87 / 120
第88話 則のコントロール
しおりを挟む
「ハァ、ハァ……クウッ! おいアンベルト!! ぼさっと見てるだけじゃなくてッ何かアドバイスとか……くれよッ!! 具体的にどうやったら傷口が塞がるとさッ」
ディーノは地面で巨大化を続ける血溜まりの中で、今の彼が放つ事ができる最大限の声を張り上げて叫んだ。
彼は今絶賛苦戦中である。出血開始から5分で完璧に則を観測できる様に成り、10分が経過して強い目眩が恒常化し始めた頃に則を多少コントロールできる様になった。
此処でディーノは初めて自分が強者の周りに感じていた光の玉が則であった事に気が付いたが、その事を喜んでいる余裕は無い。
実は今、ディーノは常人が一年掛けて辿る道程を10分で走り抜けたのだが、其れでも失血死を回避するにはペースが遅すぎた。
そしてディーノはこのままでは死ぬと確信し、意地でも質問しなかったアンベルトに助言を求めたのである。
「そうだな……呼吸や瞬きと同じ要領だ」
「こ、呼吸や瞬きと同じッ!? そんなの……意識してやった事ねえよ!!」
ディーノは気絶しそうになるのを必死に堪え、縋る様に叫んだ。
その反動で一気に身体が重くなり、平衡感覚まで無くなり始める。
「そうだ、つまりそう言う事だ」
「だから、どういう事だよ……」
既に声を張り上げることも出来きず、ディーノから消え入りそうな声が零れた。
「呼吸をするとき、横隔膜を下げて胸郭内の容積を増やすことによって内部圧力が低下し圧力の差によって肺の中へ空気を取り込む、等と考えている人間はいない。皆生まれた瞬間脳に刻まれた呼吸を行うプログラミングに従い、呼吸をして瞬きをしている。則のコントロールも其れと同じで、脳に治療の仕方がプログラミングされるその瞬間を待つしかない。分かったか?」
「てめえの性格が最悪だって事は分かったよ!! 黙ってろクソ野郎、死ねッ!!」
ディーノは全く役に立たないアドバイスのお礼として、迫る死へのストレスを罵倒として叩き付けた。
コッチは奴のせいでたった今殺され掛けているのだ、其れ位当然の権利だろう。
最後の手段としてプライドを曲げ、残り少ない体力を注ぎ込んで助言を求めたが何の成果も得られず苛立ちが溜まる。
(おちつけ、とにかく意識を傷口に集中させろッ! 周囲の則に働き掛けて傷口の周辺に集めれば……)
出血が進み何度か瞬間的に意識が飛び始めた頃、ディーノは等々狙った所に則を集めるレベルにまで到達した。
既に身体の限界が近い、此処で傷を何とか塞げ無ければ意識が飛んで確実に失血死する。
此れがファーストチャンスであり、ラストチャンスでもあった。
(思い出せ、ヒントはある。ついさっきゴンザレスの打撃によってボロボロに成った俺の身体を一瞬で治した時の感覚……アレを再現出来れば傷を塞げる筈だ)
ディーノは最後に残った集中力を振り絞り、今この瞬間に自らの全てを出し切る覚悟である。
怪我によって半壊した身体を癒やされた時の感覚は口で形容するのが不可能な、強いて言うなら何かが入り込んで来て染み渡っていく様な感覚であった。
その感覚だけを頼りに、ディーノはまるで生命の様に不規則に揺れ動く則にイメージを伝えていく。
(頼むッ! 伝わってくれくれ……ッ!!)
この数分間でディーノが掴んだ則と人間の関わりは、まるで電波の悪い環境で通話をしている様であった。
此方から発した言葉の9割が届かず、全く反応を示さないと思ったら突如凄まじい反応を見せる事もある焦れったい作業。
しかし諦めずに粘り強くイメージを送り続けると、とうとう則がディーノのイメージに従って傷口の周辺に集まり始めた。
少しずつ裂傷が小さくなって、漏れ出る血液の量も減少し始める。
常人が10年掛る道程をディーノは20分近くで走り抜けたのだ、追い込まれていたという事もあるが間違いなくディーノには父親から引き継いだ則を操る天性の才が宿っていた。
(よしッ! いけたッ!!)
手首から噴水の様に吹き出ていた出血が完全に止まり、薄くカサブタが出現し始めたのを見てディーノは治療完了を確信する。
しかし其処で胸を撫で降ろす程度なら良かったのだが、此処でディーノは死のストレスから解放された事よってディーノは爆発する様な歓喜の感情を発揮してしまったのだ。
則と心が繋がってしまってる状態で。
パンッという破裂音に似た小さな音が響いた。
そして一度止まった事が夢幻であったかの様に傷が再度大きな口を開け、ディーノの努力を笑い飛ばすかの様に血液を吐き出した。
此れはディーノが集中を切らし、イメージを送り込み続ける事を放棄した結果であった。
「あッ、あぁ…………」
一度塞がった筈の傷がまた開き、最早どうしようも無い程の血液が吹き出たのを見たディーノは悲鳴すら上げる事が出来ず静かに死を悟った。
自分の命が真っ赤な液体に乗って体外へと漏れ出している、そんな光景を見た人間が気を保てる訳も無く失血のダメージも相まって彼の意識は闇に呑まれた。
出血しながら意識を失う、死へ真っ逆さまである。
ディーノは地面で巨大化を続ける血溜まりの中で、今の彼が放つ事ができる最大限の声を張り上げて叫んだ。
彼は今絶賛苦戦中である。出血開始から5分で完璧に則を観測できる様に成り、10分が経過して強い目眩が恒常化し始めた頃に則を多少コントロールできる様になった。
此処でディーノは初めて自分が強者の周りに感じていた光の玉が則であった事に気が付いたが、その事を喜んでいる余裕は無い。
実は今、ディーノは常人が一年掛けて辿る道程を10分で走り抜けたのだが、其れでも失血死を回避するにはペースが遅すぎた。
そしてディーノはこのままでは死ぬと確信し、意地でも質問しなかったアンベルトに助言を求めたのである。
「そうだな……呼吸や瞬きと同じ要領だ」
「こ、呼吸や瞬きと同じッ!? そんなの……意識してやった事ねえよ!!」
ディーノは気絶しそうになるのを必死に堪え、縋る様に叫んだ。
その反動で一気に身体が重くなり、平衡感覚まで無くなり始める。
「そうだ、つまりそう言う事だ」
「だから、どういう事だよ……」
既に声を張り上げることも出来きず、ディーノから消え入りそうな声が零れた。
「呼吸をするとき、横隔膜を下げて胸郭内の容積を増やすことによって内部圧力が低下し圧力の差によって肺の中へ空気を取り込む、等と考えている人間はいない。皆生まれた瞬間脳に刻まれた呼吸を行うプログラミングに従い、呼吸をして瞬きをしている。則のコントロールも其れと同じで、脳に治療の仕方がプログラミングされるその瞬間を待つしかない。分かったか?」
「てめえの性格が最悪だって事は分かったよ!! 黙ってろクソ野郎、死ねッ!!」
ディーノは全く役に立たないアドバイスのお礼として、迫る死へのストレスを罵倒として叩き付けた。
コッチは奴のせいでたった今殺され掛けているのだ、其れ位当然の権利だろう。
最後の手段としてプライドを曲げ、残り少ない体力を注ぎ込んで助言を求めたが何の成果も得られず苛立ちが溜まる。
(おちつけ、とにかく意識を傷口に集中させろッ! 周囲の則に働き掛けて傷口の周辺に集めれば……)
出血が進み何度か瞬間的に意識が飛び始めた頃、ディーノは等々狙った所に則を集めるレベルにまで到達した。
既に身体の限界が近い、此処で傷を何とか塞げ無ければ意識が飛んで確実に失血死する。
此れがファーストチャンスであり、ラストチャンスでもあった。
(思い出せ、ヒントはある。ついさっきゴンザレスの打撃によってボロボロに成った俺の身体を一瞬で治した時の感覚……アレを再現出来れば傷を塞げる筈だ)
ディーノは最後に残った集中力を振り絞り、今この瞬間に自らの全てを出し切る覚悟である。
怪我によって半壊した身体を癒やされた時の感覚は口で形容するのが不可能な、強いて言うなら何かが入り込んで来て染み渡っていく様な感覚であった。
その感覚だけを頼りに、ディーノはまるで生命の様に不規則に揺れ動く則にイメージを伝えていく。
(頼むッ! 伝わってくれくれ……ッ!!)
この数分間でディーノが掴んだ則と人間の関わりは、まるで電波の悪い環境で通話をしている様であった。
此方から発した言葉の9割が届かず、全く反応を示さないと思ったら突如凄まじい反応を見せる事もある焦れったい作業。
しかし諦めずに粘り強くイメージを送り続けると、とうとう則がディーノのイメージに従って傷口の周辺に集まり始めた。
少しずつ裂傷が小さくなって、漏れ出る血液の量も減少し始める。
常人が10年掛る道程をディーノは20分近くで走り抜けたのだ、追い込まれていたという事もあるが間違いなくディーノには父親から引き継いだ則を操る天性の才が宿っていた。
(よしッ! いけたッ!!)
手首から噴水の様に吹き出ていた出血が完全に止まり、薄くカサブタが出現し始めたのを見てディーノは治療完了を確信する。
しかし其処で胸を撫で降ろす程度なら良かったのだが、此処でディーノは死のストレスから解放された事よってディーノは爆発する様な歓喜の感情を発揮してしまったのだ。
則と心が繋がってしまってる状態で。
パンッという破裂音に似た小さな音が響いた。
そして一度止まった事が夢幻であったかの様に傷が再度大きな口を開け、ディーノの努力を笑い飛ばすかの様に血液を吐き出した。
此れはディーノが集中を切らし、イメージを送り込み続ける事を放棄した結果であった。
「あッ、あぁ…………」
一度塞がった筈の傷がまた開き、最早どうしようも無い程の血液が吹き出たのを見たディーノは悲鳴すら上げる事が出来ず静かに死を悟った。
自分の命が真っ赤な液体に乗って体外へと漏れ出している、そんな光景を見た人間が気を保てる訳も無く失血のダメージも相まって彼の意識は闇に呑まれた。
出血しながら意識を失う、死へ真っ逆さまである。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる