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第四章
act 16 怯える日々
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最近の賢司が覚醒剤に手を出す時の癖の様なものがある事に、瞳はうすうす気付いていた。
引き金になるのは、大体殆どが酒だった。
知り合いの店に呑みに行くと言って出かけた時があった。
昔は遊び人だった賢司だけれど、瞳と一緒になってからは、呑みに行くなんて事すらなかった。
帰ってきた賢司を見て、愕然とした。
カンペキにキマってる。
何故?
呑みに行くって言ったのは、嘘なの?
本当は女と遊んでいるのでしょう?
呼び起こす、疑いの目。
それからは、帰って来ない事もしばしばあった。
これでは瞳は賢司の何を信じればいいのか、大切な何かを見失っていった。
そして浮かぶ、もうついていけない、という思い。
こんな関係にただ疲れてしまって、瞳は冷静な判断も出来なくなっていた。
一緒にいる意味が分からない。
だって他に女がいるのなら、そっちに行けばいいんじゃないの?
あたしは賢司に必要じゃないんでしょ?
瞳には大切な瑠花がいるのだから。
そう、瑠花さえいれば賢司は要らない。
覚醒剤の誘惑に勝てない、脆弱な心しか持てない男なら、期待するだけ虚しいだけだもの。
もうひとつ、瞳の疑惑を抱く原因になる女が賢司に付き纏っていた。
無論、覚醒剤は毎日やって当たり前、という人間辞めてる様な女だった。
瞳はこの女が大嫌いだった。
この女の厄介なところは、略奪愛が大好物というところだった。
つまり、他人の男を寝とるのが趣味のような汚い女だった。
その女と賢司がコソコソ通じてる事すら、やっぱり怪しいとしか思えなかった。
でも、瞳の感じる疑惑は、普通に誰しもが持つ、普通の感情だと思う。
そして、今夜もなんの連絡もないまま何処にいるのかすら分からない。
賢司は帰って来ない。
今夜帰って来ないならば、瞳は賢司との関係も終わりにするしかない、あの女と一緒にいるのなら我慢できない。
あの女にだけは負けたくないし、負けたとも思いたくもないから。
それならこっちから終わりにすればいいだけの事。
でも、もしかしたら逮捕されたのじゃないだろうか?
瞳の中に、もうひとつの疑惑が浮かんできた。
賢司のLINEは既読にすらならない。
思い切って電話を掛けてみた。
すると、『お掛けになった電話番号は、電源が入っていないか…』のガイダンスが流れた。
ケータイの電源は警察に捕まったら、切られてしまう。
まさか?
賢司は?
捕まったの?
そんな風に考え出したら、もうどうしたらいいのか分からない。
ただ、今夜捕まったのなら賢司は帰って来ない。
「賢司……」
万が一、賢司が捕まった時の事は前もって賢司から聞いていた。
『俺が捕まっても、2日で帰って来るから心配するな』
でもそれは賢司の身体に覚醒剤が入っていない時の場合。
今夜は違う。
捕まったら、帰っては来ない。
怖い。
賢司が捕まったら、瞳はどうすればいいのか本当に分からない。
どんなに強がりを言ってみたところで、瞳は賢司から離れる事など出来はしない。
それだけ賢司の存在は大きかった。
ずっと賢司だけを見つめて、一緒に歩いて来た。
覚醒剤という破滅への道のりだけれども、それでも瞳は賢司が好きだった。
そう、ただそれだけの事。
だからこそ裏切りは、許せない。
引き金になるのは、大体殆どが酒だった。
知り合いの店に呑みに行くと言って出かけた時があった。
昔は遊び人だった賢司だけれど、瞳と一緒になってからは、呑みに行くなんて事すらなかった。
帰ってきた賢司を見て、愕然とした。
カンペキにキマってる。
何故?
呑みに行くって言ったのは、嘘なの?
本当は女と遊んでいるのでしょう?
呼び起こす、疑いの目。
それからは、帰って来ない事もしばしばあった。
これでは瞳は賢司の何を信じればいいのか、大切な何かを見失っていった。
そして浮かぶ、もうついていけない、という思い。
こんな関係にただ疲れてしまって、瞳は冷静な判断も出来なくなっていた。
一緒にいる意味が分からない。
だって他に女がいるのなら、そっちに行けばいいんじゃないの?
あたしは賢司に必要じゃないんでしょ?
瞳には大切な瑠花がいるのだから。
そう、瑠花さえいれば賢司は要らない。
覚醒剤の誘惑に勝てない、脆弱な心しか持てない男なら、期待するだけ虚しいだけだもの。
もうひとつ、瞳の疑惑を抱く原因になる女が賢司に付き纏っていた。
無論、覚醒剤は毎日やって当たり前、という人間辞めてる様な女だった。
瞳はこの女が大嫌いだった。
この女の厄介なところは、略奪愛が大好物というところだった。
つまり、他人の男を寝とるのが趣味のような汚い女だった。
その女と賢司がコソコソ通じてる事すら、やっぱり怪しいとしか思えなかった。
でも、瞳の感じる疑惑は、普通に誰しもが持つ、普通の感情だと思う。
そして、今夜もなんの連絡もないまま何処にいるのかすら分からない。
賢司は帰って来ない。
今夜帰って来ないならば、瞳は賢司との関係も終わりにするしかない、あの女と一緒にいるのなら我慢できない。
あの女にだけは負けたくないし、負けたとも思いたくもないから。
それならこっちから終わりにすればいいだけの事。
でも、もしかしたら逮捕されたのじゃないだろうか?
瞳の中に、もうひとつの疑惑が浮かんできた。
賢司のLINEは既読にすらならない。
思い切って電話を掛けてみた。
すると、『お掛けになった電話番号は、電源が入っていないか…』のガイダンスが流れた。
ケータイの電源は警察に捕まったら、切られてしまう。
まさか?
賢司は?
捕まったの?
そんな風に考え出したら、もうどうしたらいいのか分からない。
ただ、今夜捕まったのなら賢司は帰って来ない。
「賢司……」
万が一、賢司が捕まった時の事は前もって賢司から聞いていた。
『俺が捕まっても、2日で帰って来るから心配するな』
でもそれは賢司の身体に覚醒剤が入っていない時の場合。
今夜は違う。
捕まったら、帰っては来ない。
怖い。
賢司が捕まったら、瞳はどうすればいいのか本当に分からない。
どんなに強がりを言ってみたところで、瞳は賢司から離れる事など出来はしない。
それだけ賢司の存在は大きかった。
ずっと賢司だけを見つめて、一緒に歩いて来た。
覚醒剤という破滅への道のりだけれども、それでも瞳は賢司が好きだった。
そう、ただそれだけの事。
だからこそ裏切りは、許せない。
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