キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
33 / 120

第33話 ルチアーノの本気

しおりを挟む
(懐かしい、この緊張感・空気感・高揚感、、、、数年前の表社会に対する大規模遠征で置き忘れてきた本当に戦い。俺が生まれて、育った場所ッ)



 ルチアーノは迫り来る絶対零度の斬撃を前にして呆然と脳内で呟いた。

 音速を超えた攻撃であり、常人であれば脳内で一言も呟く暇すら無いのであるが、ルチアーノの異常な思考速度の前では常人の一分と同じ体感時間である。



(皮肉なモンだな、死を強く感じれば感じる程心臓の鼓動を強く感じるッ!! 死神に鎌を押しつけられた者のみが体感出来る究極の生!!)



 吸い込んだ凍て付く大気が気管をズタズタに切り裂く痛みを感じてルチアーノは口端を吊り上げる。

 未だ数メートル先に存在しているにも関わらず血液の運搬を停止させ、身体を氷塊に変えられてしまいそうな巨大マイナスエネルギーに目を見開く。



(久し振りだよ、、、感情のままにッ怒りが指し示すままに力を振りかざすのはッ!!)



 ルチアーノはディーノの母『ルーナ』殺害の報復として表社会へ攻め込み、敵味方含めて数万人が死んだ大戦争の敗北以来封印していた怪物が目覚める音を聞いた。

 ディーノには絶対に見せられない自分を本性、史上最悪の犯罪者ルチアーノ・バラキアの姿。



『クサナギ・朱天血月』



 ルチアーノは殺意向き出しの表情で右腕を振り上げ、全てを凍て裂きながら迫ってくる斬撃に自ら突進する。

 そして、白熱してキュイーンッという高音を発する右腕を叩き付けた。



 巨大なマイナスエネルギーとプラスエネルギーが衝突して空間が歪む程の爆発が発生するが、どちらの斬撃も爆発を発生させながら衝突を続ける。

 だが数秒間の均衡の後、ルチアーノの斬撃が絶対零度の刃を切り裂いた。



「なにッ!?」



 自分の斬撃が押し負けたと知ったベアトリーチェは驚愕で一歩後退った。

 しかしルチアーノは放った炎の斬撃が氷山を切り裂いて生み出した道を駆け上がり、ベアトリーチェの目前に踊り出る。



「久し振りだなお嬢ッ、お父さん元気してる?」



「ルッ、チアーノォォォォッ!! ウオォォォォォッ!!」



 等々至近距離で対面した二人は互いに右手と大剣を一閃。

 二つの斬撃は再び至近距離で衝突し、閃光と爆煙によって視覚が完全に塞がれる。



「小賢しいッ、姿を現せェェッ!!」



 ベアトリーチェが剣を振り回し氷点下の嵐を発生させ、周囲を覆った爆煙を掻き消す。

 しかし其処にはもうルチアーノの姿は無い。



「『オロチアラマサ』」



 ルチアーノは敵の視覚が潰れた瞬間空中に飛び、不意を突いて大技を叩き込む。

 ベアトリーチェを中心として斬撃の竜巻が発生し、数千数万の斬撃が渦巻き彼女の身体に振り下ろされる。



「・・・マイナスエネルギーの鎧、相変わらず厄介だな」



 そうルチアーノ呟いた瞬間、内側からの圧力によって斬撃の竜巻が散らされて消滅する。

 そして殆ど無傷なベアトリーチェがその中心に立っていた。

 しかしルチアーモの両目は、彼女を覆う目に見えない鎧がかなり削れた事を見抜く。



(俺がぶつけたエネルギーの斬撃を身体に纏っているマイナスエネルギーで相殺している、、、だがマイナスエネルギーは有限、もう少し鎧が薄くなったら一度叩き斬ってみるか)



 マイナスエネルギーとは何かを与えるエネルギーでは無く、何かを奪うエネルギーの事。

 プラスエネルギーが加速・発火などの法則だとすれば、マイナスエネルギーは減速・凍結などのエネルギーの事である。



「先ずはジックリ削ってみるか、、、『アマノムラクモ・紅蓮千刃』」



 ルチアーノは地面に着地し、先程チャムラップを焼き尽くした業火と斬撃の波をベアトリーチェにぶつける。

 しかしベアトリーチェはこの技を放つまでの僅かな時間の間にエネルギーを貯め、形勢を一転攻勢にかえる一撃を放った。



「『バステッドクロック』」



 ベアトリーチェを中心として強大なマイナスエネルギーの塊が膨張し、辺り一帯のエネルギーを奪い去り氷で覆い尽くす。

 ルチアーノが放った紅光を放つ数万の斬撃も、莫大なマイナスエネルギーに呑み込まれて全て跡形も無く消滅してしまった。



「・・・ハッ!? しま、、、ッ!!」



 ルチアーノは一瞬意識が飛んで、気が付くとは霜で覆われていた。

 即座に自らの内側に溜め込んでいたエネルギーだけで意識を取り戻し、慌てて臨戦対戦を取ったが既に手遅れ。

 ベアトリーチェが放った大剣の凪払いが目の前に迫っていたのだ。



 ズガァンッという衝突音と共に大剣はルチアーノに命中。

 その瞬間ルチアーノの身体はその場から消え、抉り上げる様な角度で叩き込まれた斬撃によって遙か彼方に吹飛ばされる。

 最終的にルチアーノは屋敷から100m程離れた時計塔に激突して停止した。



「いててっ、、、マイナスエネルギーによって全物質のエネルギーを奪う擬似的な時間停止、か。厄介だなッ」



 ルチアーノは瞬時に則でエネルギーを流し込んだ右手を首と大剣の隙間に流し込み、首を斬り飛ばされる事だけは何とか回避した。

 しかしエネルギーで斬撃を防いだにも関わらず、攻撃を受けた右手はダメージが貫通して骨の直前まで達する深い傷が刻まれ、血が流れ出る。



(ならコッチも、その莫大なマイナスエネルギーを相殺して余り有る量のエネルギーを纏えば良いだけだ、力こそパワーって奴だよッ!!)



 ルチアーノはそう胸中で呟き、精神を再びより深い領域まで潜り込ませる。

 そして脳味噌の内側から雷が落ちた様な電気信号が発され、シナプスを経由し第13神経が森羅万象と繋がった。



「久し振りの万象共鳴モードだ、、、20分は保ってくれよッ」



 脳味噌の奥深くに針を突き刺された様な痛みが走り、周辺一帯の『則』がルチアーノの第13神経と共鳴して身体にまとわり付いて来る。

 そして途轍もない量のエネルギー、其れこそ火山の噴火に相当するエネルギーが全世界から流れ込んでくるのだ。



(ググッ、、、全身を巨大な手で握り潰されている様な負荷の掛かり方ッ此れこそ世界に触れている感覚!!)



 世界に触れている感覚、これは人間の限界を超えた範囲の則と繋がった状態である『万象共鳴モード』に突入した事が有る者だけしか共感出来ない例えである。

 通常の状態よりも則との繋がりが密接に成り、自分の僅かな変化に則が過剰反応を示す。

 自分の為に一瞬一瞬で世界が作り直され、世界が自分の落書き専用の真っ白なキャンパスに思えてくる全能感。



「さて、第2ラウンドといきますか、、、、」



 ルチアーノは脱力した様子で膝を折りたたんで筋肉を収縮し、エネルギーを溜め込む。



「ねッ!!」



 折りたたんでいた両足の筋肉を解放し地面を力強く蹴り付けた次の瞬間、ルチアーノはベアトリーチェの目前1メートルの場所に現われ遙か後方で時計台が崩れ去る音が響いた。

 そして何の技も発動する事無く、シンプルに右腕を振っただけで発生した斬撃がマイナスエネルギーの鎧を貫通する。

 ベアトリーチェの胸部が切り裂かれ、鮮血が飛び散ったのだった。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...