38 / 63
第2章 剣を振るう理由
37.罪
しおりを挟む
ユニアス視点
「サンダーバードの件、分かったのか?」
レイファが出ていた後、代わりに入って来た副官に私は問いかけた。
紫紺の髪に金の目をした彼は入団した当時、多くの騎士が恋をし、男と知って多くの騎士を絶望させたと語り継がれる程の美人。
私にはただ仕事のできる優秀な部下だが、今でも彼には男からラブレターが届くとか。ラブレターの送り主を彼はその視線だけで人を射殺しそうな冷ややかな目で見下して、辛辣な言葉で切り捨てているとか。
「子供のサンダーバードが密猟にあったようです。それに怒ったサンダーバードが子供を探して森の奥から出てきたようです」
「その子供は?」
「検問を張ってすぐに密猟者は捕えました。サンダーバードの子供は無事です。怪我を負っているようなので現在、騎士団の方で保護をしています。怪我が治り次第、森に放つ予定です」
「そうか」
最近、増えてきた密猟が問題になっている。魔物の毛皮は頑丈な防具になる為、冒険者に売りつけようとする者や愛玩動物として欲しがる貴族がいるらしいので、彼らに売りつけようとする者たちだ。
「陛下からも取り締まりを強めるようにと」
「分かった」
「それと」
ばんっ!
「ユニアスぅー」
副官のイスファーンが報告を続けようとした時、扉が勢いよく空いた。入って来たのは王女殿下だ。
ノックもなしに入って来たり、あのように勢いよく扉を入って来る姿を見ると彼女はまるで庶民のようだ。礼儀作法は習っているはずだが。
それともいざという時は王女らしく振る舞えるのだろうか?普段がこのように礼儀知らずなだけで。
一部の貴族令息には人気が高いと聞いた。
天真爛漫な姿が他の貴族令嬢と違ってイイとか。男というのは毛色の違う猫をめでて見たくなるものなので一過性のものだとは思うが。それが余計に彼女を図に乗せていると思う。
「王女殿下、ノックもなしに入らないでいただきたい。ここは殿下の遊び場ではありません」
イスファーンは眉間に皴を寄せて王女殿下を睨みつける。彼は王女殿下が嫌いなのだ。
自分に厳しく、他人にも厳しいイスファーンは努力を怠る者を嫌う。
「ここはお城の中よ。王女の私のお家。どこにどう入ろうが私の勝手でしょう」
腰に手を当てて抗議をする王女殿下にイスファーンはこめかみを抑えてため息をついた。王女殿下の発言に頭痛がしたようだ。
王女殿下の言葉はある意味では正しい。
確かにお城は王族が住む場所であり、家と言っても間違いではない。自分の家のどこをうろついても本来なら問題はないのかもしれない。けれど、城というのは王族の家であると同時に我々臣下の職場でもある。
特にここは騎士団団長である私の執務室。つまり機密事項があったり、そういう話をしている可能性もある。
王ならまだしも王女である彼女が知って良い内容など何一つないのだ。
「王女殿下、ドアをノックして入室許可をとるのはマナーの一つです。礼儀作法で習いませんでしたか?」
「習ってと思うけど、でもユニアスだからいいじゃない」
「どういう理屈だ」とイスファーンが呟いていたけど取り敢えず無視をしよう。
「ユニアスがなかなか私の所へ訪ねてくれないから。ユニアスは私の護衛よ。毎日顔を出さないとダメ」
王女殿下の言葉にユニアスの額に青筋が浮かんだ。
当然だろう。
本来なら騎士団団長が王女殿下の専属護衛になるなどあり得ない。けれど先日、王女殿下の我儘を陛下が許してしまい、私は王女殿下の専属護衛にまってしまった。一応、直属の部下をつけあるが専属護衛を任じられた以上は顔を出さないわけにはいかないので何度も様子を見には行っている。
もちろん、そんなことをしていると仕事が滞ることになる。そのしわ寄せが副官であるイスファーンに全て来ているのだ。イスファーンが怒るのも道理。
「申し訳ありません。今日は急用な案件があり、そちらの対応を優先させていただきました」
「もう、真面目ね。今回は許してあげるけど、次はちゃあんと私を優先してね」
「‥‥‥」
そんなことできるわけがない。
「王女殿下、我々は重要な話をしています。ご退出願いますか」
遂にイスファーンの堪忍袋の緒が切れた。
「えぇ、今来たばかりじゃない」
文句を言う王女殿下をイスファーンは力づくで部屋から追い出した。王女殿下の文句言う声とそれを宥める騎士の声が部屋の外から聞こえているがイスファーンは無視をして報告を続けた。
「城内にミラノ公爵令嬢の悪評が流れています。騎士団にも彼女の存在をよく思っていない者がいます。既に実害も出ています。主にミラノ公爵令嬢に対してですが」
「そうか」
だが下手に動くわけにはいかない。
彼女も騎士からの嫌がらせは想定内のはずだ。公爵令嬢の身で騎士の訓練に参加すればプライドの高い騎士が侮辱されたと思い、何かしらの行動に出ることは考えられる事態だった。それでも、騎士団に入って自分の身を本格的に守る術を身に着ける必要が彼女にはあった。その必要性にかられたのだ。
本来なら守られるだけでいい存在のはずの公女がだ。
その罪深さを王女殿下はまったく分かっていない。そのことが腹立たしい。
「サンダーバードの件、分かったのか?」
レイファが出ていた後、代わりに入って来た副官に私は問いかけた。
紫紺の髪に金の目をした彼は入団した当時、多くの騎士が恋をし、男と知って多くの騎士を絶望させたと語り継がれる程の美人。
私にはただ仕事のできる優秀な部下だが、今でも彼には男からラブレターが届くとか。ラブレターの送り主を彼はその視線だけで人を射殺しそうな冷ややかな目で見下して、辛辣な言葉で切り捨てているとか。
「子供のサンダーバードが密猟にあったようです。それに怒ったサンダーバードが子供を探して森の奥から出てきたようです」
「その子供は?」
「検問を張ってすぐに密猟者は捕えました。サンダーバードの子供は無事です。怪我を負っているようなので現在、騎士団の方で保護をしています。怪我が治り次第、森に放つ予定です」
「そうか」
最近、増えてきた密猟が問題になっている。魔物の毛皮は頑丈な防具になる為、冒険者に売りつけようとする者や愛玩動物として欲しがる貴族がいるらしいので、彼らに売りつけようとする者たちだ。
「陛下からも取り締まりを強めるようにと」
「分かった」
「それと」
ばんっ!
「ユニアスぅー」
副官のイスファーンが報告を続けようとした時、扉が勢いよく空いた。入って来たのは王女殿下だ。
ノックもなしに入って来たり、あのように勢いよく扉を入って来る姿を見ると彼女はまるで庶民のようだ。礼儀作法は習っているはずだが。
それともいざという時は王女らしく振る舞えるのだろうか?普段がこのように礼儀知らずなだけで。
一部の貴族令息には人気が高いと聞いた。
天真爛漫な姿が他の貴族令嬢と違ってイイとか。男というのは毛色の違う猫をめでて見たくなるものなので一過性のものだとは思うが。それが余計に彼女を図に乗せていると思う。
「王女殿下、ノックもなしに入らないでいただきたい。ここは殿下の遊び場ではありません」
イスファーンは眉間に皴を寄せて王女殿下を睨みつける。彼は王女殿下が嫌いなのだ。
自分に厳しく、他人にも厳しいイスファーンは努力を怠る者を嫌う。
「ここはお城の中よ。王女の私のお家。どこにどう入ろうが私の勝手でしょう」
腰に手を当てて抗議をする王女殿下にイスファーンはこめかみを抑えてため息をついた。王女殿下の発言に頭痛がしたようだ。
王女殿下の言葉はある意味では正しい。
確かにお城は王族が住む場所であり、家と言っても間違いではない。自分の家のどこをうろついても本来なら問題はないのかもしれない。けれど、城というのは王族の家であると同時に我々臣下の職場でもある。
特にここは騎士団団長である私の執務室。つまり機密事項があったり、そういう話をしている可能性もある。
王ならまだしも王女である彼女が知って良い内容など何一つないのだ。
「王女殿下、ドアをノックして入室許可をとるのはマナーの一つです。礼儀作法で習いませんでしたか?」
「習ってと思うけど、でもユニアスだからいいじゃない」
「どういう理屈だ」とイスファーンが呟いていたけど取り敢えず無視をしよう。
「ユニアスがなかなか私の所へ訪ねてくれないから。ユニアスは私の護衛よ。毎日顔を出さないとダメ」
王女殿下の言葉にユニアスの額に青筋が浮かんだ。
当然だろう。
本来なら騎士団団長が王女殿下の専属護衛になるなどあり得ない。けれど先日、王女殿下の我儘を陛下が許してしまい、私は王女殿下の専属護衛にまってしまった。一応、直属の部下をつけあるが専属護衛を任じられた以上は顔を出さないわけにはいかないので何度も様子を見には行っている。
もちろん、そんなことをしていると仕事が滞ることになる。そのしわ寄せが副官であるイスファーンに全て来ているのだ。イスファーンが怒るのも道理。
「申し訳ありません。今日は急用な案件があり、そちらの対応を優先させていただきました」
「もう、真面目ね。今回は許してあげるけど、次はちゃあんと私を優先してね」
「‥‥‥」
そんなことできるわけがない。
「王女殿下、我々は重要な話をしています。ご退出願いますか」
遂にイスファーンの堪忍袋の緒が切れた。
「えぇ、今来たばかりじゃない」
文句を言う王女殿下をイスファーンは力づくで部屋から追い出した。王女殿下の文句言う声とそれを宥める騎士の声が部屋の外から聞こえているがイスファーンは無視をして報告を続けた。
「城内にミラノ公爵令嬢の悪評が流れています。騎士団にも彼女の存在をよく思っていない者がいます。既に実害も出ています。主にミラノ公爵令嬢に対してですが」
「そうか」
だが下手に動くわけにはいかない。
彼女も騎士からの嫌がらせは想定内のはずだ。公爵令嬢の身で騎士の訓練に参加すればプライドの高い騎士が侮辱されたと思い、何かしらの行動に出ることは考えられる事態だった。それでも、騎士団に入って自分の身を本格的に守る術を身に着ける必要が彼女にはあった。その必要性にかられたのだ。
本来なら守られるだけでいい存在のはずの公女がだ。
その罪深さを王女殿下はまったく分かっていない。そのことが腹立たしい。
310
あなたにおすすめの小説
【完結】子育ては難しい~廃嫡した息子が想像の斜め上にアホだった件~
つくも茄子
ファンタジー
リオン王国には、バークロッド公爵家、アーガイル公爵家、ミルトン公爵家の三大公爵家が存在する。
三年前に起きたとある事件によって多くの貴族子息が表舞台から姿を消した。
各家の方針に従った結果である。
その事件の主犯格の一人であるバークロッド公爵家の嫡男は、身分を剥奪され、市井へと放り出されていた。
親のであるバークロッド公爵は断腸の思いで決行したのだが、とうの本人は暢気なもので、「しばらくの辛抱だろう。ほとぼりが冷めれば元に戻る。父親たちの機嫌も直る」などと考えていた。
よりにもよって、元実家に来る始末だ。
縁切りの意味が理解できていない元息子に、バークロッド公爵は頭を抱えた。
頭は良いはずの元息子は、致命的なまでに想像力が乏しかった。
悪役令嬢だけど、私としては推しが見れたら十分なんですが?
榎夜
恋愛
私は『花の王子様』という乙女ゲームに転生した
しかも、悪役令嬢に。
いや、私の推しってさ、隠しキャラなのよね。
だから勝手にイチャついてて欲しいんだけど......
※題名変えました。なんか話と合ってないよねってずっと思ってて
才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。
キョウキョウ
恋愛
ヴァーレンティア子爵家の令嬢エリアナは、一般人の半分以下という致命的な魔力不足に悩んでいた。伯爵家の跡取りである婚約者ヴィクターからは日々厳しく責められ、自分の価値を見出せずにいた。
そんな彼女が、厳しい指導を乗り越えて伝説の「古代魔法」の習得に成功した。100年以上前から使い手が現れていない、全ての魔法の根源とされる究極の力。喜び勇んで婚約者に報告しようとしたその瞬間――
「君との婚約を破棄することが決まった」
皮肉にも、人生最高の瞬間が人生最悪の瞬間と重なってしまう。さらに実家からは除籍処分を言い渡され、身一つで屋敷から追い出される。すべてを失ったエリアナ。
だけど、彼女には頼れる師匠がいた。世界最高峰の魔法使いソリウスと共に旅立つことにしたエリアナは、古代魔法の力で次々と困難を解決し、やがて大きな名声を獲得していく。
一方、エリアナを捨てた元婚約者ヴィクターと実家は、不運が重なる厳しい現実に直面する。エリアナの大活躍を知った時には、すべてが手遅れだった。
真の実力と愛を手に入れたエリアナは、もう振り返る理由はない。
これは、自分の価値を理解してくれない者たちを結果的に見返し、厳しい時期に寄り添ってくれた人と幸せを掴む物語。
《完結》《異世界アイオグリーンライト・ストーリー》でブスですって!女の子は変われますか?変われました!!
皇子(みこ)
恋愛
辺境の地でのんびり?過ごして居たのに、王都の舞踏会に参加なんて!あんな奴等のいる所なんて、ぜーたいに行きません!でブスなんて言われた幼少時の記憶は忘れないー!
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を
タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。
だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。
雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。
血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、
“最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる