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第1章
11.イベント情報
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〈イベント〉
☆アイル誘拐事件→時期不明(突発的に起こるイベント)
☆モンスター襲撃事件→秋に行われる狩猟祭
☆アイル転落事件→夏合宿で崖から落ちる
☆倒壊事故→秋の文化祭準備時に屋台が倒壊
「聞き出せたのはこれだけ。しかも詳しい内容をあの馬鹿女は覚えていない」
覚えているのはヒロインを助ける攻略対象者がいかに格好いいかってことと、どんな言葉をかけてくれるのかってことばかり。
当然だけど周囲の人も殆ど聞き流しているからあまり覚えていないようだ。
「というか、これ本当にリアルで起こるわけ?ちょっとあり得なくない」
まず、アイルの誘拐事件について。
そもそもアイルは基本王宮から出ない。
乙女ゲームの舞台になっている学園に通うことになって初めて彼女は王宮を出るのだ。
だけど王族や上級貴族が通う学園の警備は厳重だし、学園の中でも彼女には常に護衛が付きまとうのだ。どうやって誘拐するの?
似なような理由から崖の転落もあり得ない。そもそもが王族や貴族の子息令嬢連れて崖のある危険な場所に行くわけがない。
「あるとすればモンスター襲撃事件と倒壊事故かな?」
だけど、屋台はプロが作る。倒壊などするとは到底思えない。
「ミキちゃん、どこに行ってたの?」
「休憩に行っておりました」
私だって食事をする時間がぐらいは欲しい。
「私、ミキちゃんがいなくて寂しかったのよ」
ぷくぅっと頬を膨らませるアイル。全然、可愛くないから。
「まぁ、いいわ。あなたに紹介したい人がいるの。アシュベルよ。前言っていた攻略対象者の一人なの。今度から一緒にお勉強することになったの」
“攻略対象者”などと訳の分からないことを言われてアシュベルは戸惑っているようだ。それにしても、乙女ゲームが始まる前にアイルとアシュベルは知り合いだったのか。
「たまたま王宮内で見かけてね、どうせ私はエンディングまで知っているからこの際多少ズルしてもいいかなって思って」
つまり、本来はまだ出会う時期ではなかったということか。
「アシュベル、彼女はミキちゃん。私の大親友なの」
冗談でしょう。
大親友という言葉を辞書で調べてから人生をリセットして来い。
‥…なんて、言えるわけないからね。
私はにっこりと笑って淑女の礼を取る。
「レイファ・ミラノです。バルトロマイ伯爵令息」
この時のアシュベルに女性恐怖症はないからまだ彼はストーカー被害に合ってはいないのだろう。
「えっと、その髪の色は?」
そう言えば彼の前では金髪だったな。いつも私が染粉を洗い流す時にだけ現れるから。
「似合ってるでしょう。ミキちゃんには金よりも茶色が似合うから私がオススメしてあげたの」
頼んでないけどね。
アシュベルがもの言いたげに私を見る。
染粉を洗い流している現場に何度も遭遇している彼だから私が好き好んでこの色にしているわけではないと理解しているのだろう。それに暗い色は身分の低い人間に多い。
その色にしろと命じることは侮辱に等しいのだ。馬鹿なアイルがそんなことを知っているわけもないけど。
「あの、“ミキちゃん”というのは愛称ですか?」
私の名前にかすりもしていないから愛称と言っていいのか分からないけど他に何と言っていいか分からずアシュベルは結局“愛称”という言葉を使って“ミキ”の意味をアイルに問う。
が、問う相手が悪かった。
「ミキちゃんは、ミキちゃんよ」
「‥…そう、ですか?」
何の説明にも答えにもなっていない。
ちらりとアシュベルが私を見てきたけど私も説明のしようがないので苦笑で留めた。するとアシュベルもアイルが私を“ミキちゃん”と呼ぶ理由が分かっていないのだと勘違いしてくれたようでこの話題はここで終了だ。
「バルトロマイ伯爵令息はよく王宮内で見かけますが、何か御用がったのことではないのですか?」
「はい。父について仕事を見ています」
へぇ。こんな子供のうちから既に父親の仕事について学んでいるのか。さすがね。
「さすが、未来の宰相様ね」とアイルは嬉しそうに笑う。
彼女にとってここは乙女ゲームの世界。彼はそこの登場人物で、自分と同じ心臓が動いて、息をしている生き物だとは思えないのだろう。
だから彼女の褒め事にはどこか白々しさがある。
☆アイル誘拐事件→時期不明(突発的に起こるイベント)
☆モンスター襲撃事件→秋に行われる狩猟祭
☆アイル転落事件→夏合宿で崖から落ちる
☆倒壊事故→秋の文化祭準備時に屋台が倒壊
「聞き出せたのはこれだけ。しかも詳しい内容をあの馬鹿女は覚えていない」
覚えているのはヒロインを助ける攻略対象者がいかに格好いいかってことと、どんな言葉をかけてくれるのかってことばかり。
当然だけど周囲の人も殆ど聞き流しているからあまり覚えていないようだ。
「というか、これ本当にリアルで起こるわけ?ちょっとあり得なくない」
まず、アイルの誘拐事件について。
そもそもアイルは基本王宮から出ない。
乙女ゲームの舞台になっている学園に通うことになって初めて彼女は王宮を出るのだ。
だけど王族や上級貴族が通う学園の警備は厳重だし、学園の中でも彼女には常に護衛が付きまとうのだ。どうやって誘拐するの?
似なような理由から崖の転落もあり得ない。そもそもが王族や貴族の子息令嬢連れて崖のある危険な場所に行くわけがない。
「あるとすればモンスター襲撃事件と倒壊事故かな?」
だけど、屋台はプロが作る。倒壊などするとは到底思えない。
「ミキちゃん、どこに行ってたの?」
「休憩に行っておりました」
私だって食事をする時間がぐらいは欲しい。
「私、ミキちゃんがいなくて寂しかったのよ」
ぷくぅっと頬を膨らませるアイル。全然、可愛くないから。
「まぁ、いいわ。あなたに紹介したい人がいるの。アシュベルよ。前言っていた攻略対象者の一人なの。今度から一緒にお勉強することになったの」
“攻略対象者”などと訳の分からないことを言われてアシュベルは戸惑っているようだ。それにしても、乙女ゲームが始まる前にアイルとアシュベルは知り合いだったのか。
「たまたま王宮内で見かけてね、どうせ私はエンディングまで知っているからこの際多少ズルしてもいいかなって思って」
つまり、本来はまだ出会う時期ではなかったということか。
「アシュベル、彼女はミキちゃん。私の大親友なの」
冗談でしょう。
大親友という言葉を辞書で調べてから人生をリセットして来い。
‥…なんて、言えるわけないからね。
私はにっこりと笑って淑女の礼を取る。
「レイファ・ミラノです。バルトロマイ伯爵令息」
この時のアシュベルに女性恐怖症はないからまだ彼はストーカー被害に合ってはいないのだろう。
「えっと、その髪の色は?」
そう言えば彼の前では金髪だったな。いつも私が染粉を洗い流す時にだけ現れるから。
「似合ってるでしょう。ミキちゃんには金よりも茶色が似合うから私がオススメしてあげたの」
頼んでないけどね。
アシュベルがもの言いたげに私を見る。
染粉を洗い流している現場に何度も遭遇している彼だから私が好き好んでこの色にしているわけではないと理解しているのだろう。それに暗い色は身分の低い人間に多い。
その色にしろと命じることは侮辱に等しいのだ。馬鹿なアイルがそんなことを知っているわけもないけど。
「あの、“ミキちゃん”というのは愛称ですか?」
私の名前にかすりもしていないから愛称と言っていいのか分からないけど他に何と言っていいか分からずアシュベルは結局“愛称”という言葉を使って“ミキ”の意味をアイルに問う。
が、問う相手が悪かった。
「ミキちゃんは、ミキちゃんよ」
「‥…そう、ですか?」
何の説明にも答えにもなっていない。
ちらりとアシュベルが私を見てきたけど私も説明のしようがないので苦笑で留めた。するとアシュベルもアイルが私を“ミキちゃん”と呼ぶ理由が分かっていないのだと勘違いしてくれたようでこの話題はここで終了だ。
「バルトロマイ伯爵令息はよく王宮内で見かけますが、何か御用がったのことではないのですか?」
「はい。父について仕事を見ています」
へぇ。こんな子供のうちから既に父親の仕事について学んでいるのか。さすがね。
「さすが、未来の宰相様ね」とアイルは嬉しそうに笑う。
彼女にとってここは乙女ゲームの世界。彼はそこの登場人物で、自分と同じ心臓が動いて、息をしている生き物だとは思えないのだろう。
だから彼女の褒め事にはどこか白々しさがある。
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