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第99話 蝋燭の火
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「コレに……火を付けるのか? どうやって??」
ディーノはアンベルトが地面に立てた蝋燭を手に取り、あらゆる角度から蝋燭を眺めながら言った。
触感、重さ、匂い、大きさ、色共に一般的で有り触れた蝋燭である。
緊急で始まった修行であるから、きっと凄まじく過酷で大がかりなメニューが与えられると思っていたので少し拍子抜けであった。
1万回蝋燭に火を灯すなど唯の作業に過ぎない。
「当然則をコントロールしてだ、熱の流れを操作して先端の温度を上げれば勝手に発火する。分かったらさっさと修行開始だ! ゴンザレスは予備の蝋燭を取りに行けッ1000本有っても足りんぞ!!」
そう指示を出すとアンベルトは回れ右をして帰って行った。
一方のディーノは今まで身体を回復させる時以外は意図して則をコントロールしようとした事は無かったが、直ぐに上手くいくという根拠の無い自身があった。
「ふふん、アンベルトは少し俺を見くびり過ぎだな。一万回なんて直ぐに終わらせてやるよッ」
ディーノはそう言うと軽い笑いを浮かべながら腕まくりし、座禅を組んで小さな蝋燭の前に座った。
そして意識をその先端に傾け、神経を周囲の則まで張り巡らしその存在を感じながら火を灯すイメージを伝えていく。
するとディーノはこの分野でも素晴らしい才能を発揮した。
最初の数回は流石に失敗したが、4度目の挑戦で早くも感覚を掴み熱エネルギーを流れ込ませ火を灯す事に成功したのだ。
「何だッ以外と簡単じゃん!! コレは本当に数時間で終わらせられるぞッ!!」
先程万象共鳴モードに突入して以来、ディーノは則との繋がりを非常に強く感じる様に成っていた。
今は自分が発したイメージの4,5割は伝わっている様なイメージである。
そしてそれ以上に則を扱う上で重要な感覚的コツを掴み始め、10回目には百発百中で炎を灯せるまでに成長していた。
(何だコレ……突然手首の動脈切断されたり、謎の大男と殴り合いをさせられた今までの修行に比べて簡単過ぎるだろ。やっぱりアンベルトは俺を嘗めてたな、さっさとこの修行終わらせてドヤ顔で飯食ってやるッ)
ディーノの中に、若しかすると自分は想像以上に天才のでは?という自惚れが出現した。
そして調子に乗ったディーノはノリノリで火の消し付けを繰り返したのだが、我武者羅にその行動を300回繰り返したとき、漸く異変に気が付く。
「あれ、蝋燭がもうこんなに小さくなってる……」
初めて楽々突破出来そうな修行を受けて完全に気を抜いていたディーノは、蝋燭の長さが半分まで減少するまで蝋燭の変化に全く気が付かなかった。
その間に蝋燭は炎の熱を受け蝋が溶け出し、半分以上が白色の水溜まりに変化してしまっている。
「おいゴンザレス~、二本目の蝋燭くれー!!」
ディーノが名前を呼ぶと、サンタクロースの持っていそうな大きい袋に手を突っ込み、ゴンザレスが一本の蝋燭を持ってやって来た。
「あれ、もう一本目の半分が終わったんだ。回数は何回?」
ディーノの目の前に置かれている小さくなった蝋燭を見て、ゴンザレスが回数を訪ねて来る。
その質問を受けたディーノはよくぞ聞いてくれたとばかりに胸を張り、自慢気に回数は教えた。
「聞いて驚くなよぉ? 何とこの数分で300回だ!」
「さ、300回ッ!? 300回でもう蝋燭の半分使い切っちゃったの!! それじゃダメだよディーノ、一本で1万回火を付けなきゃいけないんだからもっと火力を絞らないとッ」
「え……ッ? どういう事だ? とにかく1万回火を付ければ良いんだろ??」
ディーノはゴンザレスの含みがある発言に何か嫌な物を感じた。
もしかすると自分は何か大変な勘違いをしているのかも知れない、そんな予感がする。
「……若しかしてアンベルトさんが言ってた修行の意味を勘違いしてる?」
ゴンザレスが何の事を行っているのか分からず、ディーノは首を傾げてポカンと口を半開いた。
そしてその表情を見たゴンザレスは、ディーノが間違い無くこの修行の内容を勘違いしているという確信を得て頭を抱える。
「じゃあ一応噛み砕いてもう一度説明するよ……今回の修行内容は、一本の蝋燭を使い切る事無く1万回火を灯せって事!」
「……いッ、一本で一万回!? そんな無茶なッ、出来る訳がねえ!!」
数秒の沈黙の後、ディーノは地下空間全てに響き渡るほどの叫び声を上げた。
何故今回の修行が楽に感じたのか、何故アンベルトが1000本あっても足りないといったのか、その全てが線で繋がる。そもそも修行内容を勘違いしていたのだ。
そして同時に今回の修行がどれ程難関で過酷なモノかも理解してしまった。
一本の蝋燭に一万回火を灯すのがどれ程難しい事なのか、それはコレまで積み重ねた300回で容易に推測出来る。
「やっぱり、この修行がどれだけ厳しいモノか理解していなかったんだね。アンベルトさんも人が悪い……」
ゴンザレスにはアンベルトがわざと分かりづらい言い方をして、ディーノを勘違いさせたとしか思えなかった。
若しかすると、過酷すぎる修行だとディーノが気付き抵抗するのを防ぎたかったのかも……
しかし、ゴンザレスにはどうしても唯の嫌がらせにしか思えなかった。
一方のディーノはアンベルトにお怒りを向ける所では無く、突如凶悪な素顔を見せた修行の対策に手一杯であった。
意識していなかったとは言えディーノは300回で蝋燭半分を使ってしまったのだ、一本に1万回火を付けるなど奇跡に近い所業であると感じる。
「そんな事出来るのか? そして出来たとして、一帯何時間その掛かんだよ……」
ディーノは絶望の籠もった目で前方に立っている半分に縮んだ蝋燭を眺め、小さく呟いた。
そして此処から、空腹と疲労に耐えがら只管に蝋燭へ火を灯し続ける地獄の数日間が始まったのである。
ディーノはアンベルトが地面に立てた蝋燭を手に取り、あらゆる角度から蝋燭を眺めながら言った。
触感、重さ、匂い、大きさ、色共に一般的で有り触れた蝋燭である。
緊急で始まった修行であるから、きっと凄まじく過酷で大がかりなメニューが与えられると思っていたので少し拍子抜けであった。
1万回蝋燭に火を灯すなど唯の作業に過ぎない。
「当然則をコントロールしてだ、熱の流れを操作して先端の温度を上げれば勝手に発火する。分かったらさっさと修行開始だ! ゴンザレスは予備の蝋燭を取りに行けッ1000本有っても足りんぞ!!」
そう指示を出すとアンベルトは回れ右をして帰って行った。
一方のディーノは今まで身体を回復させる時以外は意図して則をコントロールしようとした事は無かったが、直ぐに上手くいくという根拠の無い自身があった。
「ふふん、アンベルトは少し俺を見くびり過ぎだな。一万回なんて直ぐに終わらせてやるよッ」
ディーノはそう言うと軽い笑いを浮かべながら腕まくりし、座禅を組んで小さな蝋燭の前に座った。
そして意識をその先端に傾け、神経を周囲の則まで張り巡らしその存在を感じながら火を灯すイメージを伝えていく。
するとディーノはこの分野でも素晴らしい才能を発揮した。
最初の数回は流石に失敗したが、4度目の挑戦で早くも感覚を掴み熱エネルギーを流れ込ませ火を灯す事に成功したのだ。
「何だッ以外と簡単じゃん!! コレは本当に数時間で終わらせられるぞッ!!」
先程万象共鳴モードに突入して以来、ディーノは則との繋がりを非常に強く感じる様に成っていた。
今は自分が発したイメージの4,5割は伝わっている様なイメージである。
そしてそれ以上に則を扱う上で重要な感覚的コツを掴み始め、10回目には百発百中で炎を灯せるまでに成長していた。
(何だコレ……突然手首の動脈切断されたり、謎の大男と殴り合いをさせられた今までの修行に比べて簡単過ぎるだろ。やっぱりアンベルトは俺を嘗めてたな、さっさとこの修行終わらせてドヤ顔で飯食ってやるッ)
ディーノの中に、若しかすると自分は想像以上に天才のでは?という自惚れが出現した。
そして調子に乗ったディーノはノリノリで火の消し付けを繰り返したのだが、我武者羅にその行動を300回繰り返したとき、漸く異変に気が付く。
「あれ、蝋燭がもうこんなに小さくなってる……」
初めて楽々突破出来そうな修行を受けて完全に気を抜いていたディーノは、蝋燭の長さが半分まで減少するまで蝋燭の変化に全く気が付かなかった。
その間に蝋燭は炎の熱を受け蝋が溶け出し、半分以上が白色の水溜まりに変化してしまっている。
「おいゴンザレス~、二本目の蝋燭くれー!!」
ディーノが名前を呼ぶと、サンタクロースの持っていそうな大きい袋に手を突っ込み、ゴンザレスが一本の蝋燭を持ってやって来た。
「あれ、もう一本目の半分が終わったんだ。回数は何回?」
ディーノの目の前に置かれている小さくなった蝋燭を見て、ゴンザレスが回数を訪ねて来る。
その質問を受けたディーノはよくぞ聞いてくれたとばかりに胸を張り、自慢気に回数は教えた。
「聞いて驚くなよぉ? 何とこの数分で300回だ!」
「さ、300回ッ!? 300回でもう蝋燭の半分使い切っちゃったの!! それじゃダメだよディーノ、一本で1万回火を付けなきゃいけないんだからもっと火力を絞らないとッ」
「え……ッ? どういう事だ? とにかく1万回火を付ければ良いんだろ??」
ディーノはゴンザレスの含みがある発言に何か嫌な物を感じた。
もしかすると自分は何か大変な勘違いをしているのかも知れない、そんな予感がする。
「……若しかしてアンベルトさんが言ってた修行の意味を勘違いしてる?」
ゴンザレスが何の事を行っているのか分からず、ディーノは首を傾げてポカンと口を半開いた。
そしてその表情を見たゴンザレスは、ディーノが間違い無くこの修行の内容を勘違いしているという確信を得て頭を抱える。
「じゃあ一応噛み砕いてもう一度説明するよ……今回の修行内容は、一本の蝋燭を使い切る事無く1万回火を灯せって事!」
「……いッ、一本で一万回!? そんな無茶なッ、出来る訳がねえ!!」
数秒の沈黙の後、ディーノは地下空間全てに響き渡るほどの叫び声を上げた。
何故今回の修行が楽に感じたのか、何故アンベルトが1000本あっても足りないといったのか、その全てが線で繋がる。そもそも修行内容を勘違いしていたのだ。
そして同時に今回の修行がどれ程難関で過酷なモノかも理解してしまった。
一本の蝋燭に一万回火を灯すのがどれ程難しい事なのか、それはコレまで積み重ねた300回で容易に推測出来る。
「やっぱり、この修行がどれだけ厳しいモノか理解していなかったんだね。アンベルトさんも人が悪い……」
ゴンザレスにはアンベルトがわざと分かりづらい言い方をして、ディーノを勘違いさせたとしか思えなかった。
若しかすると、過酷すぎる修行だとディーノが気付き抵抗するのを防ぎたかったのかも……
しかし、ゴンザレスにはどうしても唯の嫌がらせにしか思えなかった。
一方のディーノはアンベルトにお怒りを向ける所では無く、突如凶悪な素顔を見せた修行の対策に手一杯であった。
意識していなかったとは言えディーノは300回で蝋燭半分を使ってしまったのだ、一本に1万回火を付けるなど奇跡に近い所業であると感じる。
「そんな事出来るのか? そして出来たとして、一帯何時間その掛かんだよ……」
ディーノは絶望の籠もった目で前方に立っている半分に縮んだ蝋燭を眺め、小さく呟いた。
そして此処から、空腹と疲労に耐えがら只管に蝋燭へ火を灯し続ける地獄の数日間が始まったのである。
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