婚約破棄上等!私を愛さないあなたなんて要りません

音無砂月

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第Ⅱ章 sideマリアナ

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王妃教育をさぼってしまった。ミリー様もシーラ様もそんな私に良い顔をしなかった。当然だ。授業をさぼるなんてしてはいけないことだ。
でも、王妃様のあまりにも理不尽な扱いに耐えられなかったのだ。それに、折角王宮にいるのになぜかカール様に会えない。
食事の席にすらカール様は現れない。
「ねぇ、ミリー様。カール様に会えないかしら」
「申し訳ありません。カール様は執務が立て込んでおりまして」
またこれだ。私が会いたいと言えば決まって執務。
私は王妃教育があるので学園は休学扱いになっている。でも、こうも執務で忙しいということはカール様も学園を休学しているのだろうか?
どうしてだろう。婚約する前よりもカール様が遠い。
「少しで良いの。カール様に会いたいわ」
「申し訳ありません」
ミリー様はそう言って頭を下げる。
マリオネットのように決められたセリフしか言わないミリー様に若干、苛立ちを覚える。でも、人にそれをぶつけるのはただの八つ当たりだ。よくないことだと私は怒りを何とか飲み込んで、その隣にいるシーラ様に視線を向ける。
「シーラ様、お願い。遠くから一目見るだけでもいいの」
「婚約者様にお会いしたい気持ちは分かりますが、今は大事な時です。お控え下さい」
抑揚のないシーラ様の声はともすれば冷たく聞こえる。彼女にそんな気はないのだろうから、そんなふうに感じる私が悪いのだろう。
「ガナッシュっ様、どうしてもダメですか?」
自分よりも背の高いガナッシュ様を見上げて言う。ガナッシュ様は困った顔で微笑み「申し訳ありません」と一礼する。
まるで私がカール様に会うのをみんなで邪魔しているみたい。ここに私の味方はいないんだわ。早々にお姉様には王宮に来てもらえないかしら。
王妃様はお姉様に王妃教育を手伝わせるのはダメだと言っていたけど、会ってはダメとは言っていなかったし。
手紙は既に届いているはずだろうから、きっと今週中にはお返事が来るわね。

◇◇◇

二週間経った。
おかしい。お姉様からお返事が来ない。もしかして、届いていないのかしら。
「ミリー様、レターセットを持ってきてください」
「畏まりました」
私は再びお姉様に手紙を書いた。今回はできるだけ早く返事が欲しい旨も書いた。
「今週中にはくれるかしら」
そう思って手紙を出したけど、お姉様からのお返事は来ない。
おかしい。まめな方ではないとしてもお返事ぐらいはするだろう。普通。
「お姉様、お忙しいのかしら」
カール様にも会えない。お姉様にも家族にも会えない。王妃教育は頑張って入るけど結果は芳しくはない。ミリー様もシーラ様もどこか冷たい感じがする。
心の中に薄汚い澱が溜まって、私を蝕んでいく。夜は課題を終えて、可能な限り早めに就寝するようにしはしているけど、どんなに寝てもなぜか疲れが取れない。
最近、ため息をつく回数が増えた。お姉様も私と話している時にため息をよくついていたから、きっと王妃教育で苦労していたのね。今の私みたいに。それなのに、私ったら気づかずにお姉様にしょっちゅう会いに行ったりして。お姉様に知らずに迷惑をかけていたのね。
もう少し、お姉様も気遣えばよかった。
でも、そんなことをおくびにも出さずに接してくれていたお姉様はやはり優しい方だわ。
そんなお姉様だから、きっとお手紙をくれないのも何かしらの理由があるのよね。
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