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第2章 剣を振るう理由
39.アイルの側近候補たち
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マクミラン様と楽しいお茶会を終えた後は部屋に籠って魔術の勉強をする。神様がくれたチート能力で魔術の腕はかなり上がったし、実戦で使えるレベルまでに達していた。
でも誰かに教えるつもりはない。これは切り札だ。
「ふぅー。時間がいくらあっても足りないわね」
気が付けば夜はすっかり更けていた。
貴族向けの瓶のデザイン確認や発注、他国から取り寄せた果実とお酒の配合を考えないといけない。
アグニスについても何も解決していないので警戒を続けなければならない。
アイルの動向も逐一探りたいけど王女相手にそんなことできないし、人材もいない。
「どうしたもんかな」
今日はこれ以上、勉強をするつもりがないので勉強道具を片付け、代わりに引き出しから招待状を取り出した。
お茶会の招待状が数枚ある。令嬢の家名を見るに、全員アイルの側近候補だ。
王族ともなれば男女問わず側近が必要になる。
王子の場合は政務に関わってくるため優秀な者を選抜する必要があるけれど王女の場合は相談相手、話し相手の役割が求められるので能力値よりも社交性や話術が得意な者が選抜される。
アイルの側近はまだ決まっていない。私はあくまでアイルのお気に入りという立ち位置だけど側近に選ばれたわけではない。できれば選ばれたくはないけど、それは無理な話だろう。
マウントを取り合うようなお茶会になるだろう。まぁ、貴族のお茶会なんてどんなものでもマウントを取るようなものばかり。和気藹々としたお茶会なんてまずあり得ない。
友達は多い方ではなかった。いつもマヤに邪魔をされていたからというのもあるし、私が大勢で騒ぐのが苦手というのもあって。友達何て何でも言い合える人が一人いればいいと思っていた。
「もう会えないと分かっているからかな。友達に会いたいと強く思うのは」
◇◇◇
願ったところで叶うはずもなく私は腹を決めてお茶会へ参加した。
「こうやって、みなさんとお話ができて光栄ですわ。何せ、私たちは王女殿下の側近候補として王女殿下をお支えする同士なんですから」
真っ先に口を開いたのは金茶の髪をポニーテールにした吊り目の令嬢。レイチェル・ハワード侯爵令嬢だ。
“同士”なんて名ばかり。
お互いに蹴落とそうとする気満々だ。
アイルの馬鹿さは彼女たちも知っているだろう。関わるのは嫌だとばかりに距離を置く貴族もいる。私が社交界デビューで着たドレスがアイルの用意したものだとみんなに知らしめたことが一番の要因だけど。
ここにいる令嬢たちは私のように王命だから断られずに仕方がなく来た者やリスクよりも王に覚えてもらいたい。王女と親しくなってより好条件の男に嫁ぐ為に利益を優先させた者だ。
「そうですわね。私やレイファ嬢は公爵家ですが、ここでは身分に関係なくみなさんと仲良くしていきたいと思います。ねぇ、レイファ嬢」
そう言って話を振って来たのは大きな可愛らしい目をした令嬢。男の庇護欲をそそる容姿をしており、それを自覚した振る舞いをする彼女はモリアナ・ペティリュ公爵令嬢だ。
「それにしても今日はレイファ嬢に会えて嬉しいですわ。てっきり来られないかと思っていました」
何か嫌味でも言うつもりだろうかと身構えながらも笑顔をモリアナに向けた。
「あら、どうしてですか?王女殿下の側近候補が集まる大事なお茶会ですのに。私がすっぽかすとでも?」
「いいえ、まさか」
ブンブンと首を横に振りながらモリアナは言いずらいことを言わされたような態度で口を開いた。
「だって、レイファ嬢は私たちと違ってお忙しいでしょう。剣を振るうことに。王女殿下の為にそこまでなさるなんて凄いですわね。でも、私、レイファ嬢のことが心配ですわ。万が一怪我でもしたら公爵令嬢とは言え、嫁ぎ先に困りますでしょう。それに婚約者の方も困っているのではなくて?男ばかりいる場所に足を踏み入れるあなたの所業に」
まるで私が婚約者がいる身でありながらたくさんの男に媚を売りに行っているふしだらな女だと言いたいようね。
「私は皆さまよりも王女殿下と過ごす時間が長いです。光栄にも私のことを気に入ってくださり、傍に置いてくださいます。王族という身分は危険と隣り合わせです。騎士に守られようと絶対の保証などありません。その為、王女殿下が私の身を案じ、守る術を身に着けてはどうかとご助言くださりました。陛下からも長く殿下の傍にいる私が多少なりとも戦う術を知っている方が安心すると仰ってくださり格別のご高配を賜った結果、騎士団の訓練に参加させていただいています」
物は言いようねと自分で自分の意見を嘲笑いながら私はにっこりと私を非難したモリアナを見る。
「ペティリュ公爵令嬢はそんな陛下のご配慮を不要と断じますの?それは不敬というものでは?」
「わ、私はそのようなつもりは」
噂程度でしか事実を知らず、深くまで探ろうとはしなかったのだろう。そのような曖昧な情報を持って人を断じるなど浅慮に欠けるわね。
「それに、確かに身分を超えた友情というものは存在しますし私も皆さんとはそのような関係を築いていけたらとは思いますが」
全く思わないけどね。こんな面倒な輩と関わり合いたいなんて。
しかもアイルの寵を取り合うなんて考えるだけでも鳥肌が立つ。そんなに欲しいのならのしつけてくれたやりたいぐらいだ。
「初対面で名前を呼ぶのは些か無礼がすぎるのでは?せめて許可を得てからにするのが最低限のマナーというもの。公女は私の行いをふしだらと非難する前に礼儀作法を一から学びなおすべきではないかしら?」
「っ」
かぁーっと顔を赤くするモリアナを助けようとするものはいない。ここに味方はいない。みんな自分こそがアイルの側近に相応しいのだと見せつける為に集まっているのだから。
「ミラノ公爵令嬢、その辺になさってはいかがですか?確かにペティリュ公爵令嬢の言動は浅慮に欠けますが、仕方がないことですわ。公爵令嬢とは本来、邸の最奥で蝶よ花よと育てられるもの。そんな育てられ方をすれば世間知らずになるのは当然のこと。私はそんな話よりミラノ公爵令嬢の事業について詳しく聞きたいですわ」
そう言ってモリアナに助け船を出すような切り出しをしたので彼女に味方をするのかと出方を伺ったら冷たい印象通り辛辣な言葉で切り捨てたのはシーアン・リュシマコス伯爵令嬢だ。
彼女の領地は海が近く、特産も海鮮や海に関連した装飾品が多い。現に今日の彼女の頭には真珠と赤サンゴの装飾品がついていた。
「何でも他国の果実を色々と取寄せているとか」
「………」
うわーっ。この人は頭の切れる人だ。それに情報収集に余念がないね。最近始めたばかりのことをもう知っているなんて。警戒レベルを上げておかないと。
「公女殿下が最近始めた事業は果物を使ったお酒でしたね。それと関連があるのかしら?」
「私が経営している『桜の木』は庶民向けですの。ですが、お茶会やパーティに振る舞うだけではなく個人的に購入したいという声をたくさん頂きまして。まさか、庶民と同じものを貴族に出すわけにいかないでしょう。それなら貴族向けに特別に用意した一品で作り、販売しようかと」
ごくりと喉を鳴らして食い入るように私を見る令嬢たちがいた。
きっと飲んでみたいけど庶民と同じものを欲しいと言えずに我慢していた人たちだろう。
「良い考えですわね。ご存知かと思いますが、私の領地は海に面していますの。それゆえ他国との貿易も盛んに行っております。なので色々と珍しいものが手に入るんですよ」
成程。彼女は仲介役に名乗りを上げているわけか。
庶民向けの果実はメリンダの領地から仕入れている。その結果、没落寸前だった彼女の領地は建て直した。
私の事業に少しでも噛めれば利益が入ると踏んだのね。
アイルの側近に誰が相応しいか決めるこの場で彼女がその話を持ち出したということは彼女は最初からそれ目当てだったのね。
私としても悪くない話ね。
「それはとても興味深いですわね。是非、詳しく聞きたいですわ」
でも誰かに教えるつもりはない。これは切り札だ。
「ふぅー。時間がいくらあっても足りないわね」
気が付けば夜はすっかり更けていた。
貴族向けの瓶のデザイン確認や発注、他国から取り寄せた果実とお酒の配合を考えないといけない。
アグニスについても何も解決していないので警戒を続けなければならない。
アイルの動向も逐一探りたいけど王女相手にそんなことできないし、人材もいない。
「どうしたもんかな」
今日はこれ以上、勉強をするつもりがないので勉強道具を片付け、代わりに引き出しから招待状を取り出した。
お茶会の招待状が数枚ある。令嬢の家名を見るに、全員アイルの側近候補だ。
王族ともなれば男女問わず側近が必要になる。
王子の場合は政務に関わってくるため優秀な者を選抜する必要があるけれど王女の場合は相談相手、話し相手の役割が求められるので能力値よりも社交性や話術が得意な者が選抜される。
アイルの側近はまだ決まっていない。私はあくまでアイルのお気に入りという立ち位置だけど側近に選ばれたわけではない。できれば選ばれたくはないけど、それは無理な話だろう。
マウントを取り合うようなお茶会になるだろう。まぁ、貴族のお茶会なんてどんなものでもマウントを取るようなものばかり。和気藹々としたお茶会なんてまずあり得ない。
友達は多い方ではなかった。いつもマヤに邪魔をされていたからというのもあるし、私が大勢で騒ぐのが苦手というのもあって。友達何て何でも言い合える人が一人いればいいと思っていた。
「もう会えないと分かっているからかな。友達に会いたいと強く思うのは」
◇◇◇
願ったところで叶うはずもなく私は腹を決めてお茶会へ参加した。
「こうやって、みなさんとお話ができて光栄ですわ。何せ、私たちは王女殿下の側近候補として王女殿下をお支えする同士なんですから」
真っ先に口を開いたのは金茶の髪をポニーテールにした吊り目の令嬢。レイチェル・ハワード侯爵令嬢だ。
“同士”なんて名ばかり。
お互いに蹴落とそうとする気満々だ。
アイルの馬鹿さは彼女たちも知っているだろう。関わるのは嫌だとばかりに距離を置く貴族もいる。私が社交界デビューで着たドレスがアイルの用意したものだとみんなに知らしめたことが一番の要因だけど。
ここにいる令嬢たちは私のように王命だから断られずに仕方がなく来た者やリスクよりも王に覚えてもらいたい。王女と親しくなってより好条件の男に嫁ぐ為に利益を優先させた者だ。
「そうですわね。私やレイファ嬢は公爵家ですが、ここでは身分に関係なくみなさんと仲良くしていきたいと思います。ねぇ、レイファ嬢」
そう言って話を振って来たのは大きな可愛らしい目をした令嬢。男の庇護欲をそそる容姿をしており、それを自覚した振る舞いをする彼女はモリアナ・ペティリュ公爵令嬢だ。
「それにしても今日はレイファ嬢に会えて嬉しいですわ。てっきり来られないかと思っていました」
何か嫌味でも言うつもりだろうかと身構えながらも笑顔をモリアナに向けた。
「あら、どうしてですか?王女殿下の側近候補が集まる大事なお茶会ですのに。私がすっぽかすとでも?」
「いいえ、まさか」
ブンブンと首を横に振りながらモリアナは言いずらいことを言わされたような態度で口を開いた。
「だって、レイファ嬢は私たちと違ってお忙しいでしょう。剣を振るうことに。王女殿下の為にそこまでなさるなんて凄いですわね。でも、私、レイファ嬢のことが心配ですわ。万が一怪我でもしたら公爵令嬢とは言え、嫁ぎ先に困りますでしょう。それに婚約者の方も困っているのではなくて?男ばかりいる場所に足を踏み入れるあなたの所業に」
まるで私が婚約者がいる身でありながらたくさんの男に媚を売りに行っているふしだらな女だと言いたいようね。
「私は皆さまよりも王女殿下と過ごす時間が長いです。光栄にも私のことを気に入ってくださり、傍に置いてくださいます。王族という身分は危険と隣り合わせです。騎士に守られようと絶対の保証などありません。その為、王女殿下が私の身を案じ、守る術を身に着けてはどうかとご助言くださりました。陛下からも長く殿下の傍にいる私が多少なりとも戦う術を知っている方が安心すると仰ってくださり格別のご高配を賜った結果、騎士団の訓練に参加させていただいています」
物は言いようねと自分で自分の意見を嘲笑いながら私はにっこりと私を非難したモリアナを見る。
「ペティリュ公爵令嬢はそんな陛下のご配慮を不要と断じますの?それは不敬というものでは?」
「わ、私はそのようなつもりは」
噂程度でしか事実を知らず、深くまで探ろうとはしなかったのだろう。そのような曖昧な情報を持って人を断じるなど浅慮に欠けるわね。
「それに、確かに身分を超えた友情というものは存在しますし私も皆さんとはそのような関係を築いていけたらとは思いますが」
全く思わないけどね。こんな面倒な輩と関わり合いたいなんて。
しかもアイルの寵を取り合うなんて考えるだけでも鳥肌が立つ。そんなに欲しいのならのしつけてくれたやりたいぐらいだ。
「初対面で名前を呼ぶのは些か無礼がすぎるのでは?せめて許可を得てからにするのが最低限のマナーというもの。公女は私の行いをふしだらと非難する前に礼儀作法を一から学びなおすべきではないかしら?」
「っ」
かぁーっと顔を赤くするモリアナを助けようとするものはいない。ここに味方はいない。みんな自分こそがアイルの側近に相応しいのだと見せつける為に集まっているのだから。
「ミラノ公爵令嬢、その辺になさってはいかがですか?確かにペティリュ公爵令嬢の言動は浅慮に欠けますが、仕方がないことですわ。公爵令嬢とは本来、邸の最奥で蝶よ花よと育てられるもの。そんな育てられ方をすれば世間知らずになるのは当然のこと。私はそんな話よりミラノ公爵令嬢の事業について詳しく聞きたいですわ」
そう言ってモリアナに助け船を出すような切り出しをしたので彼女に味方をするのかと出方を伺ったら冷たい印象通り辛辣な言葉で切り捨てたのはシーアン・リュシマコス伯爵令嬢だ。
彼女の領地は海が近く、特産も海鮮や海に関連した装飾品が多い。現に今日の彼女の頭には真珠と赤サンゴの装飾品がついていた。
「何でも他国の果実を色々と取寄せているとか」
「………」
うわーっ。この人は頭の切れる人だ。それに情報収集に余念がないね。最近始めたばかりのことをもう知っているなんて。警戒レベルを上げておかないと。
「公女殿下が最近始めた事業は果物を使ったお酒でしたね。それと関連があるのかしら?」
「私が経営している『桜の木』は庶民向けですの。ですが、お茶会やパーティに振る舞うだけではなく個人的に購入したいという声をたくさん頂きまして。まさか、庶民と同じものを貴族に出すわけにいかないでしょう。それなら貴族向けに特別に用意した一品で作り、販売しようかと」
ごくりと喉を鳴らして食い入るように私を見る令嬢たちがいた。
きっと飲んでみたいけど庶民と同じものを欲しいと言えずに我慢していた人たちだろう。
「良い考えですわね。ご存知かと思いますが、私の領地は海に面していますの。それゆえ他国との貿易も盛んに行っております。なので色々と珍しいものが手に入るんですよ」
成程。彼女は仲介役に名乗りを上げているわけか。
庶民向けの果実はメリンダの領地から仕入れている。その結果、没落寸前だった彼女の領地は建て直した。
私の事業に少しでも噛めれば利益が入ると踏んだのね。
アイルの側近に誰が相応しいか決めるこの場で彼女がその話を持ち出したということは彼女は最初からそれ目当てだったのね。
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