キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
98 / 120

第99話 蝋燭の火

しおりを挟む
「コレに……火を付けるのか? どうやって??」



 ディーノはアンベルトが地面に立てた蝋燭を手に取り、あらゆる角度から蝋燭を眺めながら言った。

 触感、重さ、匂い、大きさ、色共に一般的で有り触れた蝋燭である。

 緊急で始まった修行であるから、きっと凄まじく過酷で大がかりなメニューが与えられると思っていたので少し拍子抜けであった。

 1万回蝋燭に火を灯すなど唯の作業に過ぎない。



「当然則をコントロールしてだ、熱の流れを操作して先端の温度を上げれば勝手に発火する。分かったらさっさと修行開始だ! ゴンザレスは予備の蝋燭を取りに行けッ1000本有っても足りんぞ!!」



 そう指示を出すとアンベルトは回れ右をして帰って行った。

 一方のディーノは今まで身体を回復させる時以外は意図して則をコントロールしようとした事は無かったが、直ぐに上手くいくという根拠の無い自身があった。



「ふふん、アンベルトは少し俺を見くびり過ぎだな。一万回なんて直ぐに終わらせてやるよッ」



 ディーノはそう言うと軽い笑いを浮かべながら腕まくりし、座禅を組んで小さな蝋燭の前に座った。

 そして意識をその先端に傾け、神経を周囲の則まで張り巡らしその存在を感じながら火を灯すイメージを伝えていく。

 するとディーノはこの分野でも素晴らしい才能を発揮した。

 最初の数回は流石に失敗したが、4度目の挑戦で早くも感覚を掴み熱エネルギーを流れ込ませ火を灯す事に成功したのだ。



「何だッ以外と簡単じゃん!! コレは本当に数時間で終わらせられるぞッ!!」



 先程万象共鳴モードに突入して以来、ディーノは則との繋がりを非常に強く感じる様に成っていた。

 今は自分が発したイメージの4,5割は伝わっている様なイメージである。

 そしてそれ以上に則を扱う上で重要な感覚的コツを掴み始め、10回目には百発百中で炎を灯せるまでに成長していた。



(何だコレ……突然手首の動脈切断されたり、謎の大男と殴り合いをさせられた今までの修行に比べて簡単過ぎるだろ。やっぱりアンベルトは俺を嘗めてたな、さっさとこの修行終わらせてドヤ顔で飯食ってやるッ)



 ディーノの中に、若しかすると自分は想像以上に天才のでは?という自惚れが出現した。

 そして調子に乗ったディーノはノリノリで火の消し付けを繰り返したのだが、我武者羅にその行動を300回繰り返したとき、漸く異変に気が付く。



「あれ、蝋燭がもうこんなに小さくなってる……」



 初めて楽々突破出来そうな修行を受けて完全に気を抜いていたディーノは、蝋燭の長さが半分まで減少するまで蝋燭の変化に全く気が付かなかった。

 その間に蝋燭は炎の熱を受け蝋が溶け出し、半分以上が白色の水溜まりに変化してしまっている。



「おいゴンザレス~、二本目の蝋燭くれー!!」



 ディーノが名前を呼ぶと、サンタクロースの持っていそうな大きい袋に手を突っ込み、ゴンザレスが一本の蝋燭を持ってやって来た。



「あれ、もう一本目の半分が終わったんだ。回数は何回?」



 ディーノの目の前に置かれている小さくなった蝋燭を見て、ゴンザレスが回数を訪ねて来る。

 その質問を受けたディーノはよくぞ聞いてくれたとばかりに胸を張り、自慢気に回数は教えた。



「聞いて驚くなよぉ? 何とこの数分で300回だ!」



「さ、300回ッ!? 300回でもう蝋燭の半分使い切っちゃったの!! それじゃダメだよディーノ、一本で1万回火を付けなきゃいけないんだからもっと火力を絞らないとッ」



「え……ッ? どういう事だ? とにかく1万回火を付ければ良いんだろ??」



 ディーノはゴンザレスの含みがある発言に何か嫌な物を感じた。

 もしかすると自分は何か大変な勘違いをしているのかも知れない、そんな予感がする。



「……若しかしてアンベルトさんが言ってた修行の意味を勘違いしてる?」



 ゴンザレスが何の事を行っているのか分からず、ディーノは首を傾げてポカンと口を半開いた。

 そしてその表情を見たゴンザレスは、ディーノが間違い無くこの修行の内容を勘違いしているという確信を得て頭を抱える。



「じゃあ一応噛み砕いてもう一度説明するよ……今回の修行内容は、一本の蝋燭を使い切る事無く1万回火を灯せって事!」



「……いッ、一本で一万回!? そんな無茶なッ、出来る訳がねえ!!」



 数秒の沈黙の後、ディーノは地下空間全てに響き渡るほどの叫び声を上げた。

 何故今回の修行が楽に感じたのか、何故アンベルトが1000本あっても足りないといったのか、その全てが線で繋がる。そもそも修行内容を勘違いしていたのだ。

 そして同時に今回の修行がどれ程難関で過酷なモノかも理解してしまった。

 一本の蝋燭に一万回火を灯すのがどれ程難しい事なのか、それはコレまで積み重ねた300回で容易に推測出来る。



「やっぱり、この修行がどれだけ厳しいモノか理解していなかったんだね。アンベルトさんも人が悪い……」



 ゴンザレスにはアンベルトがわざと分かりづらい言い方をして、ディーノを勘違いさせたとしか思えなかった。

 若しかすると、過酷すぎる修行だとディーノが気付き抵抗するのを防ぎたかったのかも……

 しかし、ゴンザレスにはどうしても唯の嫌がらせにしか思えなかった。



 一方のディーノはアンベルトにお怒りを向ける所では無く、突如凶悪な素顔を見せた修行の対策に手一杯であった。

 意識していなかったとは言えディーノは300回で蝋燭半分を使ってしまったのだ、一本に1万回火を付けるなど奇跡に近い所業であると感じる。



「そんな事出来るのか? そして出来たとして、一帯何時間その掛かんだよ……」



 ディーノは絶望の籠もった目で前方に立っている半分に縮んだ蝋燭を眺め、小さく呟いた。

 そして此処から、空腹と疲労に耐えがら只管に蝋燭へ火を灯し続ける地獄の数日間が始まったのである。 



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...