10 / 31
10
しおりを挟む
夜会の前日、数名の貴族が私を訪ねて来た。
その手にはドレスがあった。
「これを着て、陛下の隣に立ってください」
「建国祭にはあなた様の母国から第二王子と第二王子の婚約者が来ることになっています」
「我が国の現状を知られると戦争に勃発しかねません」
もう、手遅れだと思う。
他国の情勢を知る為に王族は様々な国に間者を入れたり、様々な手を使って調査をするものだ。
招かれて、正面から堂々と入れるこの機会を逃さずに、きっとリヴィお兄様は徹底的に調べ上げれるだろう。
人の口に戸は立てられない。それに、自分の知り合いを重宝して、仕事はできないけど権力者に甘い言葉を吐くことはできる馬鹿を好んで側近にしている陛下のことを不満に思っている貴族も居る。余計に口は軽くなるだろう。
「現状の打開策はないけれど、私にはこの国の為に体裁を整えろと?」
「あなたはこの国の王妃です」
その言葉に私は思わず笑ってしまった。
だってそうだろう。王妃の宮を追い出されて、こんなところに住んでているのに。護衛も侍女も居ない私を王妃と彼らは呼ぶのだから。
「陛下はシャルロッテを隣に立たせると言っていましたよ」
「陛下はこちらで説得します」
「お願いします。陛下一人の我儘の為にこの国の民を危険に晒すわけにはいかないのです」
彼らは深々と頭を下げる。
現状を変えることはできない。私の扱いは今までと変わらないけど、それでも耐えてこの国の為に動けと言う。
何と傲慢で身勝手な人達だろう。
「良いですね、あなた達は。何のリスクもなく、ただ『しろ』と言うだけですむんですから」
私は皮肉的な笑みを浮かべて、溜息を一つつくと彼らの手にあるドレスを受け取った。
彼らはとても嬉しそうな笑みを浮かべている。
この茶番に付き合うけれど、それが逆に兄達の怒りを買うことになるとはきっと思いもしないのだろう。
◇◇◇
建国祭、当日。
私の隣に立つ陛下は最初、着飾った(侍女はあの馬鹿貴族が用意してくれた)私を見て目を見開いた。
「少しは見れるようになるものだな」
そう皮肉ったあと続けて
「だが私に愛されているなどくれぐれも勘違いするなよ。今回の件は事情があって仕方がなくお前を使っているだけで、本来そこはシャルロッテの居場所なんだからな」
そう言って陛下は私を睨み付ける。
「左様でございますか。生憎ですがこの程度であなたに愛されていると思うほど愚かな頭は持ってはいません(愛されたくもないけど)。」
「ふん。口ではどうとでも言える。若い貴族を誑かして味方に引き込むなど王妃のやることとは思えないな」
それはシャルロッテの方だと思うけど。
明らかに陛下の側近達はシャルロッテに気があるみたいだし、それに肉体関係もあるという噂を王宮内でちらほら聞く。
知らぬは当人ばかり、か。
知らぬが仏なのか。
聞けば気の毒見れば目の毒なので知らない方が幸せなのかも知れない。
哀れで愚かな陛下はそうやって泥黎に突き進むのかと思うと愚の骨頂だと思う。
でも同情はしない。
身から出た錆びだ。
「行くぞ。今日はとくべつに愚かな貴様に夢でも見させてやる」
「はい、陛下。建国祭、楽しみましょう」
お互いに。
その手にはドレスがあった。
「これを着て、陛下の隣に立ってください」
「建国祭にはあなた様の母国から第二王子と第二王子の婚約者が来ることになっています」
「我が国の現状を知られると戦争に勃発しかねません」
もう、手遅れだと思う。
他国の情勢を知る為に王族は様々な国に間者を入れたり、様々な手を使って調査をするものだ。
招かれて、正面から堂々と入れるこの機会を逃さずに、きっとリヴィお兄様は徹底的に調べ上げれるだろう。
人の口に戸は立てられない。それに、自分の知り合いを重宝して、仕事はできないけど権力者に甘い言葉を吐くことはできる馬鹿を好んで側近にしている陛下のことを不満に思っている貴族も居る。余計に口は軽くなるだろう。
「現状の打開策はないけれど、私にはこの国の為に体裁を整えろと?」
「あなたはこの国の王妃です」
その言葉に私は思わず笑ってしまった。
だってそうだろう。王妃の宮を追い出されて、こんなところに住んでているのに。護衛も侍女も居ない私を王妃と彼らは呼ぶのだから。
「陛下はシャルロッテを隣に立たせると言っていましたよ」
「陛下はこちらで説得します」
「お願いします。陛下一人の我儘の為にこの国の民を危険に晒すわけにはいかないのです」
彼らは深々と頭を下げる。
現状を変えることはできない。私の扱いは今までと変わらないけど、それでも耐えてこの国の為に動けと言う。
何と傲慢で身勝手な人達だろう。
「良いですね、あなた達は。何のリスクもなく、ただ『しろ』と言うだけですむんですから」
私は皮肉的な笑みを浮かべて、溜息を一つつくと彼らの手にあるドレスを受け取った。
彼らはとても嬉しそうな笑みを浮かべている。
この茶番に付き合うけれど、それが逆に兄達の怒りを買うことになるとはきっと思いもしないのだろう。
◇◇◇
建国祭、当日。
私の隣に立つ陛下は最初、着飾った(侍女はあの馬鹿貴族が用意してくれた)私を見て目を見開いた。
「少しは見れるようになるものだな」
そう皮肉ったあと続けて
「だが私に愛されているなどくれぐれも勘違いするなよ。今回の件は事情があって仕方がなくお前を使っているだけで、本来そこはシャルロッテの居場所なんだからな」
そう言って陛下は私を睨み付ける。
「左様でございますか。生憎ですがこの程度であなたに愛されていると思うほど愚かな頭は持ってはいません(愛されたくもないけど)。」
「ふん。口ではどうとでも言える。若い貴族を誑かして味方に引き込むなど王妃のやることとは思えないな」
それはシャルロッテの方だと思うけど。
明らかに陛下の側近達はシャルロッテに気があるみたいだし、それに肉体関係もあるという噂を王宮内でちらほら聞く。
知らぬは当人ばかり、か。
知らぬが仏なのか。
聞けば気の毒見れば目の毒なので知らない方が幸せなのかも知れない。
哀れで愚かな陛下はそうやって泥黎に突き進むのかと思うと愚の骨頂だと思う。
でも同情はしない。
身から出た錆びだ。
「行くぞ。今日はとくべつに愚かな貴様に夢でも見させてやる」
「はい、陛下。建国祭、楽しみましょう」
お互いに。
61
あなたにおすすめの小説
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
【完結】祈りの果て、君を想う
とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。
騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。
そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、
ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。
愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。
沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。
運命ではなく、想いで人を愛するとき。
その愛は、誰のもとに届くのか──
※短編から長編に変更いたしました。
だってわたくし、悪女ですもの
さくたろう
恋愛
妹に毒を盛ったとして王子との婚約を破棄された令嬢メイベルは、あっさりとその罪を認め、罰として城を追放、おまけにこれ以上罪を犯さないように叔父の使用人である平民ウィリアムと結婚させられてしまった。
しかしメイベルは少しも落ち込んでいなかった。敵対視してくる妹も、婚約破棄後の傷心に言い寄ってくる男も華麗に躱しながら、のびやかに幸せを掴み取っていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
婚約破棄されたら、多方面から溺愛されていたことを知りました
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
卒業パーティーの当日、王太子に婚約破棄された公爵令嬢フルール。
それをあっさり受け入れた瞬間から、彼女のモテ期が始まった。
才色兼備で資産家の娘である彼女は、超優良物件にも拘らず、生まれた時から王太子の婚約者ということで今まで男性から敬遠されていたのだ。
思ってもみなかった人達にアプローチされて戸惑うフルールだが……。
※タイトル変更しました。
※カクヨムにも投稿しています。
断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド
「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」
人生をかけて尽くしてきた優しい継母。
彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。
継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。
メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。
牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。
「俺が力を貸してやろうか?」
男は魔法を使って時間を巻き戻した。
「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」
家族を洗脳して手駒にする貴族。
罪なき人々を殺める魔道士。
そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。
人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!
って、あれ?
友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。
悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら???
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〇約十一万文字になる予定です。
もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。
読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。
ある公爵令嬢の死に様
鈴木 桜
恋愛
彼女は生まれた時から死ぬことが決まっていた。
まもなく迎える18歳の誕生日、国を守るために神にささげられる生贄となる。
だが、彼女は言った。
「私は、死にたくないの。
──悪いけど、付き合ってもらうわよ」
かくして始まった、強引で無茶な逃亡劇。
生真面目な騎士と、死にたくない令嬢が、少しずつ心を通わせながら
自分たちの運命と世界の秘密に向き合っていく──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる