんだけど、、」
「1万人に1人の確率で産まれるらしいよ。」
リーが考え事をしながらボソッと言った。
「ふーん、じゃあ俺強いんだ!」
たけしは機嫌が良くなってきた。
ヤンがうなづいた。
「多分、というか絶対強いよ笑 というか、<<大転生の子>>を絶対読んだ方がいい!昔出版された本なんだけど、超人気で何度も重版してるんだ!!自分がそうなら尚更だよ!笑笑」
「今期のドラマも最高だぜ!?キリスト役の雨麗(ユーリー) めちゃ可愛いよ!キリストに女優ってのが意外とハマるんだよな~!」
「キリストってイエスキリスト?多分俺見ないよ笑」
たけしの返事にリーが笑って、ヤンは困った。
リーが急に真面目な顔をしてわざとらしく、仰々しくたけしに言った。
「たけし殿!キリストを馬鹿にしてはなりませんぞ!
イエス様も貴方様も同じ大転生の子なのですから!」
リーが腹を抱えながら笑っている。たけしはハッとした。いつのまにかスィンコ塔に到着していたことに気づいたからだった。
蔦が絡まった巨城。
スィンコ塔の後ろには森が広がっていた。小鳥が眩しそうに飛んでいた。
みんなが入り口から大広間に入ると、緑のローブに身を包んだ女性が1人立っていた。肩程まで伸びた薄茶色の髪の毛が少し外ハネしている。その女性が新入生をぐるりと見渡して怪訝な顔をした。
「ん?ペルー教授はどうしたの?」
リーとヤンが顔を見合わせて気まずそうに答えた。
「なんか、走ってどこかいっちゃいました。笑」
「恐らく急な腹痛かと、、!」
「なんて無責任な!」
女性は眉を吊り上げて激昂した。
「まあいいでしょう!新入生はこれで全員かしら?ええ、ええ、そうね。人数はあってるわね。ああ!挨拶が遅れました。私はスィンコ塔2年の監督生、長嶋美樹と言います。以後、私のことはミス長嶋と呼んでください。スィンコ塔では一年生は3人部屋です。名前を呼ぶので、呼ばれたら返事をして前に出てきて下さい。」
ミス長嶋が早口でまくしたてた。
「大丈夫?言うわよ。我妻明日菜(アガツマアスナ)!上白石栞(シオリ)!原琴美(コトミ)!」
「はい!」「はい」「はい」
「貴方達は睦月の部屋になります。イル!おいで!」
天井で羽を休めていた黄色いインコがミス長嶋の肩まで降りて来た。
「イル、彼女たちを案内してあげて。睦月の部屋よ。」
「クエー!」
ばささっと、肩から飛び降り、イルが3人の周りを飛びながら誘導し始めた。
「ツイテコイ!ツイテコイ!」
「え、可愛い!」
上白石栞はインコに目を輝かせている。
我妻明日菜は動じないように目を見開いて平静を装っていた。嫌そうな顔をしていたのは原琴美だった。
「たけし、上白石家と我妻家はチェックだぞ」
ヤンが耳打ちしてきた。周りの新入生達もこの2人が同部屋になることに驚いていた。
「いや、だれ?」
「上白石さんと我妻さんだよ。あの2人の家系は代々の魔法使い一族として結構有名だよ。恐らく家系にアルターレが継承されてると思う。」
「アルターレってなに?」
「お、お、、そうか。アルターレっていうのは、、」
「ヤン!いらんことまで教えんでええねん!」
リーが仏頂面で遮ってきた。
「わいらも"万家"やねんぞ!」
ヤンはたけしと目を合わせながら、両の手のひらを上に向けて、やれやれのポーズをした。
「分かってるよ。兄さん。」
ミス長嶋の声が響いた。
「ティア我妻、ティア上白石、ティア原の3人はこのインコについていって下さい。部屋まで案内してくれます。それと、皆さん、この後は各自、食堂で昼食をすませたら、13時には寮の子望月の間に集まって下さい。寮の説明がありますので、遅れないように!」
「はーい!だって!!行きましょ!」
上白石栞が、他の2人の手をとってパタパタと3人で奥の階段を上がっていった。我妻は少し恥ずかしそうにしていたが、原は明らかに嫌がっていた。
「はい次!サクサク行きますよ!竈門友里(かまどゆうり)、中村翠(すい)、橋本蘭(らん)!」
「はい」「はーい!」「はい!」
中村翠が1番に元気よく出てきた。橋本蘭は楽しそうで、竈門友里は眠たそうだ。
「貴方達は如月の部屋です。メル!」
ばささっ
今度は青色の文鳥が降りてきた。
「そう、そう、いい子ね。あの子達を如月まで案内してあげて。」
メルはミス長嶋の耳を咥えながらじっと3人の方を見つめていたが、ピョっと言って、竈門の頭に着地した。
「んー?」
竈門は少し目が覚めたようだった。
「随分馴れ馴れしい鳥なんだけど。」
竈門がぼそっというと、メルは慌てて飛び立って奥の階段へ消えていった。
「そら3人ともメルを見失わないように!部屋で休めなくなりますよ!」
ミス長嶋がピシャリと言った。
「やば!」
中村と橋本が同時に駆け足でメルを追って階段を登っていき、竈門は2人の後ろをついていった。
「竈門家も要チェックだぞ。たけし」
「分かった。なかなかまびーな。竈門ちゃん」
「ざっと見たけど、スィンコ塔の同級生で1番やばいのは竈門ちゃんだな。竈門家は現当主が九宮神(きゅうきゅうしん)、天皇と日本を守護する役職についてる。現人神(あらひとがみ)として国に認められてるよ。」
「え?竈門ちゃんの親父、神様なの?」
「うーん、、人でありながら神様ってことなんだけど、、まあ神様レベルに強いってことよ。竈門家は神職を3代に渡って輩出した事で、三神通(さんしんつう)と恐れられ、皇室魔法職の中で相当な影響力を持っているそうだよ。それと、他の寮の新入生だと、曾我家、天草家、藤原家らへんが有名だね。」
「あの金髪のねーちゃんは?黒タンクトップ怪力女の後についていってた子。」
「ん?うーん、ああ沖副学長の寮だった子か。あの子は多分オズボーン家の子女だと思うけど、魔法使い一族としては百年の歴史もないよ。ガチモンの一族なら自国の学院に入学するだろうしね。たしかイギリスだっけ?」
「ふーん、結構強そうだったけどね。」
「そうなんだ、、ただ魔法使いは強ければいいってもんじゃないけどね。魔法銀行に就職するのに強いアピールしても受からないでしょ?宮人(くにん)になりたいなら別だけど。ああ、皇室に仕える魔法使いのことね。」
「まあなんでもいいや。」
「山田たけし!万洋(ワンヤン)!甲斐荘(カイショウ)亮太!」
「お、呼ばれた。はいはい!」
「返事は一度でいい!!」
ミス長嶋だ。
「たけし一緒じゃん!」
ヤンがウインクしてきた。
「お、おお。(こいつカマじゃねーだろーな)」
「貴様が大転生のたけしだったのか。」
ミス長嶋がたけしを睨みつけた。よく見ると入学式の時、注意してきた上級生が長嶋だったことにたけしは気付いた。
「おお、あんたか。よろしくな先輩」
「、、貴様、身の振り方を覚えないと痛い目をみるぞ。魔高は甘くない。」
通り過ぎるときに、ミス長嶋に耳元で言われた。
たけしは口笛を吹いて、鳥についていった。
「おい、焼き鳥にされたくなかったら早く案内しろ。鳥」
たけしがリックと呼ばれていた案内鳥を睨みつけた。
リックは黒色の燕で、体の横一線に黄色のラインが走っていた。
「たけし、鳥に命令する。、、と。」
ヤンが呟いた。
「何書いてんの?」
甲斐荘(カイショウ)亮太が気になってヤンに話しかけた。
「ん?大転生のたけし観察日記でもつけようと思ってね!売れそうじゃない⁈」
「おいおい、、」
甲斐荘(カイショウ)亮太は呆れ顔だ。
「2人は元から知り合いなのか?」
「いや、さっき話したばっか笑」
「なるほどね。まさか大転生の子と同室になるとはな、、」
甲斐荘(カイショウ)亮太は少し緊張していた。
たけしが鳥の後をぐんぐんついていくと、ソファと暖炉、本が壁一面に敷き詰められた薄暗い部屋にでた。
鳥が右から3つめの本棚にある、下から2段目、右から8冊目の本を嘴でつついた。
するとカチっと音がして本棚の本達がまるで生きているように震えだした。本が本棚の中で動きだし、少し経つと、本棚にたくさんの本で作られた扉の模様が出来上がった。
鳥はそれを確認するとヒュッと飛びたってどこかに消えてしまった。
たけしは2人の方を見た。
「あ、ちょっとまって、たけし」
ヤンがそう言って、鳥がつついていた本のタイトルを確認した。
<アルターレの歴史と系譜:カロリング・C・マリテール(魔導書出版)>
「多分この本がkeyだね。覚えておこう。たけし開けちゃって」
「え、お、おう!」
たけしは本棚に出来た扉の模様を押してみた。するとギィっと音がして、扉の模様の形そのまま本棚が開いた!
「おおー!す、すげえ!」
扉を越えて石畳の廊下を少し歩くと入り口上に[神無月]と書かれた部屋に到着した。
「ここが僕たちの部屋だね!やっとついたー!」
ヤンはそう言って、3つあるベッドの内、2段ベットじゃ無い方のベッドに寝転がった。
「僕、寝相悪いからここで笑」
たけしは笑いながら、部屋を物色した。
「どけよ。そこに寝るのは俺だ。」
手頃な燭台を掴みながらドスを効かせてヤンに近づいた。
ヤンは余裕こいていた。
「えー、でもたけし、魔法の勉強全然してないんだよね?いくら大転生の子って言っても、今は俺の方が強いと思うよ。」
(うっ、そうなのか、、?魔法使いと喧嘩したことねーから分からねえ、、!)
たけしがどうしようか考えてる内に、いつの間にかロープで体を拘束されていた。ヤンの魔法だった。
「なんだこりゃあ!!」
ロープが生き物のように動いていた。
「俺はここに寝かせてもらうよ。」
甲斐荘(カイショウ)亮太は心底面倒臭そうに2段ベッドの下段に荷物を置いた。
「ああ!てめえ!俺が上かよ!!」
ロープで縛られながらたけしが文句を言った。
「まあとりあえず昼飯に行こうよ!たけしもいいでしょ?」
「いやだね!」
甲斐性が若干切れ気味に言った。
「おいおい、初日から問題事に巻き込まないでくれよ!ベッドなんてどこでもいいだろ!」
「いーや、俺は1人用ベッドがいい!」
たけしの目が充血していた。力んでいた。
「ふんっ!」
ブチっ!
たけしの体の自由を奪っていたロープが切れた。
「えっ?」
荷物の整理をしていたヤンが驚いた。
(おいおい、万家の拘束術を力技で解いただと、、)
甲斐性は呆れている。
「おい、ヤン、てめーどうなるか分かってんだろうな?」
「え?紐切ったの?え?ちょちょっと待った、暴力はよくない」
「うるせー!」
たけしがヤンに殴りかかる寸前に、たけしは止まった。部屋中にあったナイフとフォーク、筆ペンや先端が尖っているものが、一斉にたけしとヤンの体1センチの所で止まったからだ。
甲斐性だった。
「いい加減にしろ、2人とも。このまま続けて体が穴だらけになるか、大人しく食堂へ向かうか、落ち着いて選べ。」
たけしは喉元に突き立てられたナイフを見て、額から汗が出た。ヤンは懐に突っ込んでいた右手をゆっくり抜いた。
「分かりましたよ。亮太君。仲良くしましょう。」
ヤンがそう言うのを聞いて、甲斐性はたけしを見た。
「たけしはどうだ?」
「ヤン、だがてめーのベッドは、2段ベッドだ」
甲斐性はため息をついて、少し考えた。
「わかった。じゃあ1人用のベッドは俺が使う。文句のある奴はこのまま穴だらけになるか、ベッドを明け渡すか、慎重に言葉を選んでくれ。」
「僕は亮太君で大丈夫よ。」
ヤンがすぐに答えた。たけしは甲斐性を睨みつけながら、右手の先にある空中で固定されているナイフを掴んだ。
甲斐性はそれを冷めた目で見ていた。
ナイフがたけしの手に食い込み血が滲んだ。たけしが力を入れると、パキッと音がして、掴んでいたナイフの固定が解けた。
(こいつ、なんつーさめた目をしてやがる。)
たけしは甲斐性の目を見て、少し寒けがした。
たけしはそのナイフを下に放り投げてから言った。
「わかったよ。俺の負けだ。」
「よし。」
ザザーっとヤンとたけしの周りを覆っていた凶器が自重で床に落ちた。
「とりあえず飯にしよう。」
甲斐性はほっとしながらも、今後の共同生活に不安しかなかった。
非魔法使いの両親から生まれた貧乏魔法使い「山田たけし」が魔高(王立魔術高等専門学院)の入学式を迎えた。多摩地区の山の中に高い塀に囲まれた陸の孤島とかした学院には、7つの寮があり、黒タンクトップの肉体美を誇る沖・キャストレイ・玲子副学長につれられ、ヴィクトリア・未央・オズボーンは隣あうウノ塔とドス塔の方へ向かって行った。一方たけしは、どもり気味の魔術概論の教授、ペルー・仁につれられ、スィンコ塔に向かうのだが、、?
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たけしは困惑した。
40名ほどの初めて顔をかわす学生たちの尊敬と畏怖と好奇の目に囲まれたからだった。
「え、何?」
たけしは若干イライラしていた。
遠巻きでスィンコ塔に入寮する新入生たちがペルー・仁教授の横にいるたけしに注目している。
「う、、うおっほん!ゲフッ!ゲフッ!」
ペルー・仁が咳払いをした。
「えー、み、みなさん、こ、これから、スィンコ塔に、い、移動しますが、我がりょ、寮に、<大転生>のた、たけし君も入寮す、することが、決まって、います!」
一部の新入生が歓声をあげた。
「今年の寮対抗戦はうちで決まりだな!」
「たけし頼むぜ!」
「先生!聞きづらいんでマスクかぶっていいですよ!」
ペルー・仁はびっくりして、歓声をあげた生徒たちを見つめた。
「ん、ん~、そのみ、民族衣装は、き、君たちは万(ワン)さんとこの子達、か、かな?」
それぞれ黒と青のチャンパオ(中華服)に身を包んだ2人が、まってましたと言わんばかりにみんなの前に躍り出てきた。
「あい!待ってました!同寮の皆々様!」
「只今ご紹介賜りましたのは万家の末裔!」
2人は、くるくると踊りながら、ペルー・仁のヨレヨレの白衣をどこからか取り出したはけでパタパタはたき、綺麗に仕立て上げた。
「兄の万麗(ワンリー)と!」
「弟の万洋(ワンヤン)也!」
兄のリーがペルー・仁のメガネのズレを、弟のヤンがネクタイを直して仕上げに入った。
「以後、お見知りおきを!!」
最後は2人揃って立礼した。
緊張していた学生たちもネクタイを頭につけて、逆さまのメガネをつけているペルー教授を見て、さすがに吹き出した。
リーとヤンがたけしの方を向き、笑顔を見せた。
「たけし、よろしくな!リーと、」
「ヤンだ!」
「お、おお。よろしく、、」
たけしは2人のことをミュージカル兄弟と心の中で名付けた。自分より目立っていたので若干腹が立ったが、様子を見てから敵か味方かを判断することにした。
「と、と、とりあえず、、スゥインコ、スゥインコと、と、塔に、い、い、いってなさい!」
ペルー・仁が頭を隠しながら走ってどこかに行ってしまった。
「寮はこっちだから、みんなついてきて!」
リーとヤンが先頭に立ってみんなを誘導してくれた。たけしはここは愛想を振りまいた方が間違いなくいいと判断し、媚びモードに切り替えた。
「ヤンくんとリーくん?だっけか。よろしくな!おれはたけし。色々教えてくれると嬉しいな!」
「おう!学院のことならなんでも聞いてくれ!」
「俺ら兄貴と姉者も入学してるから大体知ってるんだよね笑」
「そうなんだ!だから詳しいんだね!すごいや!」
たけしが目をキラキラさせながら答えた。
「よ、よしてくれよ笑 大転生のたけしにそんなこと言われたら恥ずかしいよ」
「それな笑」
リーとヤンが顔を見合わせて笑った。たけしはここだと思い、意を決して質問した。
「その、大転生?って、、何か教えてくれない?」
2人が急に真顔になった。
「え?知らないの?」
リーがびっくりした顔で言った。
「そ、そうなんだ。知らないんだよね。」
たけしはこめかみにピクピクと怒りのせいで血管が浮き出ていたが、顔はなんとか笑顔を保っていた。
「よ、よかったら、教えて、くれないかな、?」
なんとか明るい声を腹からひりだした。
「えー?ほんとかなー⁈ほんとに知らないの⁈」
リーは自分がからかわれているんじゃないかと思って、聞き返した。
(あ、やばい。キレそう)
たけしの視界が怒りで真っ白になる寸前、ヤンが会話に入ってきた。
「兄さん、それは失礼だよ。たけし君はピュアの生まれなんだから、魔法界の事をこれから学ばれるんでしょ。」
「え?たけし、ピュアなの⁈」
「兄さん、大転生の子はこれまでの統計上、ピュアの生まれからしか誕生してないよ。僕、原作読んだから知ってるんだ。」
「そーなのか!俺、ドラマしか見てないからな~」
「たけし君、ごめんね。大転生っていうのは300年に1度誕生すると言われているすごい魔法力を秘めた魔法使いのことを言うんだ。たけし君は最初の春をいつ経験してる?」
「最初の春ってなに?」
たけしはヤンにならムカつかずに質問出来ると悟った。
「最初の春っていうのは、魔法使いとして産まれたことを証明する最初の不思議な現象のことを言うんだけど、、身に覚えがある?親から聞いたとか?」
「あー、それだったらなんか母ちゃんの腹の中にいる時に、声が聞こえたって、両親が言ってたわ」
「お腹の中で!!」
リーが口をポカーンと開けてたけしを見つめた。
「す、すごい!すごいよ!!最初の春を出産前にしてるなんて!!普通はどんなに早くても1歳後半だよ!」
ヤンは興奮してる。
「それの何がそんなにすごいのよ。」
たけしは2人のリアクションについていけなかった。
「単純に、最初の春が早いほど魔法力が高くなるってのもあるけど、大転生、つまり1歳になる前に最初の春を迎えた子のことをいうんだけれど、大転生の子は継承魔法が使えるらしいんだ。」
「継承魔法?」
「うん、まだ考察の域を出ないんだけど、、何しろ300年単位で1人、しかもピュアの子からしか生まれないもんだから、全然研究が進んでないんだけど、、生まれ変わりってあるでしょ?それの魔法版だと思ってくれていいんだけど、、あ、ピュアっていうのは両親がどっちも非魔法使いなのに魔法使いとして産まれた子のことを言うんだけど、、」
「1万人に1人の確率で産まれるらしいよ。」
リーが考え事をしながらボソッと言った。
「ふーん、じゃあ俺強いんだ!」
たけしは機嫌が良くなってきた。
ヤンがうなづいた。
「多分、というか絶対強いよ笑 というか、<<大転生の子>>を絶対読んだ方がいい!昔出版された本なんだけど、超人気で何度も重版してるんだ!!自分がそうなら尚更だよ!笑笑」
「今期のドラマも最高だぜ!?キリスト役の雨麗(ユーリー) めちゃ可愛いよ!キリストに女優ってのが意外とハマるんだよな~!」
「キリストってイエスキリスト?多分俺見ないよ笑」
たけしの返事にリーが笑って、ヤンは困った。
リーが急に真面目な顔をしてわざとらしく、仰々しくたけしに言った。
「たけし殿!キリストを馬鹿にしてはなりませんぞ!
イエス様も貴方様も同じ大転生の子なのですから!」
リーが腹を抱えながら笑っている。たけしはハッとした。いつのまにかスィンコ塔に到着していたことに気づいたからだった。
蔦が絡まった巨城。
スィンコ塔の後ろには森が広がっていた。小鳥が眩しそうに飛んでいた。
みんなが入り口から大広間に入ると、緑のローブに身を包んだ女性が1人立っていた。肩程まで伸びた薄茶色の髪の毛が少し外ハネしている。その女性が新入生をぐるりと見渡して怪訝な顔をした。
「ん?ペルー教授はどうしたの?」
リーとヤンが顔を見合わせて気まずそうに答えた。
「なんか、走ってどこかいっちゃいました。笑」
「恐らく急な腹痛かと、、!」
「なんて無責任な!」
女性は眉を吊り上げて激昂した。
「まあいいでしょう!新入生はこれで全員かしら?ええ、ええ、そうね。人数はあってるわね。ああ!挨拶が遅れました。私はスィンコ塔2年の監督生、長嶋美樹と言います。以後、私のことはミス長嶋と呼んでください。スィンコ塔では一年生は3人部屋です。名前を呼ぶので、呼ばれたら返事をして前に出てきて下さい。」
ミス長嶋が早口でまくしたてた。
「大丈夫?言うわよ。我妻明日菜(アガツマアスナ)!上白石栞(シオリ)!原琴美(コトミ)!」
「はい!」「はい」「はい」
「貴方達は睦月の部屋になります。イル!おいで!」
天井で羽を休めていた黄色いインコがミス長嶋の肩まで降りて来た。
「イル、彼女たちを案内してあげて。睦月の部屋よ。」
「クエー!」
ばささっと、肩から飛び降り、イルが3人の周りを飛びながら誘導し始めた。
「ツイテコイ!ツイテコイ!」
「え、可愛い!」
上白石栞はインコに目を輝かせている。
我妻明日菜は動じないように目を見開いて平静を装っていた。嫌そうな顔をしていたのは原琴美だった。
「たけし、上白石家と我妻家はチェックだぞ」
ヤンが耳打ちしてきた。周りの新入生達もこの2人が同部屋になることに驚いていた。
「いや、だれ?」
「上白石さんと我妻さんだよ。あの2人の家系は代々の魔法使い一族として結構有名だよ。恐らく家系にアルターレが継承されてると思う。」
「アルターレってなに?」
「お、お、、そうか。アルターレっていうのは、、」
「ヤン!いらんことまで教えんでええねん!」
リーが仏頂面で遮ってきた。
「わいらも"万家"やねんぞ!」
ヤンはたけしと目を合わせながら、両の手のひらを上に向けて、やれやれのポーズをした。
「分かってるよ。兄さん。」
ミス長嶋の声が響いた。
「ティア我妻、ティア上白石、ティア原の3人はこのインコについていって下さい。部屋まで案内してくれます。それと、皆さん、この後は各自、食堂で昼食をすませたら、13時には寮の子望月の間に集まって下さい。寮の説明がありますので、遅れないように!」
「はーい!だって!!行きましょ!」
上白石栞が、他の2人の手をとってパタパタと3人で奥の階段を上がっていった。我妻は少し恥ずかしそうにしていたが、原は明らかに嫌がっていた。
「はい次!サクサク行きますよ!竈門友里(かまどゆうり)、中村翠(すい)、橋本蘭(らん)!」
「はい」「はーい!」「はい!」
中村翠が1番に元気よく出てきた。橋本蘭は楽しそうで、竈門友里は眠たそうだ。
「貴方達は如月の部屋です。メル!」
ばささっ
今度は青色の文鳥が降りてきた。
「そう、そう、いい子ね。あの子達を如月まで案内してあげて。」
メルはミス長嶋の耳を咥えながらじっと3人の方を見つめていたが、ピョっと言って、竈門の頭に着地した。
「んー?」
竈門は少し目が覚めたようだった。
「随分馴れ馴れしい鳥なんだけど。」
竈門がぼそっというと、メルは慌てて飛び立って奥の階段へ消えていった。
「そら3人ともメルを見失わないように!部屋で休めなくなりますよ!」
ミス長嶋がピシャリと言った。
「やば!」
中村と橋本が同時に駆け足でメルを追って階段を登っていき、竈門は2人の後ろをついていった。
「竈門家も要チェックだぞ。たけし」
「分かった。なかなかまびーな。竈門ちゃん」
「ざっと見たけど、スィンコ塔の同級生で1番やばいのは竈門ちゃんだな。竈門家は現当主が九宮神(きゅうきゅうしん)、天皇と日本を守護する役職についてる。現人神(あらひとがみ)として国に認められてるよ。」
「え?竈門ちゃんの親父、神様なの?」
「うーん、、人でありながら神様ってことなんだけど、、まあ神様レベルに強いってことよ。竈門家は神職を3代に渡って輩出した事で、三神通(さんしんつう)と恐れられ、皇室魔法職の中で相当な影響力を持っているそうだよ。それと、他の寮の新入生だと、曾我家、天草家、藤原家らへんが有名だね。」
「あの金髪のねーちゃんは?黒タンクトップ怪力女の後についていってた子。」
「ん?うーん、ああ沖副学長の寮だった子か。あの子は多分オズボーン家の子女だと思うけど、魔法使い一族としては百年の歴史もないよ。ガチモンの一族なら自国の学院に入学するだろうしね。たしかイギリスだっけ?」
「ふーん、結構強そうだったけどね。」
「そうなんだ、、ただ魔法使いは強ければいいってもんじゃないけどね。魔法銀行に就職するのに強いアピールしても受からないでしょ?宮人(くにん)になりたいなら別だけど。ああ、皇室に仕える魔法使いのことね。」
「まあなんでもいいや。」
「山田たけし!万洋(ワンヤン)!甲斐荘(カイショウ)亮太!」
「お、呼ばれた。はいはい!」
「返事は一度でいい!!」
ミス長嶋だ。
「たけし一緒じゃん!」
ヤンがウインクしてきた。
「お、おお。(こいつカマじゃねーだろーな)」
「貴様が大転生のたけしだったのか。」
ミス長嶋がたけしを睨みつけた。よく見ると入学式の時、注意してきた上級生が長嶋だったことにたけしは気付いた。
「おお、あんたか。よろしくな先輩」
「、、貴様、身の振り方を覚えないと痛い目をみるぞ。魔高は甘くない。」
通り過ぎるときに、ミス長嶋に耳元で言われた。
たけしは口笛を吹いて、鳥についていった。
「おい、焼き鳥にされたくなかったら早く案内しろ。鳥」
たけしがリックと呼ばれていた案内鳥を睨みつけた。
リックは黒色の燕で、体の横一線に黄色のラインが走っていた。
「たけし、鳥に命令する。、、と。」
ヤンが呟いた。
「何書いてんの?」
甲斐荘(カイショウ)亮太が気になってヤンに話しかけた。
「ん?大転生のたけし観察日記でもつけようと思ってね!売れそうじゃない⁈」
「おいおい、、」
甲斐荘(カイショウ)亮太は呆れ顔だ。
「2人は元から知り合いなのか?」
「いや、さっき話したばっか笑」
「なるほどね。まさか大転生の子と同室になるとはな、、」
甲斐荘(カイショウ)亮太は少し緊張していた。
たけしが鳥の後をぐんぐんついていくと、ソファと暖炉、本が壁一面に敷き詰められた薄暗い部屋にでた。
鳥が右から3つめの本棚にある、下から2段目、右から8冊目の本を嘴でつついた。
するとカチっと音がして本棚の本達がまるで生きているように震えだした。本が本棚の中で動きだし、少し経つと、本棚にたくさんの本で作られた扉の模様が出来上がった。
鳥はそれを確認するとヒュッと飛びたってどこかに消えてしまった。
たけしは2人の方を見た。
「あ、ちょっとまって、たけし」
ヤンがそう言って、鳥がつついていた本のタイトルを確認した。
<アルターレの歴史と系譜:カロリング・C・マリテール(魔導書出版)>
「多分この本がkeyだね。覚えておこう。たけし開けちゃって」
「え、お、おう!」
たけしは本棚に出来た扉の模様を押してみた。するとギィっと音がして、扉の模様の形そのまま本棚が開いた!
「おおー!す、すげえ!」
扉を越えて石畳の廊下を少し歩くと入り口上に[神無月]と書かれた部屋に到着した。
「ここが僕たちの部屋だね!やっとついたー!」
ヤンはそう言って、3つあるベッドの内、2段ベットじゃ無い方のベッドに寝転がった。
「僕、寝相悪いからここで笑」
たけしは笑いながら、部屋を物色した。
「どけよ。そこに寝るのは俺だ。」
手頃な燭台を掴みながらドスを効かせてヤンに近づいた。
ヤンは余裕こいていた。
「えー、でもたけし、魔法の勉強全然してないんだよね?いくら大転生の子って言っても、今は俺の方が強いと思うよ。」
(うっ、そうなのか、、?魔法使いと喧嘩したことねーから分からねえ、、!)
たけしがどうしようか考えてる内に、いつの間にかロープで体を拘束されていた。ヤンの魔法だった。
「なんだこりゃあ!!」
ロープが生き物のように動いていた。
「俺はここに寝かせてもらうよ。」
甲斐荘(カイショウ)亮太は心底面倒臭そうに2段ベッドの下段に荷物を置いた。
「ああ!てめえ!俺が上かよ!!」
ロープで縛られながらたけしが文句を言った。
「まあとりあえず昼飯に行こうよ!たけしもいいでしょ?」
「いやだね!」
甲斐性が若干切れ気味に言った。
「おいおい、初日から問題事に巻き込まないでくれよ!ベッドなんてどこでもいいだろ!」
「いーや、俺は1人用ベッドがいい!」
たけしの目が充血していた。力んでいた。
「ふんっ!」
ブチっ!
たけしの体の自由を奪っていたロープが切れた。
「えっ?」
荷物の整理をしていたヤンが驚いた。
(おいおい、万家の拘束術を力技で解いただと、、)
甲斐性は呆れている。
「おい、ヤン、てめーどうなるか分かってんだろうな?」
「え?紐切ったの?え?ちょちょっと待った、暴力はよくない」
「うるせー!」
たけしがヤンに殴りかかる寸前に、たけしは止まった。部屋中にあったナイフとフォーク、筆ペンや先端が尖っているものが、一斉にたけしとヤンの体1センチの所で止まったからだ。
甲斐性だった。
「いい加減にしろ、2人とも。このまま続けて体が穴だらけになるか、大人しく食堂へ向かうか、落ち着いて選べ。」
たけしは喉元に突き立てられたナイフを見て、額から汗が出た。ヤンは懐に突っ込んでいた右手をゆっくり抜いた。
「分かりましたよ。亮太君。仲良くしましょう。」
ヤンがそう言うのを聞いて、甲斐性はたけしを見た。
「たけしはどうだ?」
「ヤン、だがてめーのベッドは、2段ベッドだ」
甲斐性はため息をついて、少し考えた。
「わかった。じゃあ1人用のベッドは俺が使う。文句のある奴はこのまま穴だらけになるか、ベッドを明け渡すか、慎重に言葉を選んでくれ。」
「僕は亮太君で大丈夫よ。」
ヤンがすぐに答えた。たけしは甲斐性を睨みつけながら、右手の先にある空中で固定されているナイフを掴んだ。
甲斐性はそれを冷めた目で見ていた。
ナイフがたけしの手に食い込み血が滲んだ。たけしが力を入れると、パキッと音がして、掴んでいたナイフの固定が解けた。
(こいつ、なんつーさめた目をしてやがる。)
たけしは甲斐性の目を見て、少し寒けがした。
たけしはそのナイフを下に放り投げてから言った。
「わかったよ。俺の負けだ。」
「よし。」
ザザーっとヤンとたけしの周りを覆っていた凶器が自重で床に落ちた。
「とりあえず飯にしよう。」
甲斐性はほっとしながらも、今後の共同生活に不安しかなかった。
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