【完結】火を吐く土の国の王子は、塔から来た調査官に灼熱の愛をそそぐ

月田朋

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5、追う者、追われる者

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 追っ手は手練れだったが、ヨミ王子と少年が一枚上手だった。迷路のような路地にも助けられ、二人はザミドも追っ手もまいてしまった。
 やがて懐からひょいととりだされ、卓の中央に降ろされる。そこには精巧なドールハウスが置かれていた。内装や家具の細かな細工と仕様は大人でも目をみはるような立派な品だった。
 よくよく見ると天井の梁や柱、全体の雰囲気が、トウヤの生まれ故郷の家に似ていて懐かしさを感じる。
「すごい! ぴったり! うわーうわー、そこ座ってみて」
 小さな揺り椅子に座ってみせれば、少年は大喜びである。
 本来の家のあるじであるこれもまた精巧な人形を、少年がトウヤに見せた。陶器製で今のトウヤとほぼ同じ大きさだ。
「さっきあんたを見たとき、人形に命がはいったかと思って心底驚いたんだ」 
 長い髪と明るい肌、柔和な表情が、まるで生き写しだった。
 ヨミ王子もまじまじと見比べていたが、トウヤが微笑みかけると相変わらず、すいと目をそらす。
「トウヤさまあ!!」
 そこへ鬼気迫る勢いで現れたのは、頼りになるだみ声だった。
「うわっ、こわっ、はやっ、なんでこの隠れ家がわかった」
 ザミドの粘り強さや忠義心を甘くみられてはこまる、とトウヤは微笑む。
(ザミド、ここへ)
 ザミドに手をだすように身振りで伝えると、ザミドはその意を汲んで手を手巾でさっと清め、うやうやしく両手をさしだす。するとトウヤがその上に乗った。ザミドはトウヤを大切に掬い上げた。
 そしてザミドはトウヤが二人と話やすい高さにする。ただし、何か少しでも不埒な行動にでたら、許さないし、死んでも主人を守るという目で睨みをきかせている。
 トウヤはヨミ王子に、なぜ塔に調査の依頼をしたのか、指で尋ねると、ザミドがそれを声に出して伝えた。
 トウヤの有無をいわせない笑顔、ザミドの圧に、少年は厳かに述べた。
「わたしがカラスに頼んだのだ。カラスはわたしのかわりに調査官の派遣を塔に依頼した。申し遅れた。わたしは火吐国第一王女、イチである」
 その堂々とした態度には、貧相な少年のなりをしていることを忘れさせるほどの威厳があった。

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