めいちゃんとかたつむりハウスの雨宿り屋さん

あき伽耶

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【第3話】雨宿り屋さんのおもてなし

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 二巻ふたまきには、赤や緑や黄色といったカラフルなステンドグラスのドアがありました。めいちゃんが開けてみますと、そこは前に田舎のおじいちゃんに連れて行ってもらった喫茶店のような部屋でした。
 お風呂場と同じく、細長くて右に曲がっています。丸い天井には向日葵ひまわりの照明がついていて、橙々だいだい色の長いソファではさっきの青蛙がお茶を飲んでくつろいでいます。その斜め向かいの席では、ツバメが心配そうにテレビのお天気ニュースを見たり、ネズミが窓辺で降り続く雨の様子をうかがったりしています。みんな、雨宿りをしているのです。
 カウンターで忙しく働いていたおばあさんがめいちゃんに気がついてやってきました。手には何かを持っています。

「靴下が乾くまで、これをどうぞ」

 差し出されたのは、ミルク色の柔らかそうな靴下です。透けていてところどころキラリと輝いています。こんな生地、見たことがありません。
 めいちゃんは空いている席について、靴下を履いてみました。肌触りがふわふわでとても気持ちのよい靴下です。雨で冷えた足先はすぐにぬくぬくと温まっていきました。
 おばあさんはめいちゃんに色鮮やかなケーキと光る飲み物を運んできてくれました。ケーキは虹色のスポンジでホイップクリームを包んだロールケーキ。飲み物は水色のソーダ水に大粒のビー玉のようなものが、光りながらゆらゆらと浮かんでいます。まるで青い空と太陽のようです。
 素敵なおもてなしにめいちゃんの目もキラキラと光ります。

「この光っている飲み物、なあに?」

 たずねるめいちゃんに、おばあさんは教えてくれました。

「てるてるドリンクだよ」

 なんて面白い名前でしょう!

「早く雨があがりますようにっていう、お願いドリンクさ」

 虹色ロールケーキを口にすると、じゅわっと甘さが広がって、虹の上をお散歩しているような夢見る気分になりました。てるてるドリンクは口の中では爽やかで、ごくんと飲み込むとお腹の中がほっこり温かくなりました。光っている球は口に入れようとするとゆらゆらと逃げて、やっとのことで舌の上に乗せるとコロコロして、甘酸っぱいレモンキャンディに似ていました。
 そうしている間にも、お客さんが次々にやってきました。蝶や雀やへびが来ました。バッタや鳩やヤモリも来ました。
 おばあさんは大忙し。お風呂場と喫茶店を何回も往復します。お客さんのお迎えに行ったり、荷物を持ってきてあげたり。タオルを持って行ったり、虹色ロールケーキやてるてるドリンクを出したり。そして時々めいちゃんのところに寄っては「おかわりは?」と聞いてくれます。
 いよいよおばあさんが忙しくなって大変そうだったので、めいちゃんはお手伝いをしようと思い立ちました。ときどきおうちのことやふうちゃんのお世話をしてあげるから、お手伝いには少しだけ自信がありました。それにここでじっと座っているだけよりも、雨宿り屋でお手伝いするなんてなんだか楽しそうです。
 お手伝いがしたいと話すと、おばあさんはとても喜びました。

「あらまあ、助かるねえ! それじゃあよろしく頼むよ」
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