浅海 夕樹の苦悩。

淡雪 理依奈

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0章 雪車夢学園

そこは可笑しなカエルの巣穴

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私立 雪車夢学園。

品行方正、文武両道、才色兼備。

いろんな才能、技能を持った少年少女達が集うエリート校。

1年時に、どの文科に入るかのか大筋を決めてなるべく武器を増やす。

そして、2年3年時に一本道に通すとかなんとか。
入学案内だったか、
パンフレットだったか、
はたまたどこぞのネット掲示板だったか。
そんな寄せ集めの知識たち。

また、
雪車という大層な名前ではあるがここ一帯の町は基本
北雪車、西雪車という町の名前で住民の名前にも反町が存在しており反町と雪車町の苗字で喧嘩が起きるぐらいまぁ色々と大変らしい。

と話がずれてしまったがそれぐらい住民達の中では馴染んでいる言葉と言う事だけは言おう。

そんな雑談はさておき。

とりあえず、無知でまるで赤子のような状態でこの絢爛豪華。
きらきらと眩しい校門に立つ程の勇気は俺には無かった

はず…なのだが。
「優美テメェ!はめやがったな!」
今キレているのが俺こと浅海夕樹。
綺麗に真っ黒な黒髪と一様そこそこ運動部で鍛えた筋肉がある男子高校生に今なろうとしている。
そして、今俺がキレている相手。

雪咲 優美。
黒髪のショートカットの髪。切れ長の目が少し怖い…俺の幼馴染。
キレた瞬間にキレたことを後悔した。

もっとも
昔は、髪が胸の辺りまであって目元ももっと柔らかくて。
昔はもっと優しいやつだったんだけど…。

「私は、助けて欲しいって言っただけ。そこからの事は貴方が曲解か勘違いでもしたんでしょ?」

ご覧の通り、今は捻くれに捻くれた今の若者を象徴するような性格。
変わった今に少しというか、膨大な喪失感と悲壮感に襲われながらも仕方なく喋ることにした。
後、切れたらキレ返されて恐ろしかったというところも大きかったりする。

「はいはい、分かったよ。それより…ここになんで呼んだんだ?」  

やっと、きたかと言わんばかりに大股で髪の毛をひらつかせる。

「それは、言ったじゃない。貴方の家が貧乏で貧相で。
でも、貴方がそこそこ凡人が虫のように底辺を這いずって努力したのを認めてあげようとしてるのよ。」
はんっと、鼻で笑った効果音がついた気がする。
胸の下で腕を組み、校門の柱に持たれながら足も組む。
そして、顔はそっぽを向いている。

…彼女にとってのお嬢様ポーズは手足を組むことらしい。

「でも僕の家、程じゃないにしろ。お前の家そんなに裕福じゃないだろ?
昔からファミコンしてたじゃん?
スーパーファミコン欲しいって、言ってたじゃん?」
「ファミコンなんてあるか!あんたはいつの人よ…してたのはDSよ。
テレビゲームは、好きだけどファミコンでは無い。」

明らかにイライラとしていて、
床をグリグリと踏んでいる。
高そうな革靴?
ローファー?が超凹みそうでこちらがいたたまれない。
(自分でも、思うがローファーと革靴を大差ないと思っている自分に裕福な高校になんか入れないと思う。)

「と言うか、話をそらさないで…。」

先まで、怒っていたことも含めて
俺の無知などもろもろで疲労困憊。と言うような顔で言う。

なんと言うか、俺が云々というか自滅のような気がしたがそこは黙るのが男の筋かなと思う事にした。
 
「えっと…メールの件はごめん。
時間が無くてすぐに返信してもらうにはSOSかな。とおもって」

暫く経ち、そんな言葉が彼女から吐かれた。

ぺこっと一礼してこちらの顔をちらっと除きながら胸の前で手を組む彼女…

「べ、別に…怒ってる。訳じゃないんだけど僕みたいな一般人がここに入れるのか?」

そして、女子(幼馴染み)に上目遣いでお願いされてすぐに折れる紙メンタル。
それが、俺だった…

と、いつもだったここからグチグチと小一時間自分の馬鹿で恥ずかしい言動を責めるのだが…。
それを忘れるくらいこの学校は謎なのだ。

「書類がこのお前からの紹介状。だけであのお硬そうな検査を抜けれた。
他の奴らはなんの検査だって言うのもさせられてたのにな。
事前に用意するものも特に無し。
制服なんて、サイズがいつバレたのかと言わんばかりにオーダーメイドで綺麗にぴったり。
裏サイト何かでは、多額の裏金を使っても入れない。とかなんとか。」

頭の中だけの会議に収めるには事が大きすぎて俺の頭には収まらなかった。

彼女がふむっと顎に手を当ててうなづこうとしたが、
腰に手をおき髪の毛を翻す。

見栄を張るのって…大変なんだなーと薄ぼんやり理解する。

「あぁ、まずこれ学園で採算とろうとして無いから…ね。
卒業生達の学園への融資によって成り立ってるわ。
有志の融資よ。」

歯切れの悪い、詰まった様な言葉にどうしたものかと悩みながら言葉を絞る。

「…ダジャレか?」

「違う!」

コホンっと、わざとらしく咳払いをしながら俺に対して呆れた目で見て視線を外す。
せめても、少なくとも一考した俺の気持ちも考えて欲しいと思ったがさっさと訳を知りたかった。

でも俺は心の中で
金持ちの考える事は分からない、それで終わる事だと、見切りを付けていて。

だから、さっさと問題の正解を知りたかっただけなのだ。

さぁ、前置きはもうおしまい。


「学園が強制…って訳じゃないんだよな?融資の値段は知らないけど学校を立てるのってお金かかるし。

初期投資が笑えないだ」
「しっ。」
言葉の途中
あと一文字で終わる、一秒も掛からない隙間。
ペットを躾ける時の様な掛け声と、唇に親指で蓋をされる。
風に乗った髪の匂いと揺れるスカート
頬の染まりが伝染するように顔に広がる。

「あら、雪咲さん。」
「どうも、幸桜先生。」

僕の唇に添えられるようについた指は離れ、新たな来訪者を告げる。

僕から離れたのは彼女の指だけだったんだろうか。

そんな女々しく分かりもしないことを考えて唇をなぞる。

そんな俺を怪しく笑う先生に気づけずに。
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