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第三話 バンクエットオブレジェンズ③
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『じゃあ最初は敵も味方も全員NPCのマッチを作ろうか。それと初めは勝手が分からないと思うし、各ジョブの一番スタンダードなスキル・アイテム設定を自動登録出来るけど如何する?』
「へぇ、そんな便利機能まで有るんだな…ならそれで頼む」
『了解ッ!! それじゃあ好きなクラスの彫刻をタッチしたら試合開始だよ。試合中も質問したりアドバイスを受けたり出来るから、一緒に頑張ろうね!』
一から十までプレイヤーのニーズを想定し尽くしているバンクエットオブレジェンズの作り込み具合にジークは舌を巻いた。まさかCPU戦やスキル・アイテムの自動登録機能まで搭載とは。
だがしかし重要なのはあくまでメインコンテンツ、ゲームが面白いのかが重要なのだ。
そう飽きもせず同じ言葉を脳内で繰り返し彼は彫刻へと近づいていく。
(確かナイトが一番人気だって言ってたな)
モッチーナが先ほど言っていた事を思い出したジークはナイトの彫刻へと手を伸ばす。
一番人気という事は、少なくとも初心者お断りな性能では無いはずだ。それに話を聞く限りウォーリアクラスは他クラスに比べ役割がはっきりしている様である。
一先ず今はこれを選んで間違いは無いだろう。
そう考えたジークの手が触れた途端、まるで彫刻の中へと吸い込まれるかの如く視界がグニャリと歪む。そして彼の体は戦場へと送り込まれたのであった。
ヒュオンッ
送られた先は背後に見上げる程の大樹が聳え、前方の一ヶ所を除き周囲をぐるりと剣が如く突き出た岩石が囲む場所。
だがその一ヶ所も、赤色のオーラの様な物に遮られ今は先へ進むことが出来ない。
そしてジークの近くには3体の人影。
それらプレイヤーの姿をした者達は準備体操の様に腕伸ばしや屈伸を行っていて一見本当の人間の様であるが、よくよく見れば5つ位の動作をランダムに繰り返しているだけだと分かる。
モッチーナが数合わせの為に生み出したCPUと見て間違いないだろう。
【コード・ジーク ステータス】
レベル:1
ジョブ:ナイト
クラススキル:ソードプレッシャー
ジョブスキル:アイアンハート
装備:ブルーファング
アイテム:グリーンポーション
空中で指を高速スライドさせるというアクションを起こすと、自らのステータスがその指を追う様に表示された。この手のフルダイブ系ゲームでは良くあるシステムである。
見てみると、今はまだ意味が分からない表示が多数散見された。本来であればこのクラススキルやジョブスキル、装備やアイテム等も自分で幾つかの選択肢から選べるらしい。
しかし現在はこのナイトジョブの最もスタンダードな設定に自動登録されている。
恐らくもう直にマッチが始まる。しかし頭蓋骨の中は今でもまだクエスチョンマークで埋め尽くされたままであった。
だかそのクエスチョンマークが、突如降ってきた声によって幾つか消滅する。
『ここはスタート地点。バンクエットオブレジェンズの試合は全て此処から始まり、此処を守りながら戦っていくんだ』
頭上から声がする。そしてその方向へと視線を送るとニコニコ笑顔のモッチーナが浮いていて、短い腕を動かしジークの背後を指さしている様であった。
彼の後ろにある物、何やら唯のオブジェクトとは思えぬ巨大で精巧な造りをした樹木を見ろと言っているのであろうか。
ジークは素直にその意思を汲み、背後の樹木へと身体を向ける。
『この巨大な植物の名前は世界樹ユグドラシル。これと同じ見た目の植物がステージ上にはあともう一つ敵チーム側にも存在していて、それを破壊する事がこのゲームで一番スタンダードな勝利条件だよッ。まあサッカーとかバスケットボールで言う所のゴールだと思ってくれれば良いね』
「ふ~ん、じゃあオレは敵のユグドラシルに突っ込んで破壊すれば良いんだな?」
『まあ、最終の目的はそう捉えてくれて良いんだけど……でもその目的を果たす為には幾つかステップを踏まないといけないんだ。ッて、あ!! ジーク君、空を見てみて! もう直ぐゲートが開くよッ』
質問に対する回答を真っ直ぐに目を見て行ってくれていたモッチーナの視線が、突然上を向いた。そしてその行動を追ってフートも上を向くと、美しい青空の中に巨大な数字が浮かんでいたのである。
空に浮ぶ数字は10、9、8.7…と刻一刻減少していっていた。
『空に浮かんだ数字は試合開始までのカウントダウン。あの数字が0に成った瞬間、前を塞いでいるオーラの壁が消えステージへの道が開けるんだ。さあ準備してジーク君!! 勝負は1分1秒を争うんだ、解説は足を動かしながら行うよ。お祭りのッ始まりだー!!』
もちもちの身体を膨らまし、顔を真っ赤にして湯気を上げ興奮するモッチーナの声にジークも己の心拍数が共鳴していくのを感じた。
その内に聞こえるドクンッドクンッという音に今は一旦身を任せ、疑問を呑み込み重心と目線を前に向けた。
そしてその熱に浮かされた瞳の中で、空に浮かぶ数字は一歩また一歩とゼロへと進んでいく。
5……4……3……2……1…………0
ッドオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ン”!!!
空に映し出された数字のカウントダウンがゼロに成った瞬間、幾発もの花火が同時に打ち上げられ空間を轟音が揺らす。それはまるで開戦を知らせる銅鑼の音が如くであった。
そしてその音を合図に、周囲のCPU達が一斉に駆け出していく。
『ゲーーームッスタァァト!! さあ走るよジーク君! 早速ジャングルに飛び込んでモンスターを狩りまくろう!! 経験値が君を待っているよッ』
「……じゃッ、ジャングル? それにモンスターを狩りまくるって?」
前方を塞いでいた赤色のオーラが消え、開かれたステージへの道に飛び込んでいくCPUに釣られて走り出したジークは足を止めぬまま訪ねた。
モッチーナは依然興奮収まらなぬといった様子で解答を寄こす。
『さっき言ってた目的を果たす為必要なステップだよ。このゲームのジャンルはマルチプレイオンラインバトルアリーナ、試合の中でモンスターを倒してレベリングをし自分のステータスを強化していくんだ。特にウォーリアクラスのジョブは低レベル時のステータスが弱く設定されているから、序盤は経験値稼ぎに専念しなくちゃ成らない。今のジーク君のレベルは1。とりあえずこれが6に到達するまではジャングルでモンスターを狩った方が良いよ!』
「そのジャングルっていうのは?」
『そうだな。じゃあジーク君、首を動かさないで視線を右端へ動かせる?」
モッチーナからそう指示を受けたジークはもう迷わず視線を右端へ寄せる。するとそのアクションをプログラムが読み取り、フィールドのマップが視界の内部へと表示される。
『このゲームのフィールドは主に2つに分けられていて、マップ上に白と緑の2色で表されてるよ。白色の所はロードと呼ばれる舗装された道で、余りモンスターがスポーンしないからスムーズに移動する事が出来る。一方緑色で塗られている部分がさっき言っていたジャングル。ジャングルは足場が悪く移動経路としては不便だけど、その代わり沢山のモンスターがスポーンするから経験値稼ぎの場として効率が良いんだ」
「なるほど、だからオレにジャングルへ入る事を勧めたのか」
『そういう事! マップに表示されている青色の点はモンスターなんだけど、一目瞭然でロードよりジャングルの方が多いって分かるでしょ。さあジーク君、早速モンスターに攻撃してどんどん経験値を稼いじゃおうッ!!』
説明を受け自らが今やるべき役割を認識したジークは、白色で表示されたロードから外れモンスター蠢く緑色のジャングルへと入っていく。そして一番近くに位置していた青色の点へと近づいていった。
ザザッ…………ボインッボインッ
(なんだ、スライムか?)
点に近づいていくと、その青色で表示されていた反応の正体と思しきゼリー状のモンスターが草むらの中より跳ね出てきた。
そしてその敵影を視界の内へと捉えた刹那、何百何千時間ヘルズクライシスの中で繰り返し染み込ませた動きを身体がなぞる。
ジークはその身に纏った速度を僅かすら落とさぬまま柄へと手を掛け、腰の剣を通り過ぎざまモンスターの身体へと抜き払った。
ズッザァン……………………パァンッ!!
薙ぎ払いの斬撃を叩き込まれたスライムの体が、刃の空を切る音が過ぎ去った次の一瞬に爆ぜた。そしてその全てがキラキラと輝く光の粒となってジークの身体へと吸い込まれていく。
【コード・ジーク 120ex獲得】
【レベルアップ レベル2へ到達しました】
光粒が身体へと吸い込まれた直後、視界の中に経験値を獲得したという通知とレベルが上がった事を知らせる通知が割り込んで来る。
更にその通知を皮切りとして、身体の纏う速度が一段上がる感覚があった。
『グリーンスライムを倒したんだね! 流石ゲーム慣れしてるだけあって惚れ惚れする斬撃だッ。今のでレベルが上がったから、ステータスが全体的に上昇したのを感じられたかな?』
「ああ、確かに感じた。レベルアップって言うのはステータスが上がるだけなのか?」
『序盤のレベルアップではそうだね。でもナイトの場合6レベルに到達すれば使い切りのスキルであるブーストが使用可能に成ったり、8レベルで敵陣地をデバフ無しで移動出来る特殊なシールドが付いたりと後半に行けば色々なボーナスが貰えるんだッ』
(成程……じゃあ中途半端なレベルで行動するメリットは余りないな。多分5レベと6レベじゃ数字の差だけに換算出来ない隔たりがある。一刻も早くレベル6を目指すべきか)
ブーストという物が一体何かは未だ分からないが、恐らく他のゲームでいうウルトや必殺技に当たる物なのだろう。
であればそれを持ち得ぬ状態で敵プレイヤーにぶつかるのは大きなリスクと成る。
やはりモッチーナの言う通り先ずはレベル6に上がる事を最優先で考えるべき。そうこの一連の流れで確信したジークは、更なる獲物を求めジャングルを進む足を早めた。
そしてその後20分に渡り、ジークはレベル6を目指す狩りを行ったのである。
「へぇ、そんな便利機能まで有るんだな…ならそれで頼む」
『了解ッ!! それじゃあ好きなクラスの彫刻をタッチしたら試合開始だよ。試合中も質問したりアドバイスを受けたり出来るから、一緒に頑張ろうね!』
一から十までプレイヤーのニーズを想定し尽くしているバンクエットオブレジェンズの作り込み具合にジークは舌を巻いた。まさかCPU戦やスキル・アイテムの自動登録機能まで搭載とは。
だがしかし重要なのはあくまでメインコンテンツ、ゲームが面白いのかが重要なのだ。
そう飽きもせず同じ言葉を脳内で繰り返し彼は彫刻へと近づいていく。
(確かナイトが一番人気だって言ってたな)
モッチーナが先ほど言っていた事を思い出したジークはナイトの彫刻へと手を伸ばす。
一番人気という事は、少なくとも初心者お断りな性能では無いはずだ。それに話を聞く限りウォーリアクラスは他クラスに比べ役割がはっきりしている様である。
一先ず今はこれを選んで間違いは無いだろう。
そう考えたジークの手が触れた途端、まるで彫刻の中へと吸い込まれるかの如く視界がグニャリと歪む。そして彼の体は戦場へと送り込まれたのであった。
ヒュオンッ
送られた先は背後に見上げる程の大樹が聳え、前方の一ヶ所を除き周囲をぐるりと剣が如く突き出た岩石が囲む場所。
だがその一ヶ所も、赤色のオーラの様な物に遮られ今は先へ進むことが出来ない。
そしてジークの近くには3体の人影。
それらプレイヤーの姿をした者達は準備体操の様に腕伸ばしや屈伸を行っていて一見本当の人間の様であるが、よくよく見れば5つ位の動作をランダムに繰り返しているだけだと分かる。
モッチーナが数合わせの為に生み出したCPUと見て間違いないだろう。
【コード・ジーク ステータス】
レベル:1
ジョブ:ナイト
クラススキル:ソードプレッシャー
ジョブスキル:アイアンハート
装備:ブルーファング
アイテム:グリーンポーション
空中で指を高速スライドさせるというアクションを起こすと、自らのステータスがその指を追う様に表示された。この手のフルダイブ系ゲームでは良くあるシステムである。
見てみると、今はまだ意味が分からない表示が多数散見された。本来であればこのクラススキルやジョブスキル、装備やアイテム等も自分で幾つかの選択肢から選べるらしい。
しかし現在はこのナイトジョブの最もスタンダードな設定に自動登録されている。
恐らくもう直にマッチが始まる。しかし頭蓋骨の中は今でもまだクエスチョンマークで埋め尽くされたままであった。
だかそのクエスチョンマークが、突如降ってきた声によって幾つか消滅する。
『ここはスタート地点。バンクエットオブレジェンズの試合は全て此処から始まり、此処を守りながら戦っていくんだ』
頭上から声がする。そしてその方向へと視線を送るとニコニコ笑顔のモッチーナが浮いていて、短い腕を動かしジークの背後を指さしている様であった。
彼の後ろにある物、何やら唯のオブジェクトとは思えぬ巨大で精巧な造りをした樹木を見ろと言っているのであろうか。
ジークは素直にその意思を汲み、背後の樹木へと身体を向ける。
『この巨大な植物の名前は世界樹ユグドラシル。これと同じ見た目の植物がステージ上にはあともう一つ敵チーム側にも存在していて、それを破壊する事がこのゲームで一番スタンダードな勝利条件だよッ。まあサッカーとかバスケットボールで言う所のゴールだと思ってくれれば良いね』
「ふ~ん、じゃあオレは敵のユグドラシルに突っ込んで破壊すれば良いんだな?」
『まあ、最終の目的はそう捉えてくれて良いんだけど……でもその目的を果たす為には幾つかステップを踏まないといけないんだ。ッて、あ!! ジーク君、空を見てみて! もう直ぐゲートが開くよッ』
質問に対する回答を真っ直ぐに目を見て行ってくれていたモッチーナの視線が、突然上を向いた。そしてその行動を追ってフートも上を向くと、美しい青空の中に巨大な数字が浮かんでいたのである。
空に浮ぶ数字は10、9、8.7…と刻一刻減少していっていた。
『空に浮かんだ数字は試合開始までのカウントダウン。あの数字が0に成った瞬間、前を塞いでいるオーラの壁が消えステージへの道が開けるんだ。さあ準備してジーク君!! 勝負は1分1秒を争うんだ、解説は足を動かしながら行うよ。お祭りのッ始まりだー!!』
もちもちの身体を膨らまし、顔を真っ赤にして湯気を上げ興奮するモッチーナの声にジークも己の心拍数が共鳴していくのを感じた。
その内に聞こえるドクンッドクンッという音に今は一旦身を任せ、疑問を呑み込み重心と目線を前に向けた。
そしてその熱に浮かされた瞳の中で、空に浮かぶ数字は一歩また一歩とゼロへと進んでいく。
5……4……3……2……1…………0
ッドオ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ン”!!!
空に映し出された数字のカウントダウンがゼロに成った瞬間、幾発もの花火が同時に打ち上げられ空間を轟音が揺らす。それはまるで開戦を知らせる銅鑼の音が如くであった。
そしてその音を合図に、周囲のCPU達が一斉に駆け出していく。
『ゲーーームッスタァァト!! さあ走るよジーク君! 早速ジャングルに飛び込んでモンスターを狩りまくろう!! 経験値が君を待っているよッ』
「……じゃッ、ジャングル? それにモンスターを狩りまくるって?」
前方を塞いでいた赤色のオーラが消え、開かれたステージへの道に飛び込んでいくCPUに釣られて走り出したジークは足を止めぬまま訪ねた。
モッチーナは依然興奮収まらなぬといった様子で解答を寄こす。
『さっき言ってた目的を果たす為必要なステップだよ。このゲームのジャンルはマルチプレイオンラインバトルアリーナ、試合の中でモンスターを倒してレベリングをし自分のステータスを強化していくんだ。特にウォーリアクラスのジョブは低レベル時のステータスが弱く設定されているから、序盤は経験値稼ぎに専念しなくちゃ成らない。今のジーク君のレベルは1。とりあえずこれが6に到達するまではジャングルでモンスターを狩った方が良いよ!』
「そのジャングルっていうのは?」
『そうだな。じゃあジーク君、首を動かさないで視線を右端へ動かせる?」
モッチーナからそう指示を受けたジークはもう迷わず視線を右端へ寄せる。するとそのアクションをプログラムが読み取り、フィールドのマップが視界の内部へと表示される。
『このゲームのフィールドは主に2つに分けられていて、マップ上に白と緑の2色で表されてるよ。白色の所はロードと呼ばれる舗装された道で、余りモンスターがスポーンしないからスムーズに移動する事が出来る。一方緑色で塗られている部分がさっき言っていたジャングル。ジャングルは足場が悪く移動経路としては不便だけど、その代わり沢山のモンスターがスポーンするから経験値稼ぎの場として効率が良いんだ」
「なるほど、だからオレにジャングルへ入る事を勧めたのか」
『そういう事! マップに表示されている青色の点はモンスターなんだけど、一目瞭然でロードよりジャングルの方が多いって分かるでしょ。さあジーク君、早速モンスターに攻撃してどんどん経験値を稼いじゃおうッ!!』
説明を受け自らが今やるべき役割を認識したジークは、白色で表示されたロードから外れモンスター蠢く緑色のジャングルへと入っていく。そして一番近くに位置していた青色の点へと近づいていった。
ザザッ…………ボインッボインッ
(なんだ、スライムか?)
点に近づいていくと、その青色で表示されていた反応の正体と思しきゼリー状のモンスターが草むらの中より跳ね出てきた。
そしてその敵影を視界の内へと捉えた刹那、何百何千時間ヘルズクライシスの中で繰り返し染み込ませた動きを身体がなぞる。
ジークはその身に纏った速度を僅かすら落とさぬまま柄へと手を掛け、腰の剣を通り過ぎざまモンスターの身体へと抜き払った。
ズッザァン……………………パァンッ!!
薙ぎ払いの斬撃を叩き込まれたスライムの体が、刃の空を切る音が過ぎ去った次の一瞬に爆ぜた。そしてその全てがキラキラと輝く光の粒となってジークの身体へと吸い込まれていく。
【コード・ジーク 120ex獲得】
【レベルアップ レベル2へ到達しました】
光粒が身体へと吸い込まれた直後、視界の中に経験値を獲得したという通知とレベルが上がった事を知らせる通知が割り込んで来る。
更にその通知を皮切りとして、身体の纏う速度が一段上がる感覚があった。
『グリーンスライムを倒したんだね! 流石ゲーム慣れしてるだけあって惚れ惚れする斬撃だッ。今のでレベルが上がったから、ステータスが全体的に上昇したのを感じられたかな?』
「ああ、確かに感じた。レベルアップって言うのはステータスが上がるだけなのか?」
『序盤のレベルアップではそうだね。でもナイトの場合6レベルに到達すれば使い切りのスキルであるブーストが使用可能に成ったり、8レベルで敵陣地をデバフ無しで移動出来る特殊なシールドが付いたりと後半に行けば色々なボーナスが貰えるんだッ』
(成程……じゃあ中途半端なレベルで行動するメリットは余りないな。多分5レベと6レベじゃ数字の差だけに換算出来ない隔たりがある。一刻も早くレベル6を目指すべきか)
ブーストという物が一体何かは未だ分からないが、恐らく他のゲームでいうウルトや必殺技に当たる物なのだろう。
であればそれを持ち得ぬ状態で敵プレイヤーにぶつかるのは大きなリスクと成る。
やはりモッチーナの言う通り先ずはレベル6に上がる事を最優先で考えるべき。そうこの一連の流れで確信したジークは、更なる獲物を求めジャングルを進む足を早めた。
そしてその後20分に渡り、ジークはレベル6を目指す狩りを行ったのである。
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