独白

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片思いをしている。もうずっとだ。人生の半分をこの思いと一緒に過ごしている。
魅了された。心の奥深くを握りしめて離してくれない。そんな相手と出会えるなんて、きっと奇跡だ。
俺は、その奇跡を純粋に喜んだ。
それと同時に恨んだ。どうやっても消化されない、この行き場のない気持ちをどこにぶつければいいんだ。
片想いとはあまりにも残酷だ。片想いしている時がいちばん楽しいと言う人もいるが、俺は到底思えない。胸が締め付けられて、息が出来なくなって、溺れそうになる。
自分が自分じゃなくなる感覚に蝕まれていく。盲目になればなるほど他の大切なものが己の手からこぼれ落ちて行く。
俺は器用じゃない。だからひとつの事しか考えられない。あいつに全て支配されるようだ。
人混みに行くと無意識に探してしまう。見つけたら視線で追ってしまう。声をかけられたら嬉しいのと同時に苦しくなる。触れてしまったらそのまま一生離してやれないかもしれない。俺をこんなふうにしたのはあいつだ。あいつのせいで俺は知らなくてもいい感情を知ってしまった。独占欲っていう、そんなありきたりな言い方じゃ足りない。俺は一生をかけてあいつの人生に関わりたいって、そう思ってしまった。
なんも興味が持てなかった自分にこんな思いを持たせた片想いは残酷だ。そんなふうに思わせる人と出会わせた奇跡はもっと残酷だ。
でも、不思議と悪くないと思っている自分がいる。昔は恨んだ。でも、今は感謝している。自分にも興味が持てるものがあると教えてくれたからだ。
俺は伝えてみようと思った。俺の想いを全て。受け入れてくれるかは知らねぇ。でも、この片想いに、そろそろ終止符を打とうと思う。受け入れてくれりゃ、そりゃ嬉しい。
受け入れられなくても、俺はあいつを想い続ける。片想いじゃない。恋じゃない。自己満な感情じゃない。愛だ。愛をもって想い続けるんだ。
本当は恋と愛の違いなんて分かってない。
でも分かることはある。
あいつが幸せになれば俺も幸せだ。あいつが悲しいなら俺も悲しい。あいつが幸せになるなら、どれだけ愛していても、隣にいるのが自分じゃなくても、俺のこの気持ちを手放すことになっても、俺はあいつの幸せを願い続けることが出来る。
この気持ちを、俺は、愛情だと言いたい。誰からどう言われても、これが俺の愛だ。あいつに対する精一杯の愛だ。これが恋と愛の違いだと俺は思う。
我ながら、めちゃくちゃな考えだと思う。でも、今の俺の結論はこうだ。
俺にとって、愛することは苦じゃない。愛することの幸せをあいつは気づかせてくれたからだ。無自覚だと思うから絶対に口には出さないが、感謝してる。
気持ち伝えるだけなのに、らしくねぇことばっか考える。
自分がこんな女々しいなんて。あいつが知ったら笑うだろうな。
決意はもう固まってる。




















俺は、今とても幸せだ。
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