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本章
14.紛い物の王女
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「ようこそ、いらっしゃいました。王女殿下」
騎士とアリソンが何度も衝突しながら、それでも何とか大きな揉め事に発展することなく到着した。
ここが、私が嫁いだ国、ルビンスティン。
アリソンがカーテンを開けることを許さなかったので王宮の外がどのようになっているか分からなかった。
分かる必要はないのかもしれない。
だって、私がここから外に出ることはないのだから。アルトゥールにいた時と同じだ。
馬車の前にはモノクルをかけた老人がいて、私たちを出迎えてくれた。
「執事を務めております、ルルーシュ・ペルジーノと申します」
「出迎え、ありがとうございます。ラティーシャ・アルトゥールです。今日から、よろしくお願いします」
「これは、ご丁寧に。さぁ、お疲れでしょう。お部屋の準備が整っております」
ルルーシュの指示を受けたメイドの一人が私とアリソンを部屋に案内してくれた。
自国で使っていた部屋が三つほど入るのではないかというぐらい大きな部屋で、置かれている家具もかなりの値打ちだと素人目にも分かるほどだった。
「お好みが分からず、急ぎ誂えた物なので好みに合わせて好きに変えてくれと殿下から言遣っております」
「このような素敵な部屋をありがとうございます」
私とアリソンが休めるようにメイドたちは下がった。
「殿下、あのような下々に気安く言葉をかけてはなりません。下々の者はすぐに調子に乗ります。会話は全て、私に任せてください。高貴な者の言葉は下々には毒になることもありますから。よろしいですね」
「・・・・・・はい」
高貴?Ωの私が?
穢らわしい存在なのに、どうしうてそんな私を”高貴”だとアリソンは言い張るのだろう。
「この部屋も変えてもらわなければなりませんね。王女殿下には似つかわしくもない、安物ばかり」
「こんなに素敵なのに」
「姫様、見た目に騙されてはなりませんわ。この部屋にある物全て、姫様には似つかわしくありません。私が姫様に合うものを全て揃えて差し上げます」
どんなに良いものを揃えても私には似合わないだろう。揃えれば、揃えるほど歪で滑稽になるのではないだろうか。
だって、私は紛い物だから。どんなに取り繕ってもその事実が変わることはない。
だから余計、滑稽に映る。でも、アリソンにはそれが分からないのだ。βのアリソンには分からない。
アリソンは張り切って部屋にどのような物を置くか考え始めた。私はそれを横目で見ながら荷解きをする。
†††
side.イクシオン
「くそっ、何だって今日に限ってこんなに大量に仕事が回ってくるんだ」
「殿下、口ではなく手を動かしてください」」
「動かしてるだろうが」
「その割には一向に書類が減っていないように見えますが」
そう言って俺の机の上に置いてある資料に目をむけるこの男はギベルティ・エミール
俺の乳兄弟で側近だ。
「減るわけないだろっ!減った先からお前が新しい書類を置いているんだから」
俺はイクシオン・ルビンスティン
ルビンスティン王国の王太子だ。そして、今日は我が国に俺の婚約者が嫁いで来る日だった。にも、関わらず執務室で缶詰だ。
「失礼します、殿下」
「ルルーシュか、どうした?」
「ご婚約者様が到着されました」
「・・・・・そうか」
出迎えにも行けなかったな。
結婚式前までに挨拶に行けると良いのだが、机の書類を見るに厳しそうだ。
「どのような人だった?」
流れてくる噂はあまり良いものではなかった。アルトゥールからはさっさと追い出したいという意思が伝わって来たし、どのような扱いになろうとも関与しないという条件付きで嫁ぐことからも期待はしない方がいいだろう。
正直、たくさん来る縁談話も手段を選ばず、互いを蹴落とし合って俺の寵を競う令嬢にも嫌気がさしていた。
今回来た縁談の相手は隣国の王女で、αだという。友好関係を築き続ける上でも、αだということも都合がいい。
だから受けた。冷遇するつもりはないが、好きにしろ、干渉はしないというのは余計に都合が良かった。
もし、噂通りの人で問題があっても構わない。問題を起こした場合は表に出さなければいい。必要なのは後継であって妻ではない。王子妃の代わりに執務をしてくれる人間を雇えば、執務に関しては問題ないし、子供は信頼できる人間に後ろ盾になってもらえればそれでいい。
「そうですね、かなり大人しい方のようにお見受けしました」
勝手に作られた噂か、あるいは猫を被っているだけか。今の段階では何とも言えないな。
やはり自分の目で見て、確かめるのが一番だろう。
と、思っていたのに結局、次から次へと問題が起こり結婚式の日まで会えず仕舞いだった。
神様は俺に恨みでもあるのか。これは、あれか?結婚するなという暗示か。
「殿下、このよき日に辛気臭い顔してため息なんかつかないでくさい。相手に失礼です。たとえ、問題ありの望まぬ王女であってもあなたが迎えると決め、結果我が国に来てくださったのですから」
勘違いをしたギベルティに小言を言われてしまった。結婚式の日まで小言か。
いや、今のは勘違いをさせるような言動をした俺が悪いな。
「まもなく、王女殿下が入場されます。気を引き締めてくださいね」
「分かってる・・・・・・っ」
縁談話が持ち上がった時、肖像画で確認はしていた。
隣国の王族どうしにも関わらず、なぜか王女殿下とお会いしたことがなかった。
聞けば、滅多に人前に出ないという。
余程、大事に育てられているのだろう。王族の女性であれば珍しいことではない。
「・・・・美しいな」
肖像画の何倍も美しい。まるで女神のような神々しさがある。
思わず見惚れてしまった。
誤魔化すように咳払いをして、王女が自分の元へ来るのを待った。
式はつつがなく進行した。披露宴も問題なく終えた。
緊張からか、王女は何も口にはしなかったが。
食事に手をつけるよう促してようやく二、三口食べた程度だ。
もしかして、我が国の食事が口に合わないのだろうか?
そう思ったから侍女に頼んで用意してもらった果物を持って妻の待つ部屋へ向かった。
すると、その途中で王女の世話係として一緒に着いてきた女、確かアリソンとか言ったか?が、待ち構えていた。
「姫様は既にお休みになられております」
「は?」
「申し訳ありませんが、暫くは控えていただけませんでしょうか?環境にもまだ慣れず、だいぶ疲れも溜まっているようなので」
「・・・・・そう、か。それは配慮が足りず、すまない。これは王女殿下に差し上げてくれ。その、披露宴ではあまり食事をしておられたなかったので」
「まぁ、なんとお優しい。きっと、姫様も喜びますわ」
「ああ、そうだといいのだが。それでは、これで失礼する」
いずれは後継が必要になるが、別に今すぐというわけではない。
彼女のいう通り、慣れない環境に、挙式では確かに休息が必要だろう。
男として少し残念ではあるが、致し方ない。
妻を気遣うのも良き夫の務めだ。
・・・・・・残念ではあるが。
騎士とアリソンが何度も衝突しながら、それでも何とか大きな揉め事に発展することなく到着した。
ここが、私が嫁いだ国、ルビンスティン。
アリソンがカーテンを開けることを許さなかったので王宮の外がどのようになっているか分からなかった。
分かる必要はないのかもしれない。
だって、私がここから外に出ることはないのだから。アルトゥールにいた時と同じだ。
馬車の前にはモノクルをかけた老人がいて、私たちを出迎えてくれた。
「執事を務めております、ルルーシュ・ペルジーノと申します」
「出迎え、ありがとうございます。ラティーシャ・アルトゥールです。今日から、よろしくお願いします」
「これは、ご丁寧に。さぁ、お疲れでしょう。お部屋の準備が整っております」
ルルーシュの指示を受けたメイドの一人が私とアリソンを部屋に案内してくれた。
自国で使っていた部屋が三つほど入るのではないかというぐらい大きな部屋で、置かれている家具もかなりの値打ちだと素人目にも分かるほどだった。
「お好みが分からず、急ぎ誂えた物なので好みに合わせて好きに変えてくれと殿下から言遣っております」
「このような素敵な部屋をありがとうございます」
私とアリソンが休めるようにメイドたちは下がった。
「殿下、あのような下々に気安く言葉をかけてはなりません。下々の者はすぐに調子に乗ります。会話は全て、私に任せてください。高貴な者の言葉は下々には毒になることもありますから。よろしいですね」
「・・・・・・はい」
高貴?Ωの私が?
穢らわしい存在なのに、どうしうてそんな私を”高貴”だとアリソンは言い張るのだろう。
「この部屋も変えてもらわなければなりませんね。王女殿下には似つかわしくもない、安物ばかり」
「こんなに素敵なのに」
「姫様、見た目に騙されてはなりませんわ。この部屋にある物全て、姫様には似つかわしくありません。私が姫様に合うものを全て揃えて差し上げます」
どんなに良いものを揃えても私には似合わないだろう。揃えれば、揃えるほど歪で滑稽になるのではないだろうか。
だって、私は紛い物だから。どんなに取り繕ってもその事実が変わることはない。
だから余計、滑稽に映る。でも、アリソンにはそれが分からないのだ。βのアリソンには分からない。
アリソンは張り切って部屋にどのような物を置くか考え始めた。私はそれを横目で見ながら荷解きをする。
†††
side.イクシオン
「くそっ、何だって今日に限ってこんなに大量に仕事が回ってくるんだ」
「殿下、口ではなく手を動かしてください」」
「動かしてるだろうが」
「その割には一向に書類が減っていないように見えますが」
そう言って俺の机の上に置いてある資料に目をむけるこの男はギベルティ・エミール
俺の乳兄弟で側近だ。
「減るわけないだろっ!減った先からお前が新しい書類を置いているんだから」
俺はイクシオン・ルビンスティン
ルビンスティン王国の王太子だ。そして、今日は我が国に俺の婚約者が嫁いで来る日だった。にも、関わらず執務室で缶詰だ。
「失礼します、殿下」
「ルルーシュか、どうした?」
「ご婚約者様が到着されました」
「・・・・・そうか」
出迎えにも行けなかったな。
結婚式前までに挨拶に行けると良いのだが、机の書類を見るに厳しそうだ。
「どのような人だった?」
流れてくる噂はあまり良いものではなかった。アルトゥールからはさっさと追い出したいという意思が伝わって来たし、どのような扱いになろうとも関与しないという条件付きで嫁ぐことからも期待はしない方がいいだろう。
正直、たくさん来る縁談話も手段を選ばず、互いを蹴落とし合って俺の寵を競う令嬢にも嫌気がさしていた。
今回来た縁談の相手は隣国の王女で、αだという。友好関係を築き続ける上でも、αだということも都合がいい。
だから受けた。冷遇するつもりはないが、好きにしろ、干渉はしないというのは余計に都合が良かった。
もし、噂通りの人で問題があっても構わない。問題を起こした場合は表に出さなければいい。必要なのは後継であって妻ではない。王子妃の代わりに執務をしてくれる人間を雇えば、執務に関しては問題ないし、子供は信頼できる人間に後ろ盾になってもらえればそれでいい。
「そうですね、かなり大人しい方のようにお見受けしました」
勝手に作られた噂か、あるいは猫を被っているだけか。今の段階では何とも言えないな。
やはり自分の目で見て、確かめるのが一番だろう。
と、思っていたのに結局、次から次へと問題が起こり結婚式の日まで会えず仕舞いだった。
神様は俺に恨みでもあるのか。これは、あれか?結婚するなという暗示か。
「殿下、このよき日に辛気臭い顔してため息なんかつかないでくさい。相手に失礼です。たとえ、問題ありの望まぬ王女であってもあなたが迎えると決め、結果我が国に来てくださったのですから」
勘違いをしたギベルティに小言を言われてしまった。結婚式の日まで小言か。
いや、今のは勘違いをさせるような言動をした俺が悪いな。
「まもなく、王女殿下が入場されます。気を引き締めてくださいね」
「分かってる・・・・・・っ」
縁談話が持ち上がった時、肖像画で確認はしていた。
隣国の王族どうしにも関わらず、なぜか王女殿下とお会いしたことがなかった。
聞けば、滅多に人前に出ないという。
余程、大事に育てられているのだろう。王族の女性であれば珍しいことではない。
「・・・・美しいな」
肖像画の何倍も美しい。まるで女神のような神々しさがある。
思わず見惚れてしまった。
誤魔化すように咳払いをして、王女が自分の元へ来るのを待った。
式はつつがなく進行した。披露宴も問題なく終えた。
緊張からか、王女は何も口にはしなかったが。
食事に手をつけるよう促してようやく二、三口食べた程度だ。
もしかして、我が国の食事が口に合わないのだろうか?
そう思ったから侍女に頼んで用意してもらった果物を持って妻の待つ部屋へ向かった。
すると、その途中で王女の世話係として一緒に着いてきた女、確かアリソンとか言ったか?が、待ち構えていた。
「姫様は既にお休みになられております」
「は?」
「申し訳ありませんが、暫くは控えていただけませんでしょうか?環境にもまだ慣れず、だいぶ疲れも溜まっているようなので」
「・・・・・そう、か。それは配慮が足りず、すまない。これは王女殿下に差し上げてくれ。その、披露宴ではあまり食事をしておられたなかったので」
「まぁ、なんとお優しい。きっと、姫様も喜びますわ」
「ああ、そうだといいのだが。それでは、これで失礼する」
いずれは後継が必要になるが、別に今すぐというわけではない。
彼女のいう通り、慣れない環境に、挙式では確かに休息が必要だろう。
男として少し残念ではあるが、致し方ない。
妻を気遣うのも良き夫の務めだ。
・・・・・・残念ではあるが。
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