恋心ゼロのはずが、幼馴染が本気で溺愛してくる

水守真子

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第五章 幼馴染じゃない 恋人になりたい

⑧ ちょこっと※R18

 コンビニって安心する。
 高級路線のビールと、ちょっと高めの生ハムのおつまみをかごに入れながら、にこにこしてしまう。
 あんなにおいしい食事をいただいたのに、別腹だ。
 気づけばかごの底が見えないほど、お菓子やおつまみが入っている。
 まだ当たった宝くじを換金していないのに、ちょっと欲張りすぎかな。かごの中身とにらめっこしていたら、横で立っていた匠海が言った。

「紬って感じだよね……」
「……ごめん」

 褒められていないことだけはわかる。
 自分なら一生予約しないだろうレストラン、それでも格式が高すぎないお店を選んでくれたのはわかった。
 けれど、ナイフとフォークは外側から。あれ、これであってたっけ。テーブルマナーが頭の中で検索できないんだけど。
 そんな感じで緊張していたら、店を出た瞬間、心の声が言葉に出てしまった。

『コンビニ……』

 匠海に無感情な目で見られた。はっ、と我に返っても遅い。
 考えたことが口に出ちゃうのは、意識してやめた方がいいと自分でもわかるから、本当にこれはごめんなさいをした。 

「ナイフとフォークの練習できる食事を取り入れていくので、なにとぞご勘弁を……」
「いや、俺も和食にすれば良かったと」

 プロポーズの後の食事の反省会を、コンビニのお酒コーナーの前でしているのはなんとも。
 匠海はジンとレモンなんかを入れている。おしゃれな飲み物でもつくるつもりなのだろう。
 ふと、自分の左手の薬指に指輪があるのが視界に入った。言い争いよりも、話で真ん中に持っていける関係が心地いい。ずっと相手の機嫌を取ってきたから。
 へへへ、と思わず笑いを漏らすと、またかわいそうな目で見られる。

「まさか、緊張でおなか壊した? 胃が痛い?」
「そこまではないよ、さすがにそこまでは」

 思わず言い返しつつ、レジで精算をしているとスマホが鳴った。
 金曜日のこんな時間に誰だ、と見てみると美沙からメッセージが届いていた。
 珍しいのと、仕事で何かしてしまったのかと、今日一日の集中力の無さを思い出しながら、緊張しながら開いた。

『ソーダ屋のSNSとか、出た?』

 何で知っているのだ。みんなそんなにSNS見ているの?

「……匠海、会社の先輩から、SNSに出たかって。……さっきの、ソーダ屋さんのって、私が払うって」

 メッセージに気を取られている間に、匠海が清算をしてくれている。

「ああ、うん。後でね」

 まったく払わせる気のない返事と一緒に、匠海はにやりと笑いかしこまる。

「いい感じで、プレビュー数伸びてるみたいですよ、白石さん」
「なんで?」

 さぁ、と首をかしげる匠海にハッとした。動画もしているくらいだから、匠海も発信しているのか。さっきの井上との会話が繋がる。

『横のイケメン、彼氏? てか、この人の動画を時々見るよ。経営の説明わかりやすいし』

 さすが、日商簿記1級を目指してコツコツ勉強している美沙だけあると感心する。自分の頑張らなくてはと思ったが、すぐに今はそれどころではないと考え直した。

「会社の人に彼氏かって聞かれてる。なんて答えれば」

 スマホを掴んだまま焦っていると、匠海が重いコンビニ袋を手に持ったまま、自分に腰を回してきた。

「ちょっ」

 若いレジの店員さんの見ないようにしよう、という焦りが伝わってきてつらい。自動ドアが開く寸前、耳元で言われる。

「婚約者」
「……っ、近い!」

 おなかのあたりが熱くなって、内ももに力が入った。反応してしまう自分が本当に恥ずかしい。
 匠海は腰に手を回してきたまま、髪に口づけしてくる。
 ワイン数杯で酔う人では無いはずだから、これは意図してやっているのだ。人目が本当に恥ずかしくて倒れそうだ。

「だから、外だってば」
「彼氏でもいいけど、友達って送ったら、俺、泣くよ」
「彼氏、って言っていいの、か……」

 なんとなく、違和感があった。すると、じとりと睨まれた。

「それ以外、何ていうんだよ」
「そうだよね、彼氏……」
「へぇ……」

 言いながら、迷うのはおかしいかなとと思ったが、時は既に遅かった。

「やっぱり、わからせないとダメだよね」

 匠海が腰に回している腕に力が籠る。もう学習した。この時の匠海は激しく抱いてくる。
 これは、自分が悪いと思う。ただ、匠海は匠海で、彼氏とか結婚する人ととかは超越してて。

「私にとって匠海は家族で。あの、あのね、匠海、セックスは」

 セックス、という言葉に反応したのか、通りすがりのサラリーマンが振り返った。
 それで解決はしないで、話し合おうと言いたかったのだ。
 とんでもない言葉を道端で口にしてしまった。本当に自分の口をどうにかして欲しい。

「うん、わかった」

 匠海は振り返ったサラリーマンを見ながらうなずいた。胸を撫で下ろしたのも束の間だった。
 けれど、玄関のカギを閉めた途端、意思疎通はできていなかったと思い知る。

「セックスしようか」

 顎を指で持ち上げられ、噛まれると思った瞬間に唇を塞がれていた。壁に押し付けられ、シャツの下から匠海の熱くて大きな手が迷いなく入ってくる。

「あっ」

 下着を押し上げられ、大胆なのに優しく、乳房をぐっと揉まれた。捏ねるように揉みしだかれると、内腿をこすり合わせてしまう。

「あのさ、いい加減、彼氏って言ってくれないかな」
「言ってる、言ってる、けど」

 匠海の手の中で柔らかい塊が、思うがままに形を変えているのが恥ずかしい。手が大きいせいか、自分の胸の大きさがそんなに気にならない。
 匠海の唾液が口腔に流れ込み、息さえも火照っている気がする。
 体温、呼吸、彼がまとう空気のすべてが、心の中を揺さぶってくる。

「た、たく……っ」
「プロポーズしたし、もう俺の紬だからね」

 熱く痺れるお腹の中に、激しい炎のような誘惑が宿った。
 今すぐ、強烈な質量で満たしてほしいと願いながら、匠海のスラックスの上から重くて硬い肉棒に触れる。

「我慢しなくていいってこと?」

 こくりと頷くと、匠海に壁側を向かせられ、タイトスカートを捲し上げられた。
 ストッキングと下着が同時に引き下ろされ、太ももがきゅっと締め付けられた。冷たい外気に晒された濡れたあわいが、ぐっと両端から広げられる。
 これから匠海に抱かれるという歓びが、壁に爪を立てた。

「好き……大好き」

 匠海の動きが止まる。

「……紬?」

「本当に、こんなに人を好きになったのが初めてで」

 腰を、気持ちだけ匠海に突き出した。早く満たして、安心させてほしいとばかりに。

「だから、ごめん」

 振り返って、匠海に言う。涙ぐんでしまったのは、また彼を傷つけてしまったから。

「俺も……」

 匠海の硬く反り返った熱量が一気に滑り込んでくる。

「あああっ」

 その大きさと、みっちり満たされたぬくもりに声が漏れた。

 匠海は蜜に濡れた隘路を突き上げ、襞に肉棒をこすりつけるように、締まるそこを打ち付けてきた。

「好きで、できれば紬を閉じ込めておきたいくらい」
「……っぁ」

 激しく打ち付けながら、匠海が左手の薬指を触れてくる。猛々しい動きに、紬の目は次第にとろんと溶けていく。

「俺の、俺だけの紬。幼馴染でも、何でもいいよ。でも、もう奥さんだから」

 つま先が宙に浮き、匠海に体を支えられる。不安定な姿勢で貫かれているのに、彼に支えられていることが何よりも安心だった。
 熱に溶かされる身体ごと、彼に抱き留められる心地よさに、声も呼吸もすべて委ねた。
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