22 / 26
1章
1章おまけ フォルにとっての非日常
しおりを挟む
「ねぇレイ」
「何さフォル」
「この空間は何?」
「あー…、この真っ白な砂漠のこと?」
「そう。…おや、レイ、これを見てみて」
「これって?…うわっ!凄い!私たちが何か喋ると!」
「砂漠に文字が刻まれるね」
「楽しいねこれ!うおぉぉぉぉぉぉい!ひゃっふぅぅぅっ!」
「やめようか」
「ごめんなさ…イタッ!叩くことは無いでしょ!」
「叩いておかないと終わりそうになかった」
「もう終わってたよ…」
「それより、ほら、あんなところに紙が置いてあるよ」
「ほ…?どれどれ」
改めてこんにちは!作者の夜空のスイカでございます。
この2人の茶番はあれです、やってみたかったんです、許してください。
さてさて、やっと1章が終了しましたね!気力とか色々あって完結まで長かった!モチベーション大切!
いやぁ、リアはどうなっちゃうんでしょうね?人間なら高高度から叩きつけられたらおしまいですが、竜の亜人なら…?
まぁ、この後の展開は私と未来人のみ知ります!お楽しみに!未来人の皆さん、くだらない話だったらごめんなさい!
ではでは、1章の締めくくりとして、お話をご用意しました。見納めください。
あ。そこの2人、アイキャッチみたいなの、よろしくね。
「何これ」
「私たちまで巻き込んでまでやることかい?これ」
「多分違う」
「そうだよね」
「…あれ?なんか泣いてるような声が聞こえるよ?」
「多分それは作者のだ。これ以上やるとそいつのメンタルが持たないから、そろそろやるよ」
「はーい」
「おまけ、始まります」
「ピロリーンッ!シュウッ!」
「レイ、それはどこのネタだい」
「機動戦士」
ここはデイライト家の屋敷。そして、今は朝。
ジンとルナ、そしてその他多数は、仕事があり出掛けていた。
そしてここは屋敷のフォルとレイの部屋。
彼女らは、最愛の人――ルナがいないことによって、文字通り死ぬほど暇していた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ…。うへぇぇぇぇぇぇ」
「…レイ、語彙力が溶けてるよ…」
「だあってぇぇぇぇぇ、ルナちゃんがぁぁぁぁぁ、いないんだもぉぉぉぉん」
「うるさいな」
フォルが手を振りあげ、レイにそれを叩きつける。
「いだっ」
「ルー姉がいないだけで溶けてたら、この先生きていけないよ」
「えっ、その言い様、もしかしてルナちゃん死んじゃうの?」
フォルは腕を振りあげ、レイに鋼の拳を贈呈した。
「いったぁぁぁっ!ちょっと、何するのさ!」
これには流石のレイも怒る。
…元はと言えば、彼女の方に責任があるのだが。
「あぁー、暇だ。レイとかいう奴のおかげでもっと暇になった」
「えっそれひどい」
「ってことでちょっと散歩してくるね」
そういってフォルは立ち上がり、ドアへと向かう。
「ちょっと待って私はどうなるの!?」
理不尽な結果を避けるために、レイは立ち上がってフォルを制止しようとする。
「そうだね…」
フォルは少し考え、
「君のご自慢の能力で会いに行けば良いんじゃない?」
「あ、そっか」
フォルは部屋から出ていき、レイは能力によって消えた。
ちなみにその後、レイはルナにこっぴどく怒られたというが、それはまた別の話である。
「全く…、広いな、この屋敷は」
無意識に、彼女は屋敷に対して不満を漏らす。
以前住んでいた場所は、四人で住むには少し狭い場所であった。
いや、かなり、だろうか。その部屋は普通一人で住むような場所であったのだが、彼女らはそこで押し込められるように生活していた。
今は亡き姉妹達と過ごせたので、あまり気にはしなかったが。
しかしそれでも、この屋敷はあまりにも広すぎた。彼女にとって、ここは迷宮のようなものである。
使用人たちが見当たらない屋敷の廊下を、フォルは部屋を流し見るようにして歩く。
「おや」
彼女は何かに気付く。
「厨房…?へえ、面白そう」
そしてその厨房に、遠慮せずに侵入した。
今は朝食を作り終え、かなりたった時間。今いるのは、昼食に向け、仕込みをしている者だけだ。
フォルに気付いたものが、こちらに近づく。
「おや、フォルちゃん、どうしたのかな?今は仕込み中だよ」
「私はそこまで子供ではないはずだけど」
話しかけてきたのは料理長であった。
彼は料理長の名に恥じぬほどの腕前で、人情にも厚い。性格や人当たりも良く、まさに人間の鏡である。
しかし、彼はフォルを子供のように扱う。
いや、それが普通なのだろう。フォルは見た目だけならば子供である。
精神年齢はその例には収まらないのだが。
「まぁいいか…。――おや」
フォルは紙を手に取った。
どうやらそれには、レシピが書いてあるようだった。
「料理長。これは?」
彼女はレシピを料理長に見せる。
「これ?どれどれ…、あっ」
「料理長?」
彼は眉をひそめ、困ったように話し始める。
「このレシピ、ルナ様が書いたんだ。『ぷりん』って言うんだけどね…」
「ルー姉が?へぇ」
ルナが書いたものとなれば、途端に興味が湧いてくる。フォルは話の続きを促す。
「レシピを書いてもらったとき、一緒にこの『ぷりん』も作ってもらったんだ。でも…」
料理長は少し言葉に詰まり、
「何かが違う気がするんだよ」
ため息をついた。
「何かが…違う?どういうことだい?」
「何というか…何かが足りないのかな?作り方は面白いんだけど、味が薄いというか…」
そう言いつつ、彼は仕込みを続ける。
「料理か…。私は料理は苦手だし、このことにはあまり口出しはしないでおくよ」
フォルは厨房の出口に向かう。
「あっ、そうだ。料理長」
突然彼女は踵を返す。
「またいつか、昨日の『あれ』を出して欲しいね」
料理長は嬉しそうに言葉を返す。
「『あれ』かい!嬉しいなぁ、また出すよ!」
フォルはその言葉にうなずき、そして、
「多分『ぷりん』よりもいいものだろうからね」
「私はこの屋敷のことを知らないものだな…」
フォルは廊下にいた。しかし、その廊下に見覚えは無く、ここがどこかも分からない。
つまり言うと。
「迷った…」
厨房を出た後、彼女は意味も無く廊下を渡り歩いていた。しかし、その行動が仇となったか、自分の現在地が分からない。
フォルよ、君は方向音痴かい?彼女は自問自答した。
「――どうするか」
まさか屋敷で迷子になり、そして行き倒れる訳にはいかない。それは恥というレベルでは無くなる。
とりあえず、フォルは近くの部屋に入ることにした。
そこは恐らく書庫であった。
本棚が無数にあり、読書用なのか、大きめの机と椅子が部屋の中央に鎮座していた。
日当たりは丁度よく、読書の邪魔にならない程度の光が入って来ていた。
そして部屋にはメイドが一人。
彼女は桃色の髪をし、青い目をしていた。
「あの人は…確か、フレイヤ?」
フォルには少なからず見覚えがあった。
記憶を辿れば、彼女は色々な所にいた気がする。
掃除をしていたり、洗濯をしていたりと、様々な場面で目撃している。
言わば彼女は『雑用係』のようなものだろう。
「――あれ、本の並びが変わってる…?誰か読んだのかな」
彼女は今、本の整理をしている所だった。
「ねぇ、フレイヤ」
「んぇ?…わわっ!フォルちゃん?」
フォルが背後から不意打ちを掛けると、フレイヤは文字通り飛び跳ねるほど驚いた。
「びっくりしたーっ…!もぉー!ドキドキしちゃったよぉ!」
「ふふっ、悪いね」
この反応…どことなくルナと似ているような…?フォルはそう思い、さらに世界はまだ広いとも思った。
フォルが尋ねる。
「実は私、道に迷ったんだ。エントランス辺りでいいから、道を教えてくれないかい?」
「道?ありゃ、フォルちゃんもまだ子供だねぇー」
「私は子供じゃ…」
またも子供扱いされ、フォルはため息を吐いた。
「あ、それより道だね?ごめんね、えっと、まず部屋を出て――」
「見覚えがある廊下…やっと着いたのか」
フォルが歩き続けて数分。やっとよく見る廊下が出てきた。
数分も歩かなければならないのだから、いかにこの屋敷が広いかが分かるだろう。
そしてもうしばらくフォルが歩いていると、エントランス、そして――
黒装束の人間が複数見えた。
「っ!」
フォルは驚きのあまり息を詰まらせる。
数は三名。その黒装束は、目元以外を黒い布で覆い、時間が時間なら闇に溶け込んでしまうような恰好だ。
さらに、領主と多くの使用人が外出しているときに侵入したのだから、何か計画性があるように思える。
泥棒だろうか?
「君たち…、何を…?」
どう見ても怪しすぎて、逆に反応に困ってしまう。
すると黒装束達は近づいてくる。
「怪我はさせるな」
「あいよ」「了解」
この会話の様子だと、彼らは穏便に済ませる様子は無いようだ。
フォルは身構える。
すると、黒装束達はにやりと笑った…ように見えた。
「『拘束』」
「なっ!?…むぐっ!」
黒装束の一人が魔法を詠唱し、魔法を発動した。
その魔法が発動した瞬間、どこからともなく半透明の縄のようなものが具現する。
その縄はフォルをあっという間に後ろ手にきつく巻き上げ、足の拘束、猿ぐつわまで施した。
「一応やっとくかね…『魔力減衰』」
「むぁっ…」
「おいおい…子供相手にやりすぎだろう?」
黒装束がフォルにまた魔法を掛けると、今度は体が重くなる。どうやら体の中の魔力が失せたようだ。
しかし、また子ども扱いされてしまった。もはや言い返せないので、睨んでおく。
「何があるか分からない。この判断は間違いでは無い。さて、行くぞ」
「このガキはどうするんすか?」
「見つかるとまずい。担いでいけ」
「あいよ」
そう指示が下ると、フォルは軽々と持ち上げられる。
「ふぉろふぇ…っ」
降ろせ。そう言ったつもりだが、猿ぐつわのせいで上手く話せない。
せめてもの抵抗で腕の中でもがくが、黒装束は動じない。
そのまま、フォルは連れて行かれてしまうのだった。
やはり、黒装束達の目的は窃盗だったようだ。
やけに手馴れた動きで棚などを物色し、足音を立てずに歩いていく。道中誰にも見つかることは無かった。
そして黒装束達は、ある部屋の前にたどり着く。
「っ!」
そこは、ルナの部屋であった。自分達の部屋と隣接し、何かあれば、――無くとも遊びにいく、あの部屋に。
「やふぇお!やふぇてくえ!…ぐぁっ!」
何とか懇願するが、黒装束は無視する。それどころか、魔法でフォルの魔力を操作さえしてくる。
そして、黒装束達が部屋へと侵入する瞬間――
「あーっ、思いっきり怒られちゃったよぉ…」
「!――身を潜めろ…!」
聞きなれた声が聞こえてきた。
黒装束達は即座に物陰へ隠れる。
「はぁー…、ん、あれ?何でルナちゃんの部屋のドア開いてんの?フォルーっ、いるのー?」
「んっ…あぐっ…」
助けを求めたいが、黒装束によって魔力を弄られ、思うように声すら出せない。
「あるぇ?おかしいな…――『足跡探索』」
「はっ…」
「…戦闘準備をしておけ」
その詠唱が聞こえた瞬間、黒装束達の顔つきが変わった…ように見えた。
「…誰」
彼女の声が、一気に冷たさを増す。
「…ばれたのか、クソッ」
「ダイヤさぁーん?」
『…起動』
「――私に、魔力を与えて。できるだけ強く」
『了解。最大出力で付与します』
あの魔法石がそう告げた後、その場には、
――激しい魔力と風が吹き荒れた。
「うおぁっ!?」
「なんだこの威力は…!?」
「ぐっ…」
黒装束達は苦しみ、フォルへの魔力操作も止んだ。
そしてこの気迫から、彼女が迫ってきていることが分かる。
「死ねぇ!」
急に一人が飛び出す。奇襲を狙ったのだろう。
だが驚かされるのは、黒装束達の方だった。
「『衝撃波』」
「がぁっ…」
黒装束が宙を舞った。重い音を立て地面に落ちる。
仲間達は、もはや絶句するしかなかった。
彼女が、歩みを進める。
彼女が、歩みを進める。
彼女が――
死神が、歩みを進める。
「…」
死神は黒装束を冷たく見下ろし、そして鎌を振り上げ――
「レイ!」
「――っ」
フォルがそれを止めた。たった一言で。
「やっと外れた…。ねぇ、レイ?殺す必要はないでしょ?」
「…ダケ…ド…、コロ…サナ…キャ」
「君は、そういう所がダメだ。こいつらなんて――」
そういってフォルは何かを呟き、そして彼らを昏倒させた。
「これで充分だ。おやすみ、『休息』」
レイが倒れた。
「そんなことがあったの!?」
「そうだよ、ルーね…」
「そうなのっ!いやー、フォルちゃんが止めてくれなきゃ、どうなってたかなっ!?」
ルナへの言葉を、レイに綺麗にさえぎられる。
今は夕方。外出していた者も帰ってきている。
「――とりあえず、奴らは確保した。今は多分、収容所へ送られている頃だろう」
「あ、ジンさん」
そう言うのは、この屋敷の持ち主であり、領主でもある、ジン・デイライト。
「奴らは相当な悪党でな。出来るだけ身分の高い者の住宅に侵入し、金品を盗む。しかも、相当な計画性がある」
「それを、二人は捕まえたんですね」
「そうだ」
そういうと、ルナは二人を輝いた目で見る。フォルは少し、本当に少しだが、照れくさく感じる。
レイは…いつも通りのようだった。
「とりあえず、助かった、二人とも。感謝する」
そういうとジンは、頭を垂れた。
それに釣られたのか、ルナも礼をする。
その姿を見て、フォルは少し面白くなる。
レイは…今にも吹き出しそうだ。
「ふふっ」
やはり、ルナは何か魅力があるようだ。
「――あぁ、可愛い」
「…ん、何か言った?」
「いや、何も言ってないよ。それより、今度私にも『ぷりん』ってのを食べさせてほしいね」
「おっ、本当?いいよいいよ、作ってあげる!」
「何さフォル」
「この空間は何?」
「あー…、この真っ白な砂漠のこと?」
「そう。…おや、レイ、これを見てみて」
「これって?…うわっ!凄い!私たちが何か喋ると!」
「砂漠に文字が刻まれるね」
「楽しいねこれ!うおぉぉぉぉぉぉい!ひゃっふぅぅぅっ!」
「やめようか」
「ごめんなさ…イタッ!叩くことは無いでしょ!」
「叩いておかないと終わりそうになかった」
「もう終わってたよ…」
「それより、ほら、あんなところに紙が置いてあるよ」
「ほ…?どれどれ」
改めてこんにちは!作者の夜空のスイカでございます。
この2人の茶番はあれです、やってみたかったんです、許してください。
さてさて、やっと1章が終了しましたね!気力とか色々あって完結まで長かった!モチベーション大切!
いやぁ、リアはどうなっちゃうんでしょうね?人間なら高高度から叩きつけられたらおしまいですが、竜の亜人なら…?
まぁ、この後の展開は私と未来人のみ知ります!お楽しみに!未来人の皆さん、くだらない話だったらごめんなさい!
ではでは、1章の締めくくりとして、お話をご用意しました。見納めください。
あ。そこの2人、アイキャッチみたいなの、よろしくね。
「何これ」
「私たちまで巻き込んでまでやることかい?これ」
「多分違う」
「そうだよね」
「…あれ?なんか泣いてるような声が聞こえるよ?」
「多分それは作者のだ。これ以上やるとそいつのメンタルが持たないから、そろそろやるよ」
「はーい」
「おまけ、始まります」
「ピロリーンッ!シュウッ!」
「レイ、それはどこのネタだい」
「機動戦士」
ここはデイライト家の屋敷。そして、今は朝。
ジンとルナ、そしてその他多数は、仕事があり出掛けていた。
そしてここは屋敷のフォルとレイの部屋。
彼女らは、最愛の人――ルナがいないことによって、文字通り死ぬほど暇していた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ…。うへぇぇぇぇぇぇ」
「…レイ、語彙力が溶けてるよ…」
「だあってぇぇぇぇぇ、ルナちゃんがぁぁぁぁぁ、いないんだもぉぉぉぉん」
「うるさいな」
フォルが手を振りあげ、レイにそれを叩きつける。
「いだっ」
「ルー姉がいないだけで溶けてたら、この先生きていけないよ」
「えっ、その言い様、もしかしてルナちゃん死んじゃうの?」
フォルは腕を振りあげ、レイに鋼の拳を贈呈した。
「いったぁぁぁっ!ちょっと、何するのさ!」
これには流石のレイも怒る。
…元はと言えば、彼女の方に責任があるのだが。
「あぁー、暇だ。レイとかいう奴のおかげでもっと暇になった」
「えっそれひどい」
「ってことでちょっと散歩してくるね」
そういってフォルは立ち上がり、ドアへと向かう。
「ちょっと待って私はどうなるの!?」
理不尽な結果を避けるために、レイは立ち上がってフォルを制止しようとする。
「そうだね…」
フォルは少し考え、
「君のご自慢の能力で会いに行けば良いんじゃない?」
「あ、そっか」
フォルは部屋から出ていき、レイは能力によって消えた。
ちなみにその後、レイはルナにこっぴどく怒られたというが、それはまた別の話である。
「全く…、広いな、この屋敷は」
無意識に、彼女は屋敷に対して不満を漏らす。
以前住んでいた場所は、四人で住むには少し狭い場所であった。
いや、かなり、だろうか。その部屋は普通一人で住むような場所であったのだが、彼女らはそこで押し込められるように生活していた。
今は亡き姉妹達と過ごせたので、あまり気にはしなかったが。
しかしそれでも、この屋敷はあまりにも広すぎた。彼女にとって、ここは迷宮のようなものである。
使用人たちが見当たらない屋敷の廊下を、フォルは部屋を流し見るようにして歩く。
「おや」
彼女は何かに気付く。
「厨房…?へえ、面白そう」
そしてその厨房に、遠慮せずに侵入した。
今は朝食を作り終え、かなりたった時間。今いるのは、昼食に向け、仕込みをしている者だけだ。
フォルに気付いたものが、こちらに近づく。
「おや、フォルちゃん、どうしたのかな?今は仕込み中だよ」
「私はそこまで子供ではないはずだけど」
話しかけてきたのは料理長であった。
彼は料理長の名に恥じぬほどの腕前で、人情にも厚い。性格や人当たりも良く、まさに人間の鏡である。
しかし、彼はフォルを子供のように扱う。
いや、それが普通なのだろう。フォルは見た目だけならば子供である。
精神年齢はその例には収まらないのだが。
「まぁいいか…。――おや」
フォルは紙を手に取った。
どうやらそれには、レシピが書いてあるようだった。
「料理長。これは?」
彼女はレシピを料理長に見せる。
「これ?どれどれ…、あっ」
「料理長?」
彼は眉をひそめ、困ったように話し始める。
「このレシピ、ルナ様が書いたんだ。『ぷりん』って言うんだけどね…」
「ルー姉が?へぇ」
ルナが書いたものとなれば、途端に興味が湧いてくる。フォルは話の続きを促す。
「レシピを書いてもらったとき、一緒にこの『ぷりん』も作ってもらったんだ。でも…」
料理長は少し言葉に詰まり、
「何かが違う気がするんだよ」
ため息をついた。
「何かが…違う?どういうことだい?」
「何というか…何かが足りないのかな?作り方は面白いんだけど、味が薄いというか…」
そう言いつつ、彼は仕込みを続ける。
「料理か…。私は料理は苦手だし、このことにはあまり口出しはしないでおくよ」
フォルは厨房の出口に向かう。
「あっ、そうだ。料理長」
突然彼女は踵を返す。
「またいつか、昨日の『あれ』を出して欲しいね」
料理長は嬉しそうに言葉を返す。
「『あれ』かい!嬉しいなぁ、また出すよ!」
フォルはその言葉にうなずき、そして、
「多分『ぷりん』よりもいいものだろうからね」
「私はこの屋敷のことを知らないものだな…」
フォルは廊下にいた。しかし、その廊下に見覚えは無く、ここがどこかも分からない。
つまり言うと。
「迷った…」
厨房を出た後、彼女は意味も無く廊下を渡り歩いていた。しかし、その行動が仇となったか、自分の現在地が分からない。
フォルよ、君は方向音痴かい?彼女は自問自答した。
「――どうするか」
まさか屋敷で迷子になり、そして行き倒れる訳にはいかない。それは恥というレベルでは無くなる。
とりあえず、フォルは近くの部屋に入ることにした。
そこは恐らく書庫であった。
本棚が無数にあり、読書用なのか、大きめの机と椅子が部屋の中央に鎮座していた。
日当たりは丁度よく、読書の邪魔にならない程度の光が入って来ていた。
そして部屋にはメイドが一人。
彼女は桃色の髪をし、青い目をしていた。
「あの人は…確か、フレイヤ?」
フォルには少なからず見覚えがあった。
記憶を辿れば、彼女は色々な所にいた気がする。
掃除をしていたり、洗濯をしていたりと、様々な場面で目撃している。
言わば彼女は『雑用係』のようなものだろう。
「――あれ、本の並びが変わってる…?誰か読んだのかな」
彼女は今、本の整理をしている所だった。
「ねぇ、フレイヤ」
「んぇ?…わわっ!フォルちゃん?」
フォルが背後から不意打ちを掛けると、フレイヤは文字通り飛び跳ねるほど驚いた。
「びっくりしたーっ…!もぉー!ドキドキしちゃったよぉ!」
「ふふっ、悪いね」
この反応…どことなくルナと似ているような…?フォルはそう思い、さらに世界はまだ広いとも思った。
フォルが尋ねる。
「実は私、道に迷ったんだ。エントランス辺りでいいから、道を教えてくれないかい?」
「道?ありゃ、フォルちゃんもまだ子供だねぇー」
「私は子供じゃ…」
またも子供扱いされ、フォルはため息を吐いた。
「あ、それより道だね?ごめんね、えっと、まず部屋を出て――」
「見覚えがある廊下…やっと着いたのか」
フォルが歩き続けて数分。やっとよく見る廊下が出てきた。
数分も歩かなければならないのだから、いかにこの屋敷が広いかが分かるだろう。
そしてもうしばらくフォルが歩いていると、エントランス、そして――
黒装束の人間が複数見えた。
「っ!」
フォルは驚きのあまり息を詰まらせる。
数は三名。その黒装束は、目元以外を黒い布で覆い、時間が時間なら闇に溶け込んでしまうような恰好だ。
さらに、領主と多くの使用人が外出しているときに侵入したのだから、何か計画性があるように思える。
泥棒だろうか?
「君たち…、何を…?」
どう見ても怪しすぎて、逆に反応に困ってしまう。
すると黒装束達は近づいてくる。
「怪我はさせるな」
「あいよ」「了解」
この会話の様子だと、彼らは穏便に済ませる様子は無いようだ。
フォルは身構える。
すると、黒装束達はにやりと笑った…ように見えた。
「『拘束』」
「なっ!?…むぐっ!」
黒装束の一人が魔法を詠唱し、魔法を発動した。
その魔法が発動した瞬間、どこからともなく半透明の縄のようなものが具現する。
その縄はフォルをあっという間に後ろ手にきつく巻き上げ、足の拘束、猿ぐつわまで施した。
「一応やっとくかね…『魔力減衰』」
「むぁっ…」
「おいおい…子供相手にやりすぎだろう?」
黒装束がフォルにまた魔法を掛けると、今度は体が重くなる。どうやら体の中の魔力が失せたようだ。
しかし、また子ども扱いされてしまった。もはや言い返せないので、睨んでおく。
「何があるか分からない。この判断は間違いでは無い。さて、行くぞ」
「このガキはどうするんすか?」
「見つかるとまずい。担いでいけ」
「あいよ」
そう指示が下ると、フォルは軽々と持ち上げられる。
「ふぉろふぇ…っ」
降ろせ。そう言ったつもりだが、猿ぐつわのせいで上手く話せない。
せめてもの抵抗で腕の中でもがくが、黒装束は動じない。
そのまま、フォルは連れて行かれてしまうのだった。
やはり、黒装束達の目的は窃盗だったようだ。
やけに手馴れた動きで棚などを物色し、足音を立てずに歩いていく。道中誰にも見つかることは無かった。
そして黒装束達は、ある部屋の前にたどり着く。
「っ!」
そこは、ルナの部屋であった。自分達の部屋と隣接し、何かあれば、――無くとも遊びにいく、あの部屋に。
「やふぇお!やふぇてくえ!…ぐぁっ!」
何とか懇願するが、黒装束は無視する。それどころか、魔法でフォルの魔力を操作さえしてくる。
そして、黒装束達が部屋へと侵入する瞬間――
「あーっ、思いっきり怒られちゃったよぉ…」
「!――身を潜めろ…!」
聞きなれた声が聞こえてきた。
黒装束達は即座に物陰へ隠れる。
「はぁー…、ん、あれ?何でルナちゃんの部屋のドア開いてんの?フォルーっ、いるのー?」
「んっ…あぐっ…」
助けを求めたいが、黒装束によって魔力を弄られ、思うように声すら出せない。
「あるぇ?おかしいな…――『足跡探索』」
「はっ…」
「…戦闘準備をしておけ」
その詠唱が聞こえた瞬間、黒装束達の顔つきが変わった…ように見えた。
「…誰」
彼女の声が、一気に冷たさを増す。
「…ばれたのか、クソッ」
「ダイヤさぁーん?」
『…起動』
「――私に、魔力を与えて。できるだけ強く」
『了解。最大出力で付与します』
あの魔法石がそう告げた後、その場には、
――激しい魔力と風が吹き荒れた。
「うおぁっ!?」
「なんだこの威力は…!?」
「ぐっ…」
黒装束達は苦しみ、フォルへの魔力操作も止んだ。
そしてこの気迫から、彼女が迫ってきていることが分かる。
「死ねぇ!」
急に一人が飛び出す。奇襲を狙ったのだろう。
だが驚かされるのは、黒装束達の方だった。
「『衝撃波』」
「がぁっ…」
黒装束が宙を舞った。重い音を立て地面に落ちる。
仲間達は、もはや絶句するしかなかった。
彼女が、歩みを進める。
彼女が、歩みを進める。
彼女が――
死神が、歩みを進める。
「…」
死神は黒装束を冷たく見下ろし、そして鎌を振り上げ――
「レイ!」
「――っ」
フォルがそれを止めた。たった一言で。
「やっと外れた…。ねぇ、レイ?殺す必要はないでしょ?」
「…ダケ…ド…、コロ…サナ…キャ」
「君は、そういう所がダメだ。こいつらなんて――」
そういってフォルは何かを呟き、そして彼らを昏倒させた。
「これで充分だ。おやすみ、『休息』」
レイが倒れた。
「そんなことがあったの!?」
「そうだよ、ルーね…」
「そうなのっ!いやー、フォルちゃんが止めてくれなきゃ、どうなってたかなっ!?」
ルナへの言葉を、レイに綺麗にさえぎられる。
今は夕方。外出していた者も帰ってきている。
「――とりあえず、奴らは確保した。今は多分、収容所へ送られている頃だろう」
「あ、ジンさん」
そう言うのは、この屋敷の持ち主であり、領主でもある、ジン・デイライト。
「奴らは相当な悪党でな。出来るだけ身分の高い者の住宅に侵入し、金品を盗む。しかも、相当な計画性がある」
「それを、二人は捕まえたんですね」
「そうだ」
そういうと、ルナは二人を輝いた目で見る。フォルは少し、本当に少しだが、照れくさく感じる。
レイは…いつも通りのようだった。
「とりあえず、助かった、二人とも。感謝する」
そういうとジンは、頭を垂れた。
それに釣られたのか、ルナも礼をする。
その姿を見て、フォルは少し面白くなる。
レイは…今にも吹き出しそうだ。
「ふふっ」
やはり、ルナは何か魅力があるようだ。
「――あぁ、可愛い」
「…ん、何か言った?」
「いや、何も言ってないよ。それより、今度私にも『ぷりん』ってのを食べさせてほしいね」
「おっ、本当?いいよいいよ、作ってあげる!」
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる