悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月

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 トワ様が持っていた魔石は映像を録画して、映し出すものだった。
 そして、魔石が映し出した者はまともな神経の者なら思わず目を瞑りたくなるような内容だった。
 現宰相のコブラ・カタブラ、現騎士団長のジョセフ・マダータ、現財務大臣のジム・マッケン、現宰相補佐のジョン・マレフィセント、現宰相補佐のエイベル・アッカーマン。
 シャルロッテは彼らすべてと肉体関係にあり、明らかにシャルロッテは彼らに媚びを売る様な仕草をしていた。
 「どういうことだ、これは」
 クレバー陛下は信じられないと目を見開き、その映像に釘付けになっていた。
 「ち、違う。こんなの違うわ!全部、そう、全部この女が仕組んだことで私は何も知らないわ」
 「では、彼女達の証言ではどうかな?」
 リヴィお兄様の声に応えるかのように数人の女性が前に出て来た。
 全員、コブラ、ジョセフ、ジム、ジョン、エイベルの婚約者たちだった。
 「私はシャルロッテから嫌がらせを受けましたわ。彼女は私に言いましたわ。『婚約者を寝取られる方が悪い』と。たかが庶民の分際で、彼女は私の婚約者を奪い、あまつさえ自分は次期王妃だから、逆らうのなら家ごと取り潰すなど妄言を吐いて私のドレスに笑いながら泥を投げつけてきました。まぁ、そんなに欲しいのならその木偶、喜んで差し上げますわ。そこまで必死にならないと男を見繕えないあなたと違って私には次の婚約者は決まっています。
 なのでコブラ、あなたとの婚約は破棄させて頂きます」
 「私もよ、ジョセフ。良かったわね。これでそこの尻軽女の尻を一生終えるわよ」
 「そこの女は私に、自分がどうやってジム、あなたに抱かれているかを事細かに教えてくれましたわ。全く、庶民の中でも下の下ね。夜の営みを恥ずかしげもなく、人のいるところで話すなんて。下品すぎますわ。そんなあなたには私のお下がりがお似合いですわ。ジョセフ、婚約は破棄よ。お父様の許可もあなたのお父様の許可も既に取れています。良かったわね。親公認よ」
 「ジム。あなたは彼女のことを素直で、心優しい人間だと言っていたけれど、彼女は私の妹を殴ったのよ。まだ六歳になったばかりの妹を。妹はね『私のお姉様を悲しませるお前は悪者だ』ってそこの女に抗議したの。そうしたらね、その女は私の妹を殴って転ばせた上にヒールで踏みつけたのよ。信じられないって顔をしているわね。目撃者も大勢いるから、確認してみなさい。婚約は破棄よ」
 「ジョン。私は淹れたての紅茶をその女に頭からかけられて、笑われたわ。『負け犬にはお似合いだ」 って言ってね。彼女は喜々としてあなたが自分の物になったことを教えてくれたわ。女の所有物に成り下がった男の嫁なんて真っ平。婚約は破棄よ」
 「素直で、心優しくて、どこまでも美しい人だとあなたは言っていたわね。見た目は確かに可愛い分類には入るわね。男を篭絡させる手練手管にも長けているみたいだし。でも、私や他の者の前では彼女は傲慢で嫌な女だった。彼女が心優しい、素直な女になる時はね、あなたのような高位貴族の前だけよ。そんなことも見抜けずに篭絡させられるなんて、情けない。婚約は破棄させて頂くわ。さようなら、エイベル」
 次々に婚約を破棄されていく側近達。それと同時に暴かれるシャルロッテの悪行。
 庶民が高位貴族にそんなことをしていたとまでは知らなかった国内外の貴族、特に六歳になったばかりの子供に暴力を振るったことに対して強く、周囲はシャルロッテに嫌悪を抱いた。
 「な、何よ、何でそんな目でみんな私を見るわけ?」
 周囲の自分を見る目が好意的でないことにシャルロッテはイラ立ち、顔を鬼のように歪めている。
 「シャ、シャルロッテ」
 始めて見るシャルロッテの醜く歪んだ顏に婚約破棄を言い渡されてもショックを見せる様子はなかった、寧ろこうなって良かったと思っていた側近達は戸惑いながら彼女を見つめた。
 「シャルロッテ、ここはあなたが来るべきところではないわ」
 私はわざと挑発するようにシャルロッテを見て、彼女に同情されているのだと印象付ける為にわざと優し気な声音を出した。
 もちろん、同情なんて微塵もしてない。ただ、彼女はプライドがかなり高いので私に同情されていると思ったら屈辱的だろうと思った。
 案の定、シャルロッテは私を睨みつけて来た。
 「貴族はね、常に優秀であることが求められるのよ。あなたにはそれができない。できないのであれば、来るべきではなかったわね」
 「はぁ!?クレバーにただの一度も抱かれたことのない処女がふざけたこと言ってんじゃないわよ!来るべきでないのはあんたの方でしょ!私は王妃の宮に、あんたは幽閉塔に住んでいるんだから!この場が分相応なのは私じゃなくて、あんたの方でしょ!」
 ほら。ちょっと挑発したら簡単に自滅した。
 おまけに私の身の潔白まで証明してくれている。これで私は国に戻っても傷物とは見られないだろう。それにこの様子を見ていれば陛下の方に非があると、私に同情してくれるだろう。
 それにより、私は社交界での地位を守ることに成功した。
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