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彼と凛
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唐突だけれど凛に彼ができた。芸能界に憧れてオーディションを受けまくってる子。でもなかなかうまくいかないみたいだけれど。当たり前か。
凛にとっては初めての体験ばかりで、でも彼君のおかげで凛の世界は一気に広がった。彼君をとおして友達がたくさんできた。そこは素直にありがとう。
それはいいのだけれど、ちょっと困った彼なのです。ものすごくわがまま。
毎日連日ケータイで電話を繋ぎっぱなし。寝る時までそのまま繋いでる。私から見たら『バカじゃないの?』と思うけれど凛にしてみたら大ごとみたいだし。
でもね、それでつまらないケンカをしたり凛を追いつめて過呼吸を引き起こさせたりするのは、母の私からしたらやめてほしい。凛はまだ自分の意見を言葉にすることに慣れてはいない。
やっと殻をやぶって外に出てきたばかりのヒヨっ子です。ほんとうの意味でヒヨコなのです凛は。
小学校はほとんど通学してなかった。中学校も三分の一くらいしか通っていない。それも全て「イジメ」が原因だった。
陰湿なイジメ。
ただ無視するというだけの事だけれど、その当人にとってはどれほどの痛みを感じただろうか。
だから私がそれを知った時、学校ごと爆破してやりたいと思ったのだった。
しかし、そのイジメが凛を育てた、と言っても過言ではないのかもしれない。
凛にはひとの痛みが分かるようだ。それはとても大切なことだと思う。
ひとの痛みも分からない子供が、大人になってもろくな人間にならないだろう。
私の職場にもそんな人間はいる。誰かの悪口ばかり言っているのだから、おそらく私のことも何を言われてるのか分かったものじゃない。
こういう人間は他人の心の痛みなどどうでもいい事なのだろう。自分さえ良ければそれでいい。
凛にはひとの陰口などを言ってはダメだと教えてきた。言いたいことは面と向かって言えと。
私はそうして生きてきた。無論その性格のせいで衝突することもしばしばあった。陰口を叩くくらいならケンカした方がすっきりすると思いませんか?たとえそれが思わぬ結果に終わったとしても。
私だけかな?
母親がケンカしろと教えていたのではやっぱり問題があるのかもしれないけれど。
そのくらい強くなってほしいという母の儚い願いなのです。
しかし凛は反対にケンカになるような言動は一切しない。けれど自分の意志はちゃんと持っている。そこに歪みが出来てしまうと黙ってしまう。もう何も言えなくてただ泣くばかりなのだ。その心の中でどれほどの葛藤を繰り広げているのか、想像することすら出来ない。
私はそれを毎日目の当たりにしているのだ。怒りたくもなるのが親というものだろう。
彼君には悪いけれど、凛が心おきなく休むための時間を作ることにした。それは私が凛の父親に頼んでそうしたことだ。
電話の時間を夜十時までに決めた。それでも凛は午前中には起きてこられない。
凛にはやらなければならない決め事がたくさんある。この家で凛の仕事は限りなくあるのだ。
来月には秋田犬の出産も控えている。母犬は凛の犬だ。そして初めての出産なのだから子育ても手伝わなければならないだろう。
そうなったら今のように電話でごちゃごちゃゲームなどやっているヒマすらなくなる。なにしろ三時間おきにミルクを作ってあげなければ仔犬達は生きてはいけないのだ。
それを彼君が理解できないのならばこの恋に先はないと私は思う。
すねるのも勝手。
病むのも勝手だ。
そんな彼のわがままに凛はいつまで耐えられるだろうか。
そうは思わないのだろうか?
自分の言動が凛を追いつめているとは考えないのだろうか?
なにも感じないとすればそれは恋情ではない。ただの欲望に他ならないだろう。そう、つまりはただの性欲のみ。
傷つくことを極端に恐れる凛は、また他人を傷つけることも大げさなくらいに恐れた。
親なんてバカなもので子供が幸せならそれでいいのである。簡単なことだろうと思うけれどこれが意外とむずかしい。
無論、他人が介入するのだからそれは仕方のないことなのだ。人様の子供を巻き込んですったもんだのケンカをする気などさらさらない。そりゃあ私はバカ母だとは思うけれど。
まあとりあえず彼は当初の目的を果たしたようだし、この先は母は見守るしか出来ないのだ。何とも淋しいものです。
凛にとっては初めての体験ばかりで、でも彼君のおかげで凛の世界は一気に広がった。彼君をとおして友達がたくさんできた。そこは素直にありがとう。
それはいいのだけれど、ちょっと困った彼なのです。ものすごくわがまま。
毎日連日ケータイで電話を繋ぎっぱなし。寝る時までそのまま繋いでる。私から見たら『バカじゃないの?』と思うけれど凛にしてみたら大ごとみたいだし。
でもね、それでつまらないケンカをしたり凛を追いつめて過呼吸を引き起こさせたりするのは、母の私からしたらやめてほしい。凛はまだ自分の意見を言葉にすることに慣れてはいない。
やっと殻をやぶって外に出てきたばかりのヒヨっ子です。ほんとうの意味でヒヨコなのです凛は。
小学校はほとんど通学してなかった。中学校も三分の一くらいしか通っていない。それも全て「イジメ」が原因だった。
陰湿なイジメ。
ただ無視するというだけの事だけれど、その当人にとってはどれほどの痛みを感じただろうか。
だから私がそれを知った時、学校ごと爆破してやりたいと思ったのだった。
しかし、そのイジメが凛を育てた、と言っても過言ではないのかもしれない。
凛にはひとの痛みが分かるようだ。それはとても大切なことだと思う。
ひとの痛みも分からない子供が、大人になってもろくな人間にならないだろう。
私の職場にもそんな人間はいる。誰かの悪口ばかり言っているのだから、おそらく私のことも何を言われてるのか分かったものじゃない。
こういう人間は他人の心の痛みなどどうでもいい事なのだろう。自分さえ良ければそれでいい。
凛にはひとの陰口などを言ってはダメだと教えてきた。言いたいことは面と向かって言えと。
私はそうして生きてきた。無論その性格のせいで衝突することもしばしばあった。陰口を叩くくらいならケンカした方がすっきりすると思いませんか?たとえそれが思わぬ結果に終わったとしても。
私だけかな?
母親がケンカしろと教えていたのではやっぱり問題があるのかもしれないけれど。
そのくらい強くなってほしいという母の儚い願いなのです。
しかし凛は反対にケンカになるような言動は一切しない。けれど自分の意志はちゃんと持っている。そこに歪みが出来てしまうと黙ってしまう。もう何も言えなくてただ泣くばかりなのだ。その心の中でどれほどの葛藤を繰り広げているのか、想像することすら出来ない。
私はそれを毎日目の当たりにしているのだ。怒りたくもなるのが親というものだろう。
彼君には悪いけれど、凛が心おきなく休むための時間を作ることにした。それは私が凛の父親に頼んでそうしたことだ。
電話の時間を夜十時までに決めた。それでも凛は午前中には起きてこられない。
凛にはやらなければならない決め事がたくさんある。この家で凛の仕事は限りなくあるのだ。
来月には秋田犬の出産も控えている。母犬は凛の犬だ。そして初めての出産なのだから子育ても手伝わなければならないだろう。
そうなったら今のように電話でごちゃごちゃゲームなどやっているヒマすらなくなる。なにしろ三時間おきにミルクを作ってあげなければ仔犬達は生きてはいけないのだ。
それを彼君が理解できないのならばこの恋に先はないと私は思う。
すねるのも勝手。
病むのも勝手だ。
そんな彼のわがままに凛はいつまで耐えられるだろうか。
そうは思わないのだろうか?
自分の言動が凛を追いつめているとは考えないのだろうか?
なにも感じないとすればそれは恋情ではない。ただの欲望に他ならないだろう。そう、つまりはただの性欲のみ。
傷つくことを極端に恐れる凛は、また他人を傷つけることも大げさなくらいに恐れた。
親なんてバカなもので子供が幸せならそれでいいのである。簡単なことだろうと思うけれどこれが意外とむずかしい。
無論、他人が介入するのだからそれは仕方のないことなのだ。人様の子供を巻き込んですったもんだのケンカをする気などさらさらない。そりゃあ私はバカ母だとは思うけれど。
まあとりあえず彼は当初の目的を果たしたようだし、この先は母は見守るしか出来ないのだ。何とも淋しいものです。
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