キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

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第71話 強者との戦い

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「行くなッ、ディルク!! 今すぐ仲間に連絡して逃げろッ!!」



 襲撃ポイントにターゲットが到着し、飛び出して第一撃をかまそうとしたディルクの肩を慌てて掴む。

 そして恐怖と驚愕によって真っ赤に染まった顔で叫んだ。



「え? 何ですか急に、ここまで来て逃げろなんてッ……」



「良いから逃げろ!! 俺が見誤った、アイツは故意に自分の力を隠して俺達をおびき寄せたんだ!!何が目的かは分からないがッとにかくお前が皆を率いて逃げろ!!」



 ディルクは一瞬戸惑った表情を見せたが、ディーノの鬼気迫る表情を見て状況を呑み込む。

 無駄な時間を消費しない為にそれ以上質問せず、懐からトランシーバーを出して仲間達に連絡しながら逃げていった。

 取り敢えずディルクを逃がすことには成功し、胸を撫で降ろす。



 一方のマルク達サイドも誰一人飛び出してこず、ディーノの声と違和感を感じて飛び出すのを思い留まってくれた様だ。

 恐らく既にマルクが他の子供達を逃がしてくれているだろう。

 これで、死ぬとしても恐らく自分達だけになった。



(其れよりもアイツが何者なのか確かめねえと。素直に逃がしてくれれば良いがッ……)



「出てこないのか? 少年??」



 ディーノが相手の出方を見るために顔を出した瞬間、ターゲットの男と目が合い脳に響くような声で話掛けられた。

 落ち着いて小さなトーンの声だが、耳にしただけで圧迫感を感じ呼吸がし辛くなる。



(話掛けられた!? ど、どう対応するのが正解だッ、何て返答すればッ)



 声を聞いた瞬間大量の選択肢が脳内を駆け巡る。

 プライドを捨てて即座に土下座すべきか、何も言わず一目散に逃げるべきか、其れとも向こうの仲間に連絡される前に襲撃して殺すべきか……

 しかしどの選択肢を取ったとしても、相手の圧倒的な存在感の前には無意味に思えた。



「虎柄のパーカーを着た少年、私は君に用があるんだ。逃げるなどと無駄な事を考えず出て来たまえ……此方も手荒な真似をしたくは無い。君にも、地下の子供達にもッ」



(俺の見た目がバレてるッ! しかも地下の事まで……ッ!!)



 自分の姿を言い当てられた事は確かに衝撃を覚えた。

 しかしそれ以上に含みの有る言い方で地下に居る大切な子供達の事を引き合いに出された事が、ディーノの逆鱗に触れた。

 子供達に害意有りと判断したディーノの脳内は一瞬で真っ赤になり、怒りに任せてターゲットの前に飛び出す。



「テメエッ……他のガキ共に手を出すつもりか?」



 鬼神の如き努顔を作り、ディーノは薄笑いを浮かべるターゲットの男とポケットに手を入れながら向き合った。

 激しい怒りにより身体が異常発熱して、今にも破裂してしまいそうな程の速度で心臓が拍動している。

 ディーノが一番力を発する、臨戦態勢だ。



 一方のターゲットは今にも怒りが爆発しそうなディーノを前にして涼しい顔を保つ。

 そしてディーノゆっくりと嘗め上げる様に観察し、其れから冷たく人間的な情を一切感じられない声を発した。



「さあな。私が求める回答をお前達が用意出来なければ、全員そろってあの世に行く事になる……どうだい? 素晴らしい提案だろ?」



「ああ、死ねッ」



 遂にディーノの怒りが爆発し、ポケットに入れてた石を投げ付けた。

 その威力は唯の石礫とは訳が違い、ナイフの様に尖らされた石が敵の顔面に突き刺さろうと一直線に突き進んでいく。

 しかしターゲットは接近する石を涼しい顔で見詰め、ディーノの手から石が離れたその時には既に己の肉体を完全に石の直進軌道から外していた。



(ピッチングモーションが大きすぎる、右足を後ろへ引き半身を作った瞬間に全てを察した。加えて激怒しているにも関わらずポケットの手を入れている……此れではまるで今から投擲攻撃をすると大声せ宣言している様な物だなッ)



 ターゲットは詰まらなそうに脳内でそう呟き、反撃を叩き込む為に重心を前に傾けた。

 そして地面が陥没する程の力でコンクリートの地面を蹴り抜き、ディーノとの間合いをゼロにしようとした瞬間、背後からマルクの跳び蹴りが襲った。



「マジかよッ……これ止めんのか、オッサンッ」



 マルクは空中で全力の苦笑いをしながらそう呟いた。

 ディーノがわざと大袈裟な動きで礫による投擲攻撃を放ち、其れに敵が注意を引き付けられている隙を突いてマルクが跳び蹴りを叩き込む。

 今までの敵全てに重い一撃を叩き込んできた最強のコンビネーション攻撃であり、今回も完全に不意を突き途中までは上手く行っていたのだ。

 しかし蹴りが命中するまで後数秒という所で、突如ターゲットの身体がビデオの早送りの様に高速移動して、気が付けば足を片手で握られ蹴りを止められていた。

 そしてターゲットは右手で木枝でも振り回す様にマルクの身体を壁に叩き付けたのだ。



「ガハッ……ッ!!」



 地響きの様な衝突音を上げてコンクリートの壁に衝突し、壁に穴が開く程の衝撃がマルクを襲う。

 そして手を離されたマルクは力なく壁からずり落ち、地面の上でグッタリと倒れた。



「マルクッ!!」



 凄まじいダメージによって地面に倒れ伏したマルクにディーノが慌てて駆け寄る。

 そしてターゲットの男はその光景を妨害するでも無く冷めた目で見詰め、ゆっくりと独り言でも呟く様に口を開いた。



「なる程、あの怒りに溢れた声も表情も投石も……全て本命の蹴りを命中させる為のフェイクだったと。フンッ、唯のガキだと思って嘗めていたが案外骨があって楽しめそうだ」



 ターゲットはそう言い切ると、少し口端を吊り上げた。

 ディーノはその表情を忌々しそうに見上げ、本気の殺意が籠もった瞳を向ける。



「気にするなッ、大丈夫だ……未だやれるッ」



 ディーノにだけ抱えられていたマルクが目を開き、その手の中から転げ落ち自らの手を突いて立ち上がった。

 闘志の籠もった目でターゲットを睨み、臨戦態勢になる。

 鼻と同じ高さまで拳を上げ、肘を締めた固い防御力を誇る構えを作った。



「ああ、了解だ! さっさとぶっ飛ばして冬越えの資金を手に入れようぜ!!」



 慌ててディーノも立ち上がり、構えを作る。

 ディーノの構えは半身を作り、右手は身体の側面に沿うように掲げて左手は軽く揺らしながらヘソの上辺りに構えている。

 拳は指を軽く内側に曲げる程度で、どんな攻撃にも繋げやすく守りやすい、そして搦め手も使いやすいオールラウンダーの構えだ。



 二人共若干歪ではあるが、喧嘩慣れして洗練された構えである。



「ほう、未だ遊びに付き合ってくれるというのか? 面白い、精々私を楽しませてみろ」



 ターゲットは二人の殺意が籠もった目を向けられても怯むことは無く、逆に楽しんでいるかの如く手を横に広げて向かい合う。

 その様はまるで二人が此れから自分に向けて放ってくる攻撃を攻撃とも思わず、全てを些事として受け入れているかの様であった。 
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