α、β、Ωで結婚したら無敵だった

月田朋

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8、失恋と旅行

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 イオと流助が同時に言った。鳥飼は慌てて「昔の話ですよ!」と言うけれど、二人の冷たい表情は変わらない。鳥飼のあわてふためく様子にイオは我慢できなくて、ふきだす。それをきっかけに全員が笑った。
 流助は笑いすぎて出た目じりの涙をぬぐいながら、ぽつりと尋ねる。
「……どうして俺にそんなに優しいの」
「それは流のことが好きだから。ぼくらには下心があるんだ」
「どうして、そんな風に、言ってくれるの」
「流助さんを愛しているからです」
「お願い、戻ってきて。ぼくらのところに」
 流助は高速で首をふった。
「無理だ……ダメだよ……ぜったい、そんなこと、ダメだ」
「どうして」
 イオが頬をふくらませる。
「だって、また俺が『運命の番』と出会っちゃったらどうするんだよ。何もかも自信がないんだよ。俺。自分を止められず、また二人を傷つける……そんなの、そんなの耐えられない……」
 イオは流助のおでこをつついた。そしてとても優しい声で言った。
「なんかさあ、ほんと自意識過剰。誠も流助も自分たちがαとΩだからって、特別だと思ってるよね。『運命の番』、とかいって、かっこつけて。二人とも、ぼくが心変わりする可能性なんかは考えないわけ?」
 二人、真っ青になって、イオを見た。
 やれやれ。
 イオは膝の上で大人たちのやりとりを大人しく聞いている子どもを流助に返した。
「バーカ、例えだよ。例え」
 そして流助を子どもごとぎゅっと抱きしめた。
「流、恋したんだね」
 流助は、何か言おうとした。
「そんで失恋したんだ。……すごく悲しかったね」
 何も言わなくていい、と言うように、イオは流助の頭をなで続ける。流助は、ぽろぽろと涙をこぼした。
「失恋なんか、みんないっぱいしてる。それがたまたま流助の場合『運命の番』だったんだ。流助は恋をした。真剣な恋だった。なのにそれがなくなったんだ。つらいに決まってる」
 流助は、うう、と嗚咽をもらした。
「好きだった……好きだった……なのに、もう好きじゃないんだ……どっかいっちゃった。好きだった日も、好きだった俺も、好きだったあの人も……どっか、いっちゃってなくなっちゃった」
「かわいそうに……一人でいっぱいつらかったね」
 鳥飼は慣れない手つきで、嗚咽がとまらない流助から赤ん坊を受け取る。流助はイオにしがみついて泣いた。イオのキラキラは流助の橙とまざる。とても美しい。
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