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8、失恋と旅行
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流助はいったい自分の身に何が進行しているのかわからぬまま、家を出た。このままでは何か恐ろしいことが起こる気がして、衝動的に飛びだした。被差別Ωを支援する団体を公的機関で紹介され、そこに身をよせ、子どもを産んだ。
鳥飼は、流助の話を聞きながら、思い出していた。
絶対とされる「運命の番」が、まれにだが「はずれる」ことがある。
それは、「運命の番」以外の子を、Ωが孕んだ時だ。
通常、Ωは運命の番の子しか宿さない。身体が拒絶するのだ。
しかし運命の番と出会う前に胎内にあった鳥飼の精子は、流助の身体から排除されなかった。それがまさかのタイミングで流助を妊娠させた。
鳥飼は混乱しながらもぞっとした。自分の番であるΩが、他のαの子を妊娠するなど。
自分なら気が狂う。
子どもさえいなくなれば、とすぐさま考えるだろう。おそらく流助はその殺気を察知して腹の子を守るために本能的に逃げたのだ。
流助の細い肩を見つめる。薄い身体、とても頼りない。それが、必死に自分の子を守りぬき、今こうして自分の目の前にいる。どれだけ不安だっただろうか。どれだけ怖い思いをし、苦労したのだろうか。
鳥飼は言葉にあらわすことのできない感情に揺さぶられる。
「なんでこんなことになったんだろう。三人での結婚は、俺にはもったいないような幸せで。でもそれを自分からぶっこわした。そうやってたくさんの人を傷つけて選んだ相手だったのに、また逃げ出した。
そしたら俺、どんどんあの人のこと、なんとも思わなくなって。噛み痕も薄くなっていって、最終的に消えたんだ。
今じゃ顔もうまく思い出せない。信じられる? 本当に好きだったのに思いだせないんだ。
俺、二人にひどいことしたから、神様が罰をくだしたんじゃないかって思うんだ。大事なものを奪って忘れさせる罰だ。今じゃ、今じゃすごく好きだったってこともおぼろげにしか思い出せない。どうして好きだったか、なぜこうなったのかわからないんだ」
「流助さん」
「流助」
二人同時に言った。一瞬ゆずりあう。そしてまたしゃべろうとし、また黙った。
「……なに」
流助が、微笑む。こんな悲しそうな顔で笑う子ではなかった。
鳥飼とイオは目で会話し、それから思いのたけを爆発させた。
鳥飼は、流助の話を聞きながら、思い出していた。
絶対とされる「運命の番」が、まれにだが「はずれる」ことがある。
それは、「運命の番」以外の子を、Ωが孕んだ時だ。
通常、Ωは運命の番の子しか宿さない。身体が拒絶するのだ。
しかし運命の番と出会う前に胎内にあった鳥飼の精子は、流助の身体から排除されなかった。それがまさかのタイミングで流助を妊娠させた。
鳥飼は混乱しながらもぞっとした。自分の番であるΩが、他のαの子を妊娠するなど。
自分なら気が狂う。
子どもさえいなくなれば、とすぐさま考えるだろう。おそらく流助はその殺気を察知して腹の子を守るために本能的に逃げたのだ。
流助の細い肩を見つめる。薄い身体、とても頼りない。それが、必死に自分の子を守りぬき、今こうして自分の目の前にいる。どれだけ不安だっただろうか。どれだけ怖い思いをし、苦労したのだろうか。
鳥飼は言葉にあらわすことのできない感情に揺さぶられる。
「なんでこんなことになったんだろう。三人での結婚は、俺にはもったいないような幸せで。でもそれを自分からぶっこわした。そうやってたくさんの人を傷つけて選んだ相手だったのに、また逃げ出した。
そしたら俺、どんどんあの人のこと、なんとも思わなくなって。噛み痕も薄くなっていって、最終的に消えたんだ。
今じゃ顔もうまく思い出せない。信じられる? 本当に好きだったのに思いだせないんだ。
俺、二人にひどいことしたから、神様が罰をくだしたんじゃないかって思うんだ。大事なものを奪って忘れさせる罰だ。今じゃ、今じゃすごく好きだったってこともおぼろげにしか思い出せない。どうして好きだったか、なぜこうなったのかわからないんだ」
「流助さん」
「流助」
二人同時に言った。一瞬ゆずりあう。そしてまたしゃべろうとし、また黙った。
「……なに」
流助が、微笑む。こんな悲しそうな顔で笑う子ではなかった。
鳥飼とイオは目で会話し、それから思いのたけを爆発させた。
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