人妻♂の僕が部下にNTRれるはずないだろう!

可成

文字の大きさ
2 / 35
1 僕はハイスペ幼馴染みの妻♂である

1

しおりを挟む
「りっちゃん」
「ン……んぅ…?」
「そろそろ起きて。朝だよ、りっちゃん」

沈んでいた意識が少しずつ覚醒していく。重たい瞼を開くと、まぶしい光を遮って、眼前に優しい笑みをたたえた男の顔があった。
寝ぼけ顔を覗き込むように屈んで、やんわりと握った肩を優しく揺り動かし目覚めを促してくれる僕の最愛のひと、ユキ。はち切れんばかりの立派な胸筋を隠すように、紺色無地の、皺一つない清潔なエプロンを纏う大柄で屈強な男、御子柴雪緒みこしばゆきおこと〈ユキ〉は、同棲を始めた頃から毎朝こうして、朝ごはんを作り終えたその足で、朝が弱く寝穢い僕を起こしに来てくれる。

「んん……ゅき……おはよぅ…」
「おはよう、りっちゃん。まだ眠そうだね…昨日のエッチで疲れさせちゃったかな?ごめんね…」
「ん、だ、いじょぉぶ…」
「……ねぇりっちゃん。おはようのキス…してもいい?」
「ん。……ンぅ、む♡」

笑い皺が深く刻まれた目尻を下げる。彫りが深くて優しい顔立ち。二重の垂れ目が甘く桜のように色付いて僕を見下ろす。僕はまだ半分夢の中のふわふわとした頭で、いつものような甘ったれた仕草でユキの方へ両手を伸ばした。
抱きついた後にふに、と柔らかい唇の感触。昨日の夜も唇がぽってり腫れそうなくらい執拗に口づけ合ったのに、朝になるとまるでリセットされたみたいに新鮮で心地よいキスの感触がして、心がとろけていく。たとえ毎朝の決まったルーティーンだとしても、この感覚は一生飽きる事が無いと思う。既にこのキスだって10年を越えて行われているものだ。

「ン…♡ちゅ、ちゅむ…♡」
「んぅ…♡ンむぅ…♡」

舌を潜らせたいのを我慢して、唇だけでちゅっちゅ♡ちゅっちゅ♡と忙しなく啄み合いながら挨拶する。そうしてひととおり愛し合った後ようやくちゅぱ…っ♡と名残惜しく唇が離れた。

「ぷぁ♡……?……めがね、どこだ……?」
「は…♡、ここだよ、りっちゃん」

はい、どうぞ!とベッド脇のチェストに置いてあった眼鏡を優しく耳に掛けてくれるユキ。僕はへにゃ、と情けなく眉を下げ「ありがとう…」と舌足らずにお礼を言いながら、キスで熱を持った唇を指で撫でた。
普段の僕を知るユキ以外の人間が見れば、今の僕はまるで別人のように映ることだろう。

僕こと鹿沼律かぬまりつと恋人であるユキは、生まれたときから家がお隣同士という生粋の幼馴染みだ。
お互いが恋愛感情を抱くずっと前…それこそ物心つく前から兄弟のように仲良く過ごしてきた。
幼稚園から高校まで進学先は全て同じ、唯一大学のみ別だったが、偶然にも入社した会社は同じ大手菓子メーカーだった。同学年かつ同期入社のユキとは部署こそ違えど何かと接点が多く、社内で他人行儀に振る舞うのはなかなか大変だ。
僕がユキを恋愛の意味で好きだと自覚したのは大学進学で離れ離れになったのがきっかけで、卒業と同時にユキに告白されたことで晴れて恋人同士になった。それからユキが35歳、僕が34歳になる現在までの約12年、特に大きな喧嘩をすることもお互い浮気することもなく、ずっとこの調子でべったりと、しかし穏やかに愛を育んできた。

「来週は大きな会議があるね。新商品のプロモーション企画、りっちゃんがプレゼンするの?」
「いや、今回は新開に任せてみようと思う」

ネクタイが汚れないよう胸ポケットに仕舞った状態で朝食を口に運び、咀嚼し飲み込み終えたところで、僕は小さく首を振って見せた。ユキは驚いて目を丸くする。

「えっ、もう新開に任せるの?りっちゃんが自分の商品を部下に任せるなんて珍しいね?」
「新開は、君が言う通り独創的な視点を持ってるところに可能性を感じるんだ。今回も面白い切り口で売り出し方を提案してくれたから、手始めにプレゼンを任せてみようと思って」
「そっか…新開はりっちゃんのお気に入りなんだね。ちょっと妬けちゃうな…」
「お気に入り? 違う、そんなんじゃない」
「そう?まあ、あいつ優秀だからなぁ。ほんと、営業うちから引き抜かれたのは痛手だったよ」
「ユキが上手に育ててくれたお陰で使い物になってるんだ。僕は指導するのが下手だから…」

人事部の采配とはいえ、ユキが手塩に掛けて育ててきた優秀な人材を、結果的に僕が横取りしまったことに罪悪感を覚える。
きっと新開も、口下手で人付き合いの不得手な僕より、何でも器用にこなせるユキに教えて貰った方が幸せだったろう。
本心からの言葉だったが、ユキは僕の言葉に眉を顰め、咎めるように指先でテーブルをトン、と弾く。

「もう。またそんなこと言う。いつも言ってるでしょ。俺の大切な人を悪く言わないで、りっちゃん。りっちゃんはとっても優秀な社員だよ!的確なニーズの掴み方に斬新なアイデア…どこをとっても凡人には無い才能だし、それを仕事に活かして次々ヒット商品を生み出してる。しかもこんなに美しいときてる!」
「美しいって……あの、もう34のおっさんだぞ、僕…」
「34歳の、こんなに美人で有能な主任が居るのはウチくらいだよ!もしりっちゃんが居なくなったら、会社が潰れるくらいの大損失だ!」
「君は僕に分厚いフィルターを掛けてるからな…その評価は全く信用できないけど——でも、嬉しい。ありがとう」
「! 今の笑顔……ああ…すっごく可愛い…♡ 朝からりっちゃんのこんな素敵な笑顔が見られるなんて…夫の役得だね…♡」
「…ぅ、…い、いつもと代わり映えしない凡庸な顔だぞ…」
「りっちゃんはいつだってとっても可愛い、俺の天使だよ…♡」

早々に食事を終えたらしいユキが、頬杖をついたまま恍惚の表情でうっとりと見つめてきて、僕は気恥ずかしさに頬が熱くなり思わず俯いてしまう。万事が万事この調子で僕のことを美辞麗句で褒め称え、べたべたに甘やかすのだ。ユキは。
言葉だけじゃない。同棲を始めて以来、掃除以外の家事が不得意な僕に替わり、料理や洗濯など諸々の家事は全てユキが率先してこなしてくれる。僕が担当する家事は掃除だけだ。社内一多忙と言われる営業職でいち早く課長に昇進したというのに、極力残業はせず、部下にも負担をかけず、きっちり仕事をこなして家事もこなして。その上至れり尽くせりに僕のことを甘やかし尽くしてくれる。ユキの優しさに甘えてしまった結果、僕は仕事以外ではすっかりユキに依存してしまっていた。ユキが居ない世界なんて想像できない。いつかユキが僕を捨てるような日がきたら、僕は比喩では無く本当に生きていけないかもしれない。最早恋人や幼馴染みという枠組みには収まりきらないくらい、僕にとっては大きな存在だ。

そして────僕たちは結婚もしている。
家族以外には秘密だが…5年前から僕はユキの妻♂なのだ。

「りっちゃん…♡ 好きだよ…♡」
「~っ♡ あ、ありがとう…」
「りっちゃんも俺のこと、すき?」
「うん…すき、だ…」
「ふふ♡嬉しいな…♡」

新婚期間などとおに過ぎているのに、ずっと仲睦まじい僕たち。だが、こんな情けない僕と優秀なユキが幼馴染みで夫夫ふうふだなんて会社で広まってしまえば、きっとユキの輝かしいキャリアに傷が付いてしまう。だからユキには「会社では他人」を貫き通すようお願いしてきた。ユキは時々不満そうにするけれど、お互いの努力の甲斐あってか、幸いにも入社してから今まで僕とユキが仲良しだなんて話は全く耳に入ってこない。恐らく僕とユキが夫夫ふうふだと知る人間は人事部くらいのものだろう。だから、こんなに四六時中べったりと愛し合えるのは二人きりの時だけだ。

「あ…あんまり見つめられたら、会社に行けなくなって、しまう……」
「勃起しちゃう……?」
「っ、ぅん……」
「ハァッ♡ かわいっ♡ 俺の視線で朝からおちんぽアツアツ勃起しちゃうりっちゃん…ふふ♡ とっても愛しいな…♡」
「ぁっ?……ゆき…ぃっ、今は、やめ…っ♡」

お箸を持っていた手を取られ、僕の指の股を指先でスリスリと擦られる。そこから感じられる焦れったいような仄かな性感に思わず体を震わせてしまい、僕は慌てて手を引っ込めた。

「うん、ごめんね♡ じゃあ仕事が終わったら、今夜もいっぱいりっちゃんのお腹の中でビュッビュ♡するからね♡」
「ぅ、ぅん…♡ かま、わない♡」

昨夜の、お腹いっぱいになるまで中に遂情された時の多幸感を、カラダが思い出してしまう…♡
僕はキュンキュンと疼く下腹部をテーブルの下でこっそり撫でながら、欲に塗れた熱い吐息を吐き出した。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...