Trip in the world ~性転換って、嘘だろ!?~

天海望月

文字の大きさ
18 / 26
1章

聖なる森と邪悪な死神

しおりを挟む
「おはよう、ルー姉」
「おはよう」
 あの日以来、フォルは俺のことを『ルー姉』と呼び始めた。笑顔も増えたね。
 いつも身に纏っていた重い空気も、心なしか晴れた気がする。
 話をしたから、すっきりしたのだろうか。
「ルー姉」
「うん?」
「おはよ」
「分かったから」
 くっ…可愛い奴め。寝起きで寝癖が凄いし。
 っていうかフォルの髪ってサラッサラなんだよね。触ってて気持ちいい。
 あー、眠い。一日中寝ていたいなぁ…



「「聖なる森に行きたい?」」
 ジンさんとフレイヤさんの声が被る。
 現在時刻は大体九時くらい。朝食を終え、街が活気付いて来た頃だ。
「ええっと、何故いきなり?あの事件以来、調査も続いているでしょうし」
「んー…?なんとなくです」
「なんとなくとはまた…」
 書類とにらめっこしながらジンさんが答える。
「僕の第六感が、何かあると囁いています!ただそれだけ、です」
「第六感がなんなのかは知らないけど、何故だか私もそんな気がするんだ。私の勘は伊達じゃないよ」
 ほら!フォルもそう言ってる!
「…好きにするといい。最近は何かと気になる噂が絶えないが、二人の実力なら問題はないだろう」
 ん?気になる噂?
「そのぉ…気になる噂って…」
「あー、あれですかね?怪しい少女ってやつ」
「そうだ」
 ほう…その話、詳しく!
「ルー姉、目がキラキラしてるよ」
「へぇっ!?」
「ふふふっ。それで、その怪しい少女についてなんだけど、とにかく怪しいの」
 とにかく怪しい?
「全身を黒いローブで包んでいて、髪の毛、さらには肌まで真っ白だとか!」
「ああ。それで恐れを込め、付けられた異名が…」
「異名が?」
「…『死神』だ」



 意外と早く着いたもんだ、森に。
 フォルは魔法の使い方が上手いのか、加速魔法の効果がもう目に見えるようだったね。
「それで…やってきたわけなんだけど…」
「ルー姉…一体、ここは…」
「「どこ!?」」
 やべぇ、完全に迷った。迷子だよ迷子。ここが聖なる森なのかも分からんし。
 このままじゃ悪い山賊君に襲われちゃうね!
 なんて考えてみれば…
「へっへっへ…嬢ちゃん二人だけかよ…」
「こりゃいい獲物だぜ…」
「やっちゃいますか?」
「やっちゃいましょうよぉ!」
 小物感満載な山賊たちがやってきた。うっわぁ、山賊のイメージ壊れる。なんかもっと毛皮の服着てるってイメージあったけど、すごく機能的そうな服きてんじゃんか。
「へへっ、嬢ちゃんよぉ、痛い目にあいたくなきゃ大人しくするんだな」
 台詞はイメージそのままでしたけどね。
 さて、どうしようか。こっちには魔法という暴力があるけど、惨殺してしまえば大事件発生だろうし…
「ルー姉、無茶できないよ」
「…分かってる」
 さあ、どうしようか。
 俺がそう悩んでいた時、
「ぎゃあ!」
 一人の山賊が倒れた。
「は?」
 一人の山賊が間抜けな声を上げた。
「ぐわーっ!」
 また一人の山賊が倒れた。
「え?一体何が?」
 意味が分からない。何故倒れるの?
「!!…お、お前は…!」
「…『死神』ぃ!」
「逃げろ逃げろ!退却だ!」
 山賊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「はっ?え?ええぇ?」
「ルー姉、これは…」
 そしてその瞬間、
「…わぁ!」
「うわぁ!?」
 だ、誰だ君は!一体どこから!人が降りてきた!
「やったぁ、びっくりした?」
「え、ええ、うん、かなり」
 そこにいたのは、黒いローブを纏い、黒いフードを被り、さらに雪のように真っ白な髪、青空のように青い瞳。そして、特徴的なのが、真っ白な、――色が混ざらず、無垢で白い――肌。
 なんてこったい。彼女が噂の…
 『死神』。
「これは驚いた…彼女、亜人だ」
「え?本当に?」
「ああ、しかも、『死神族』。多分ルー姉よりも珍しい種族だよ」
 わぁ。この大陸にも、まだ亜人はいたのか!?
「ふっふーん。すごいでしょ、私。あ、ちなみに私はアウレイレっていうんだ。面倒だからレイでいいよ」
 勝手に名乗りおった。この娘、意外とアホの子?
「あー、じゃあえっと、僕はルナ。亜人です」
「やっぱり?ふふん、同類だね!」
 そーですね。
「私はフォル。君は私に似ているな」
 うん。まるで姉妹のようだ。違いといえば肌の色、髪の毛の長さくらいかな。レイはショートカットなんだよね。
「あー、帰りどうしよう」
「どしたの?」
「いやー、道に迷っちゃって。デイライトの街まで帰りたいんだけど。どうしようかなぁ…」
「帰りたいの?」
「うん」
 もうここがどこなのかすら分からないからね。
「ふうん…それなら…」
「それなら?」
「…ほいっと」
「っ!おお!」
「これは…すごいな…」
 いきなり目の前に丸い影が現れた。その影の中心には、いつも見慣れたあの街の風景が見える。ポータルみたいだな。
「これに突っ込めば帰れるよ」
「おおっ、すごい、これは!」
「もっと褒めて!えへへー」
 …ちょろい。お持ち帰りしよ。
 こうして、また騒がしくなる原因を持ち帰り、ジンさんに呆れられたのは、また別のお話。
 …実はこの娘、後でとんでもない娘だって分かったんだけどね。また保護という名目で家の屋敷に住むことになりました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...