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14、灼熱の炎/懊悩の泉
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ローブを脱ぎ、薄衣のみとなり湯気の中をすすむ。
新鮮な湯がじんわりと身体をあたためる。さっぱりと心地よく身体がゆるみだす。湯を手にすくい、顔や肩、喉元に浴びせかけた。
そうするうちにトウヤの手の黒ずみはどんどん広がってゆき、全身が闇のように黒くなっていく。
肩で切りそろえられた銀髪が金色になり、するすると伸びてうねる。かぼそい手足、しなる長い尾、漆黒の艶肌をもつ淫魔となった。
銀髪で色白のたおやかな青年の姿は消え、蠱惑的な肢体とギラギラと挑発的な瞳をもつ別の生き物となる。
赤い舌をちらつかせながら、トウヤは尋ねた。
「これがわたしの本来の姿」
ヨミ王子の膝にのりあげ腕をからめる。
ヨミ王子は目を背けた。
「わたしを見なさい、わたしの声をききなさい」
誰も打ち勝つことができない甘い毒をはらんだ声で、ヨミ王子の視線にまわりこむ。すると王子は笑っていた。
蔑むでもなく、欲望に勝とうとあらがうでもなく、笑っていた。
「……」
「いや、すまない。とても可愛らしく、驚いてしまった」
予想外の反応だったため、一瞬ぽかんとしてしまったが、気を取り直してまたしかけた。
「あの時のように好きにしてよいのです」
「あなたの声はわたしの耳をくすぐる。だが、あの時のようには」
「……」
この姿を見せて欲望で打ち負かして搾精してやれば、凝らしめになるかと思ったが、まったく効いていない。
こんな姿を見せても動じず、むしろ申し訳なさそうなヨミ王子に、トウヤは続け撃つ。
「さあ美味い精をわたしにたんとおくれ」
薄衣の前をはだけさせて王子の胸にすりよった。尾をつかって湯に浸かっている王子の腰の下を刺激しようとするが、その尾はとらえられ口づけされた。そのまま、またもや身体を持ち上げられ今度は湯殿の長椅子に腰かけさせられる。
王子はトウヤの足の甲に口づけした。
「トウヤ殿、どうかわたしの伴侶に」
まったく、何のつもりかと、トウヤは足をひいた。
「先ほどは望みをわたしに尋ねた。わたしは塔に戻るのが望みである」
「塔に返さないのが望みである」
互いの言霊がぶつかりあった衝撃で、壁にひびがはいった。
「私が調査官として塔から派遣されたのは、さらに強靭になること、下界を知ること、昔の後始末をすることが目的である」
「それならばともにゆく。あなたがわたしの番となってくれなければ、孤独で死んでしまう」
「ならばなおさら、今、私を求めなさい」
「そのような浅慮な策略にはのらぬ。あなたが心から求めるものでなければ意味がない」
王子がトウヤから身を離そうとすると、それをビシ、と尾で制する。稲光にうたれたような衝撃に、王子は唇をかみしめた。
打たれた肌が薄赤く筋となって腫れあがる。痛みに顔をしかめる様子をトウヤは笑った。
王子は困った顔になって、トウヤの両手をとった。逃げようにも自分で祝福を与えてしまっているので逃げられない。
「どうか伴侶に」
逃げられないのをいいことに、指、手の甲、と口づけをされる。腕をどんどんあがってきて、とがった耳、こめかみ、額、まぶたと、まるで呪いをかけるような周到さでトウヤの身体を巡っていく。
唇は熱く、とろとろとした火で炙られるかのように、全身をたどられる。
それがつらく、耳をつんざくような断末魔じみた悲鳴をあげた。
「どこか痛めているのか」
そういうことではない、この醜い声をきいたなら、おそろしいと離れるべきなのだ。
トウヤは再び尾で王子を打った。痛みを感じるはずが、王子はひるまなかった。額が裂けて血が流れた。
王子の手を後ろにまわす。そのまま衣をぬがして、腕を封じた。
「たかだか一国の王子ふぜいが、わたしを伴侶にしたいなど、わきまえよ」
浴場の床に転がすと、股をまさぐって、両手でなでさする。とても大きく、思わず喉が鳴る。特別な息をふきかけ、特別な唾液を垂らせば、さらに大きく固くなった。
またがって腰を振れば、その不本意さに歯噛みし、にらみつけてくる。
「上手に勃たせることができてよい子だ。とても具合がよい」
しかしそこからが長かった。どれだけ腰をふっても弱音一つは吐かない。吐く息ひとつでどんな堅物も昏倒させるほどの力をもつ自分が、なぜ屈服させられないのかわからない。
火吐山では睦言をつぶやきあいながら、何度もお互い果てたというのに。
その時の悦びが脳裏をよぎり、身体がそれを欲しそうになった。まずいと思ったトウヤはいったんヨミ王子から離れようとした。
「もうよいのか?」
腕のひとふりで拘束は簡単にはずれ、王子はトウヤの腕をつかんだ。
新鮮な湯がじんわりと身体をあたためる。さっぱりと心地よく身体がゆるみだす。湯を手にすくい、顔や肩、喉元に浴びせかけた。
そうするうちにトウヤの手の黒ずみはどんどん広がってゆき、全身が闇のように黒くなっていく。
肩で切りそろえられた銀髪が金色になり、するすると伸びてうねる。かぼそい手足、しなる長い尾、漆黒の艶肌をもつ淫魔となった。
銀髪で色白のたおやかな青年の姿は消え、蠱惑的な肢体とギラギラと挑発的な瞳をもつ別の生き物となる。
赤い舌をちらつかせながら、トウヤは尋ねた。
「これがわたしの本来の姿」
ヨミ王子の膝にのりあげ腕をからめる。
ヨミ王子は目を背けた。
「わたしを見なさい、わたしの声をききなさい」
誰も打ち勝つことができない甘い毒をはらんだ声で、ヨミ王子の視線にまわりこむ。すると王子は笑っていた。
蔑むでもなく、欲望に勝とうとあらがうでもなく、笑っていた。
「……」
「いや、すまない。とても可愛らしく、驚いてしまった」
予想外の反応だったため、一瞬ぽかんとしてしまったが、気を取り直してまたしかけた。
「あの時のように好きにしてよいのです」
「あなたの声はわたしの耳をくすぐる。だが、あの時のようには」
「……」
この姿を見せて欲望で打ち負かして搾精してやれば、凝らしめになるかと思ったが、まったく効いていない。
こんな姿を見せても動じず、むしろ申し訳なさそうなヨミ王子に、トウヤは続け撃つ。
「さあ美味い精をわたしにたんとおくれ」
薄衣の前をはだけさせて王子の胸にすりよった。尾をつかって湯に浸かっている王子の腰の下を刺激しようとするが、その尾はとらえられ口づけされた。そのまま、またもや身体を持ち上げられ今度は湯殿の長椅子に腰かけさせられる。
王子はトウヤの足の甲に口づけした。
「トウヤ殿、どうかわたしの伴侶に」
まったく、何のつもりかと、トウヤは足をひいた。
「先ほどは望みをわたしに尋ねた。わたしは塔に戻るのが望みである」
「塔に返さないのが望みである」
互いの言霊がぶつかりあった衝撃で、壁にひびがはいった。
「私が調査官として塔から派遣されたのは、さらに強靭になること、下界を知ること、昔の後始末をすることが目的である」
「それならばともにゆく。あなたがわたしの番となってくれなければ、孤独で死んでしまう」
「ならばなおさら、今、私を求めなさい」
「そのような浅慮な策略にはのらぬ。あなたが心から求めるものでなければ意味がない」
王子がトウヤから身を離そうとすると、それをビシ、と尾で制する。稲光にうたれたような衝撃に、王子は唇をかみしめた。
打たれた肌が薄赤く筋となって腫れあがる。痛みに顔をしかめる様子をトウヤは笑った。
王子は困った顔になって、トウヤの両手をとった。逃げようにも自分で祝福を与えてしまっているので逃げられない。
「どうか伴侶に」
逃げられないのをいいことに、指、手の甲、と口づけをされる。腕をどんどんあがってきて、とがった耳、こめかみ、額、まぶたと、まるで呪いをかけるような周到さでトウヤの身体を巡っていく。
唇は熱く、とろとろとした火で炙られるかのように、全身をたどられる。
それがつらく、耳をつんざくような断末魔じみた悲鳴をあげた。
「どこか痛めているのか」
そういうことではない、この醜い声をきいたなら、おそろしいと離れるべきなのだ。
トウヤは再び尾で王子を打った。痛みを感じるはずが、王子はひるまなかった。額が裂けて血が流れた。
王子の手を後ろにまわす。そのまま衣をぬがして、腕を封じた。
「たかだか一国の王子ふぜいが、わたしを伴侶にしたいなど、わきまえよ」
浴場の床に転がすと、股をまさぐって、両手でなでさする。とても大きく、思わず喉が鳴る。特別な息をふきかけ、特別な唾液を垂らせば、さらに大きく固くなった。
またがって腰を振れば、その不本意さに歯噛みし、にらみつけてくる。
「上手に勃たせることができてよい子だ。とても具合がよい」
しかしそこからが長かった。どれだけ腰をふっても弱音一つは吐かない。吐く息ひとつでどんな堅物も昏倒させるほどの力をもつ自分が、なぜ屈服させられないのかわからない。
火吐山では睦言をつぶやきあいながら、何度もお互い果てたというのに。
その時の悦びが脳裏をよぎり、身体がそれを欲しそうになった。まずいと思ったトウヤはいったんヨミ王子から離れようとした。
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