18 / 43
Phase2 力の覚醒への一歩的な何か!
ホテルへようこそ!①
しおりを挟む
視界には鉄の牢。
手首には鉄の手錠。
薄暗い石造りの部屋の中で目を覚ました。
「どこ……?」
ぼやけた脳内に、監禁されたのでは、という疑念が生まれた。
「俺、また何かやっちゃった……?」
昨日はヴァルターの妹に失神させられ、由梨花に腕を粉砕され、多くの金貨を奪われた。特に理由もない暴力に襲われたばかりだというのに、今日もまた、不条理な罰を受けているのか。
開放骨折した右腕は、若干の熱を感じてはいるものの治っていた。包帯が巻かれたままなので患部の状態は見えはしないが、十分に力を込められる。骨の破片が血管に流れてはいないことを祈っていると、おそらく、朝を告げる鐘の音が響き渡った。
確証がないのは、この部屋に窓が無いからだ。照らすのは朝日ではなく、松明が放つ鈍い明かり。だが猛烈な空腹感と、正確な体内時計が朝の栄養補給を望んでいた。
「誰もいない……」
ひんやりとした空間に、独り言だけが反響する。
周囲の様子を確かめようと、僅かな光に縋るように、硬いベッドから身を起こす。
「いてっ……」
顔面から落ちた。
何かが足を引っ張っていた。目を凝らして見ると、大きな鉄球が鎖で括り付けられている。手錠といい鎖といい、まるで旧時代の罪人扱いではないか。
誰か助けて──叫びは飲み込まれる。
「山城君、ケガしてない? 大丈夫?」
懐かしい声が、聞こえた。
鉄柵の向こう側に、誰かがいた、
「うわっ血が出てるよ……えっと、絆創膏あったかな……」
霞のように朧げに。
だが輝きを放って、友人がそこにいた。
「もう喧嘩なんてしちゃダメだからね? 君が痛い思いするのも、痛い思いさせるのも許さないから」
魂に触れた覚えはあるが、幽霊という存在など信じていない。
第一、君は消滅した筈だ。
その孤独な魂ごと。
「動かないでね……はい、おっけー。あはは、漫画の主人公みたい」
輪郭が曖昧な彼の手が伸び、鼻先に触れた気がした。
受容体は刺激を感知しなかった。だが微かに、熱を感じる。
「じゃあ……僕はもう行くね」
事態の理解が追い付かない自分は、どんな顔をしていただろう。
ただ茫然と、儚い存在が立ち上がり、闇へ溶け込んでいくのを見つめていた。
「また明日ね」
これは悪夢だ。
半覚醒の脳が見せる幻。
きっとそうに違いない。
でも。
──明日君は、そこにいなかったじゃないか。
悲痛に満ちた既視感に襲われ、反射的に手を伸ばした。
今離れたら、二度と出会えない気がして。
もう死んでいることは分かっている。
この手で殺したことも分かっている。
それでも。
「待ってくれ、響──!」
声は届かず。
祈りも届かず。
高村響は消失した。
「…………」
高鳴る心音が耳障り。
落ち着け、ただの幻覚だ。天炎者は脳がめっぽう弱いのだ、異常な回復力を持っているのは体だけ。昨日の疲労によって脳が混乱しているのだ、そう判断して硬いベッドの淵へ腰かける。
脳細胞は回復しない、という知識を思い出した。愛を求めるフリーデに絞め堕とされたあの時、いくつかの脳細胞が酸素不足で死んだのだろうか。空いた穴を埋めようと脳が活発に働いて、ありもしない幻想を映し出したのだろう。
天炎者も同じで、脳を破壊すれば確実に死ぬらしい。では何故、彼は首を撥ねても生き返ったのだろう。壊した魂は誰の物だったのだろう。
答えなんて、誰も知らない。
「はぁ……」
白昼夢を見たのは初めてだが、だからといって状況が変わるものでもない。空想にしては現実味を帯び過ぎている、鼻に触れる感触も、絆創膏を貼られた時の感触も、拳や体の痛みも、牢屋を出る手掛かりにならない。
いつか見た悲しみの続き。
淡い日常の記憶。
まやかしでも幻でもない、過ぎ去った青春。
「俺がいて、良かったのかな……」
一人になると、どうしても考えてしまう。
由梨花と街へ出掛けたのは正解だったのだ、自分の部屋にいては塞ぎ込んでいただろう。マリーの命令もそうだ、ノーレンが事細かに報告し、敵の天炎者の情報を把握していたのだ、だから街へ出向かせた。
俺は素直になれず、仮面を被ったままだった。出来るだけ、いつもの自分でいようと努めた。由梨花の友達としての俺でいた。向こうがどう思っているかは知らないが、それが正しい選択だと思ったのだ。
本当の俺は、何処にいる?
「…………」
まぁ、いいか。今はただ、誰かが現れるのを待つしかない。
ネットやテレビの無いこの世界での暇潰しには、とある歌を脳内で繰り返し歌っていた。タイトルもアーティストも知らないが、フレーズや歌詞は完璧に思い出せる。夏の空に消えて行く、飛行機雲の悲しさを綴った歌詞だ。
歌う度、消え行く花火が脳裏に咲いた。
唄う旅、止まぬ時雨が耳朶を打った。
「僕がいて、良かったのかな……」
何度歌ったか数えるのを諦めた時、微かな物音を聞いた。
「……知らない」
久々に聞いた声と共に、足音が近づいてくる。闇の中に光が入り込み、小さな体の影を落とした。
「……望まれるか、望まれないかだけ」
いつもの衣服を着込む少女が宿す、凍てつく瞳はいつもと変わらず、感情を読ませない。
「ノーレン?」
「……おはよう」
「お、おはよう……なあ、この状況は一体何だ? 俺を出してくれないか」
「……ダメ」
「どうしてさ? 牢屋に閉じ込められるほどのことをした覚えは無いぞ」
「……うるさい」
「どこが!?」
ワガママ姫がここにも一人。
鉄製の手錠をガチャガチャと鳴らして抗議するが、全く聞く耳を持ってくれない。
「……覚えてない?」
「何を?」
「……一般人を殺そうとしたこと」
「は? 俺が? そんなことするワケないだろ」
「……そう」
何故罪もない一般市民を殺すのだ。呑気に笑っている姿には若干の苛つきを覚えはするが、自分たちの働きで守れたのだと思うと、存外悪いものでもない。
お前が俺を殺そうとしたことは忘れてないからな。
「いいから、手錠くらい外してくれ。あと鎖も外してさっさと──」
「……私には出来ない」
「えぇ……別の人が鍵を持ってるってことか? じゃあ呼んできてくれよ」
「……もうすぐ来る」
言うと、身を翻して去っていった。
「……力を使って脱走したら殺す」
凶悪な忠告を残して。
「えぇ……」
一体何の為にここへ来た、と問う前に再びの闇に閉ざされ、仕方なしにベッドへ寝転ぶ。
魔法を使っての脱出か、不思議と思いつかなかった。モンスターを倒すためだけに使っていたし、呪いだと聞いて多用は躊躇われていたし。牢も鎖も切るのは簡単だろう、だが手錠はどうやって切ろうか……いや、ノーレン・スミスに殺される。
妄想に終止符を打った頃、また物音が聞こえた。
「あっ……起きてますね、瑞希」
もう一人のワガママ姫、夏目由梨花が現れた。
手にはお盆を抱え、数個の皿を載せている。
「由梨花、出してくれ」
「出しません。それに挨拶も無しですか?」
「状況がおかしいだろ、なんで監禁されてんだ!?」
「ほ~う、口答えしますか?」
「──ッ!?」
瞬間、幻痛。
骨を砕かれる激痛と、骨を繋ぐ激痛が、右腕を襲う。
この女に歯向かったら、また痛い思いをする──自衛の為に、脳が再現した幻痛。
「おはようございます……」
「おはようございます。まずはこちらをどうぞ、朝食です」
「呑気すぎるだろ!?」
「は?」
「ありがたく頂きます……」
格子の下に空いた隙間から、お盆ごと滑り込ませてこちらへ送る。
異世界では珍しい、米を中心にした料理だった。
「これ和食? 焼き魚ってのは珍しいな、それに野菜も……漬物?」
「似たモノを使って再現したのです、お口にあいますか?」
「あぁ、すごい美味しい」
「そうですか……後でウィーザを褒めなければ」
「なぜに?」
「さあ?」
パンを食べるのが当たり前の生活をしていたが、まさか日本の料理を口にすることが出来るとは。思い入れがあるワケではないが、いい加減パンには飽きていた。
昨日の食堂ではお粥っぽい何かを頂いた気がするが、あのゲロ事件は思い出したくない。
「瑞希を閉じ込めている理由ですが」
荒々しく削られた木製の箸を使い、おかずである焼き魚の頭を食べ終えた頃、由梨花が口を開いた。
柵の前で正座をする姿勢は、まさに大和撫子というべき美しさ。
「あなたの力が暴走した為です」
「暴走?」
何を言っている、暴走したのは由梨花じゃないか。俺の腕を粉砕したことは忘れていないぞ、金貨を奪ったことも。
「あの少女を殺そうとしたこと、覚えていますか?」
「はあ?」
あの少女ってどの少女だ? 街では多くの子供とすれ違った、誰の事か分からない。
いや、そもそも。
「殺すって……そんなことするワケないだろ」
「やはり無自覚ですか……あちら側に揺れてはいないだけマシですかね」
「あちらってどちら?」
「死縛者ですよ」
「は……?」
からん、と箸が石畳みの床へ落ちる。
「死縛者って……俺が!?」
忘れもしない、精神へ忍び込んだ異形の怪物。
全てを否定し、理性を失った転移者の成れの果て。
自分も、化け物になるのか。
「違いますから落ち着いて下さい、瑞希」
抑えた声で、諭すように言葉を続ける。
声を聞く度に、鼓動は段々と静かになっていく、
「あなたなりの慈悲だったのでしょう、昨日のあの事件は」
「事件?」
「グラナ、という名の少女……覚えていますか?」
「あぁ……なんとなく」
箸についた汚れを落としながら、昨日の記憶をまさぐる。
そうだ、公園で出会った少女だ。泣き謝って、頭を下げ続けた奴隷の少女。
「戦場と日常の落差は、精神を不安定にさせます。あなたは我を忘れ、剣を彼女に向けたのですよ」
「え……」
「ただの破壊衝動だったのなら、私の声も届かなかったでしょうね。自己肯定はしているのです、あちらには絶対に行かせません……ですが念のため、今日一日はここで過ごして貰います」
「破壊……衝動……?」
ふざけるな、そんなもの持ってはいない──叫びは虚無へと消え失せる。
『大暴れしたいんでしょ?』と、記憶の中の誰かが囁く。異世界の調停者、シエル・バーンズがいつか口にした言葉だった。
激変する日常は、情緒不安定になる。
殺人が許される戦場と、制約だらけの日常との軋轢。
笑い方を忘れたのはいつからだったろう。
「幸い、大事にはならなかったのですから安心して下さい。目撃者への根回しは完璧です、軍に気付かれる恐れもないでしょう」
在りし日の夢と、死後の夢。
叶えるためには、争いが必要だと誰かが言う。
「俺が、殺そうとした……?」
罪もない、いたいけな少女を?
「はい、魔法を使って殺そうとしました。腕を折るのが正しかったかは分かりませんが、結果としては上々でしょう」
カチリ。
声は届かない。
ハッキリと思い出したのだ。
言霊を唱えて熱が集まる感覚も、魂を壊せるのだと歪んだ笑みを浮かべる感覚も、鮮明に思い出した。
「ち、違う……」
そんなこと、望んでいない。
殺すのは敵だけだ、壊すのは敵だけだ。これ以上、この身で罪を犯すつもりなど無い。
だというのに、何故。
「違う……」
人殺しなんて、馬鹿げたことをしようとしたのだ。
救済だなんて、出来もしないことをしようとしたのだ。
「違う……」
主人公になんて、なれるワケないじゃないか。
「否定しようとも事実は変わりませんよ。私が止めなければ、確実に殺していました」
同年代の上司は、冷徹な視線を向けて叱る。
それが怖くて、俯いてしまった。
「ゴメンなさい……」
自然と謝罪の言葉が漏れた。
何故だろう、幾度となく口にした気がする。
「私に謝られても困ります。班長として、血の闘争団としての責務を果たしたにすぎません」
「ゴメン……」
相手を違えていると知っていても、謝らずにはいられない。
真に謝罪するべきはあの少女だというのに。
「まあ、あなたの気持ちも分かりますがね。“奴隷だなんて可哀想だ、助けてあげないと”という所でしょうか」
由梨花は小さな溜め息を吐き、誰かの心情を考察した。
違う、もっと醜悪で、残酷で、陰鬱な感情だ。
「いいですか、ここはゲームの世界などではありません、確実に存在する異世界です。モブキャラなどどこにもいません、皆が物語を紡ぐ主人公なのです。余計な介入、ましてや殺害など許されません」
そんなことは百も承知だ。
実際に生きている人がいて、懸命に働いている人がいる。誰かの帰りを待ってくれている人もいるのだ、今ここにはいなくとも。
水槽の脳や哲学的ゾンビという思考は何度も繰り返したが、結局、考えるだけ無駄だった。
「私たちはただ、敵を討つ為に存在する異分子です。この世界へ堕とされた異端者です。だからといって、秩序を乱して良いという言い訳にはなりませんよ」
意図せずして来訪した異世界。
災厄をもたらす自分たちは、まさに癌だ。
「ゴメン……」
「謝られても困ると言ったでしょう。まず、あなたの心の弱さをどうにかしなければならないのです」
怒られることは、苦痛ではなかった。
由梨花に嫌われてしまうのではないか──それが一番怖かった。
「心……?」
衣擦れの音と、地面を強く蹴り上げる音に顔を上げる。
少女は高らかに、祈りの言葉を口にした。
「生涯忠誠、命を懸けて!」
直立不動のまま、声を張り上げる。
海兵隊の胸に宿る深い森。
「行いが悪ければ叱ります、道を違えれば連れ戻します、変り果てたら殺します。だから瑞希、私を信じて下さい」
哀れみなど無い、同情など無い。
力強い信念を宿した瞳に、貫かれた。
「私は決して裏切りません、約束を違えません。だからどうか、信頼して下さい」
信じなければ裏切られることは無い──そんなことは知っている。
人間は結局一人、孤独であることが強さになる──それも知っている。
それでも。
「この世界で、共に生きていきましょう」
隣に誰もいないのは、寂しい事だから。
「ワガママ姫を信じろって……?」
「何ですかその蔑称は。バカにしていますよね?」
「事実だ。ていうか何だよ、どっかの洋画で言ってそうなセリフだったな、もう一回言ってくれ」
気を使われるのがおかしくて、つい軽口を言ってしまう。
それに殺意満々な相手を信じるバカが何処にいるのか。
それでも。
「嫌ですよ。アレはマリーの受け売りです、聞きたいなら彼女にどうぞ」
「マジかよ……」
テキトーな冷やかしだというのに、真面目に返されてしまった。団長に聞くのは躊躇われる。
「それにしても、本当にあなたは人の話を聞きませんね。奴隷というワードがきっかけでしょうが、あなたが思っているほど、この世界の奴隷は悪い扱いを受けていませんよ」
「へ……?」
話題は変わり、グラナのものへ。
落ち着いて話をする為か、由梨花はゆっくりと正座になおり、目線を合わせた。
「執事やメイド、と言えば分かりやすいですか? 殆どが過酷な労働を強いられず、十分な対価を受け取っています」
「へえ……古代エジプトみたいな?」
「あれはピラミッド建設ですよ。確かに、発掘されたものから当時の奴隷の生活が分かりますが」
世界史は苦手なんだ、そんなことは知らない。
「まぁそういうことです、決して悪いイメージを抱かないで下さい」
「じゃあ、なんであんな格好で? そういうプレイか?」
「貧相な発想ですね、では下げますね」
「悪かった、だから下げないで」
「は?」
「すみませんでした、どうか全部食べさせて下さい」
「ちっ」
「えぇ……」
まだ残っている朝食を死守し、落ちてしまった箸の汚れを払う。
手の届かない場所まで退避させるのを見届けた後、由梨花は言葉を続けた。
「唯一の形見らしいですよ。だから、孤児院でもずっと着ていたとか」
「孤児院……?」
「頑なに着替えを拒否したらしいので、諦めてそのまま出歩いたそうです。あの人もあの人です、自分の印証を悪くするだけだというのに」
「あの人……? え、誰のこと?」
「頭が薄いあの男ですよ。隣にいたでしょう」
「薄い……あぁ、頭のことか」
「立派な人なのですがね……」
グラナを連れ歩いたジェントルマンのことで間違いないようだ。
奴隷を侍らせた、髪の薄い大富豪。
「グラナは使用人として引き取られたそうです。今頃は立派なメイド服に着替えているでしょう」
「使用人?」
「言い方を変えれば奴隷です」
「性奴れ──」
「は?」
「すみません……」
厳とした声音と、強張った表情で遮られる。
下ネタは気に入らないようだ。
「疑うのなら、明日にでも見に行くと良いでしょう。とあるホテルで働いています、それはそれは豪勢なホテルです」
「ラブホ──」
「は?」
「すみません……」
言いたいことも言えない、こんな間柄で信頼云々とは図が高い。
それでも。
「まあ……案内してあげますよ」
親しき中にも礼儀あり。
「どうも……」
共に約束した仲ではないか。
命を燃やす旅に出て、必ず帰る約束をした。
「そうだ、俺の金を使い込んだことは忘れてないからな?」
「あっ……」
事の危険度は低いが、立派な犯罪だ!
「服も何も買えてないんだぞ!? どうしてくれるんだ、金を返せ!」
「初任給はお世話になった人の為に使うのですよ? わざわざ瑞希が購入する手間を省いたのです、むしろ感謝して欲しいくらいですよ」
「ふざけんな、ティアにお土産でも買おうと思ってたんだよ! 俺の財布はどこだ、部屋に置いたままか?」
「安心して下さい、私が持っています」
「は?」
ゴソゴソとまさぐったかと思うと、見覚えのある巾着袋を取り出した。すっかりとしぼんでいるソレは、俺の物によく似ている。
というか俺のだ。
「返せー!」
「牢屋生活に不要でしょうから、これは私が預かります」
「犯罪だぞ!? イケナイことなんだぞ!?」
「うるさいですね、全て使いますよ?」
「それは恐喝なのか!?」
人質の命が危険だ、このままでは洋服だったり香水だったり光物だったりに変わってしまう。
「そうだ、私が瑞希の服を買ってきてあげますよ。残りの金貨なら、丁度一着分は購入できますから」
「は、はあ!?」
「サイズは把握しています、心配しないで下さい」
「心配なんかするかー!」
この女、どこか狂っているのではないだろうか。
「まぁまぁ……おや? 瑞希、あの硬貨はどこへやりました?」
袋をまさぐりながら、由梨花が問う。
「あの硬貨?」
「日本の硬貨ですよ。昨日はあったんですが……」
「そこに混ぜてた筈だぞ。俺は金貨と間違えないし、由梨花が会計に使ったんだろ。許さないからな」
「言ったでしょう、価値はないと。しかし、私も使った覚えはありません」
金本位制であるこの国で、アルミや銅で製造された円硬貨に価値は無い。
それは日本人である俺たち二人は知っていて当然。
「じゃあ?」
「どうしてないのでしょう?」
未知の硬貨を貰って、大はしゃぎしていた少女の姿が脳裏に浮かぶ。
と共に、一つの疑念が生まれた。
「まさか」
「まさか、かもしれませんよ」
街へ出向く直前、マリーが釘を刺していた。
「スリ?」
「でしょうね。しかし、いつスられたのでしょう?」
由梨花が使っていた時にはあった。しかし、今はない。
空白の時間に、俺は買い物をしていない。
帰り道にでもスリにあったか? いや、人通りの無い道を通って帰ったのだ、スリになんて遭遇していない。
「まさか」
「まさか?」
思い出した。
とある公園で、ほんの一瞬、ポケットから逃げ出していた。
あの少女とぶつかった際に、いつのまにか落ちていた。
「まさかだよな?」
「はぁ?」
奴隷の少女がスリをするなんて、まさかだろう。
由梨花の話を聞く限り、スリという悪事を働かずとも生きていけるのだから。
「まさか……」
「大丈夫ですか?」
ふつふつと、とある感情が湧いてきた。
「ここから出せ由梨花! あいつスリだ! あいつに盗まれたんだ!」
確証は無い。
しかし、状況的に判断した結果、そうとしか思えない。
「出しませんよ。出た所でなにをするのですか? ホテルへ宿泊するのですか?」
「取り戻しに行くんだよ、俺の610円!」
「その執着心はどこから生まれているのですか」
「いいから出せー!」
価値がないのは分かってる、だが取り戻さなければ。
唯一所持していた、別の世界の物品。
大切な、繋がり。
「今日一日は許しません、ここで過ごしていて下さい」
「はあ!?」
「このホテルも悪くはないですよ? 三食付きますし、清掃はされていますし、ドラキュラが出るという逸話もあります」
「コウモリでも住み着いてるのか!? そんなのイヤだ、出してくれ!」
「いいではないですか、精神が鍛えられます。私が情報を集めておきますから、ここで大人しく待っていて下さい」
「いやだー!」
「では、優雅な食事を続けて下さい」
「待ってくれー!」
祈り届かず、由梨花は牢屋を後にする。
静寂が戻った時、不意に蓬莱の玉の枝の話を思い出した。
車持皇子がかぐや姫に求婚し、条件としてリクエストされた物品だ。皇子は自身の財力をもって、ありもしない枝を作ったのだ。
全ては楽園へ至るため。
かぐや姫を迎え入れ、幸せな生活を築く為。
「僕がいて、良かったって……思う?」
きっと、これは俺の望み。
自身の記憶を用いて、ありもしない幻想を作ったのだ。
由梨花が姿を消した途端に現れた、頭上をへ視線を向ける少年を。
「もちろん……」
いつかの青春。
決別しなければならない過去。
「俺も……いて良かった」
もっと知りたい。
もっと話したい。
もっと思い出したい。
「でも……今は、望まない」
それでも。
ここにいる俺が全てだ。
情緒不安定な、心の弱い俺が全てだ。
「もう、出てくるな」
囚われていたのは俺だ。
理解してくれる友がいる。
理解しようとしてくれる仲間がいる。
受け入れてくれた姉がいる。
受け入れてくれた家族がいる。
だから。
強くなるために、別れよう。
「そっか……えへへ、嬉しいな」
寂し気に笑って、少年は消えた。
静かな部屋で、残りの朝食を胃に収めた。
孤独が嫌いなワケではない。
ただ、心の隙間を埋めたいだけだ。
そんな過去の自分とは、今日でお別れ。
昼と夜は通常の食事で、パンとサラダの一般的なもの。
運んできたのは、まさかのヴァルター・タリスマンだった。処刑人でも現れたかと驚くと、露骨に傷付いた顔をされた。
曰く、妹から逃げる口実として、配膳任務に志願したとのこと。妹のフリーデから執拗に迫られ、碌に休めない日々を過ごしているらしい。食事を運ぶと、すぐに隣の牢屋へ入って眠り始めた。どうせならもっと話をしたかったが、頬がこけるほどやつれていたので躊躇われた。
コウモリ男だな、なんて思った。
ノーレンに付き、由梨花に付き、ふらふらと滑空するこの騎士が、なんとなくそう思えた。妹との関係は、話してくれるまで聞かないでいよう。
大切な、仲間だから。
大切な、家族だから。
夢を見よう。
あの子の元へ帰る夢を。
お土産は何がいいだろう、都で流行している物がいいだろうか。
何を持って行ったとしても、きっとはにかんだ笑顔を向けてくれる。
そうだ、手紙は何て書こう。
最近起きたことでもいいか。最近……ゲロ事件? 粉砕事件? 碌な事がない。まあ、ありのままを書いていいだろう。
何を書いたとしても、きっと……やばい、この世界の言語で書けない。日本語なんて読めないぞ、あの子には。誰かに書いてもらおう、隣で寝てるヴァルターでいいか。
劣悪な環境のホテルで、満たされる夢の華を咲かせた。
花壇は胸の奥にしまったまま。
物足りなさを堪えて。
手首には鉄の手錠。
薄暗い石造りの部屋の中で目を覚ました。
「どこ……?」
ぼやけた脳内に、監禁されたのでは、という疑念が生まれた。
「俺、また何かやっちゃった……?」
昨日はヴァルターの妹に失神させられ、由梨花に腕を粉砕され、多くの金貨を奪われた。特に理由もない暴力に襲われたばかりだというのに、今日もまた、不条理な罰を受けているのか。
開放骨折した右腕は、若干の熱を感じてはいるものの治っていた。包帯が巻かれたままなので患部の状態は見えはしないが、十分に力を込められる。骨の破片が血管に流れてはいないことを祈っていると、おそらく、朝を告げる鐘の音が響き渡った。
確証がないのは、この部屋に窓が無いからだ。照らすのは朝日ではなく、松明が放つ鈍い明かり。だが猛烈な空腹感と、正確な体内時計が朝の栄養補給を望んでいた。
「誰もいない……」
ひんやりとした空間に、独り言だけが反響する。
周囲の様子を確かめようと、僅かな光に縋るように、硬いベッドから身を起こす。
「いてっ……」
顔面から落ちた。
何かが足を引っ張っていた。目を凝らして見ると、大きな鉄球が鎖で括り付けられている。手錠といい鎖といい、まるで旧時代の罪人扱いではないか。
誰か助けて──叫びは飲み込まれる。
「山城君、ケガしてない? 大丈夫?」
懐かしい声が、聞こえた。
鉄柵の向こう側に、誰かがいた、
「うわっ血が出てるよ……えっと、絆創膏あったかな……」
霞のように朧げに。
だが輝きを放って、友人がそこにいた。
「もう喧嘩なんてしちゃダメだからね? 君が痛い思いするのも、痛い思いさせるのも許さないから」
魂に触れた覚えはあるが、幽霊という存在など信じていない。
第一、君は消滅した筈だ。
その孤独な魂ごと。
「動かないでね……はい、おっけー。あはは、漫画の主人公みたい」
輪郭が曖昧な彼の手が伸び、鼻先に触れた気がした。
受容体は刺激を感知しなかった。だが微かに、熱を感じる。
「じゃあ……僕はもう行くね」
事態の理解が追い付かない自分は、どんな顔をしていただろう。
ただ茫然と、儚い存在が立ち上がり、闇へ溶け込んでいくのを見つめていた。
「また明日ね」
これは悪夢だ。
半覚醒の脳が見せる幻。
きっとそうに違いない。
でも。
──明日君は、そこにいなかったじゃないか。
悲痛に満ちた既視感に襲われ、反射的に手を伸ばした。
今離れたら、二度と出会えない気がして。
もう死んでいることは分かっている。
この手で殺したことも分かっている。
それでも。
「待ってくれ、響──!」
声は届かず。
祈りも届かず。
高村響は消失した。
「…………」
高鳴る心音が耳障り。
落ち着け、ただの幻覚だ。天炎者は脳がめっぽう弱いのだ、異常な回復力を持っているのは体だけ。昨日の疲労によって脳が混乱しているのだ、そう判断して硬いベッドの淵へ腰かける。
脳細胞は回復しない、という知識を思い出した。愛を求めるフリーデに絞め堕とされたあの時、いくつかの脳細胞が酸素不足で死んだのだろうか。空いた穴を埋めようと脳が活発に働いて、ありもしない幻想を映し出したのだろう。
天炎者も同じで、脳を破壊すれば確実に死ぬらしい。では何故、彼は首を撥ねても生き返ったのだろう。壊した魂は誰の物だったのだろう。
答えなんて、誰も知らない。
「はぁ……」
白昼夢を見たのは初めてだが、だからといって状況が変わるものでもない。空想にしては現実味を帯び過ぎている、鼻に触れる感触も、絆創膏を貼られた時の感触も、拳や体の痛みも、牢屋を出る手掛かりにならない。
いつか見た悲しみの続き。
淡い日常の記憶。
まやかしでも幻でもない、過ぎ去った青春。
「俺がいて、良かったのかな……」
一人になると、どうしても考えてしまう。
由梨花と街へ出掛けたのは正解だったのだ、自分の部屋にいては塞ぎ込んでいただろう。マリーの命令もそうだ、ノーレンが事細かに報告し、敵の天炎者の情報を把握していたのだ、だから街へ出向かせた。
俺は素直になれず、仮面を被ったままだった。出来るだけ、いつもの自分でいようと努めた。由梨花の友達としての俺でいた。向こうがどう思っているかは知らないが、それが正しい選択だと思ったのだ。
本当の俺は、何処にいる?
「…………」
まぁ、いいか。今はただ、誰かが現れるのを待つしかない。
ネットやテレビの無いこの世界での暇潰しには、とある歌を脳内で繰り返し歌っていた。タイトルもアーティストも知らないが、フレーズや歌詞は完璧に思い出せる。夏の空に消えて行く、飛行機雲の悲しさを綴った歌詞だ。
歌う度、消え行く花火が脳裏に咲いた。
唄う旅、止まぬ時雨が耳朶を打った。
「僕がいて、良かったのかな……」
何度歌ったか数えるのを諦めた時、微かな物音を聞いた。
「……知らない」
久々に聞いた声と共に、足音が近づいてくる。闇の中に光が入り込み、小さな体の影を落とした。
「……望まれるか、望まれないかだけ」
いつもの衣服を着込む少女が宿す、凍てつく瞳はいつもと変わらず、感情を読ませない。
「ノーレン?」
「……おはよう」
「お、おはよう……なあ、この状況は一体何だ? 俺を出してくれないか」
「……ダメ」
「どうしてさ? 牢屋に閉じ込められるほどのことをした覚えは無いぞ」
「……うるさい」
「どこが!?」
ワガママ姫がここにも一人。
鉄製の手錠をガチャガチャと鳴らして抗議するが、全く聞く耳を持ってくれない。
「……覚えてない?」
「何を?」
「……一般人を殺そうとしたこと」
「は? 俺が? そんなことするワケないだろ」
「……そう」
何故罪もない一般市民を殺すのだ。呑気に笑っている姿には若干の苛つきを覚えはするが、自分たちの働きで守れたのだと思うと、存外悪いものでもない。
お前が俺を殺そうとしたことは忘れてないからな。
「いいから、手錠くらい外してくれ。あと鎖も外してさっさと──」
「……私には出来ない」
「えぇ……別の人が鍵を持ってるってことか? じゃあ呼んできてくれよ」
「……もうすぐ来る」
言うと、身を翻して去っていった。
「……力を使って脱走したら殺す」
凶悪な忠告を残して。
「えぇ……」
一体何の為にここへ来た、と問う前に再びの闇に閉ざされ、仕方なしにベッドへ寝転ぶ。
魔法を使っての脱出か、不思議と思いつかなかった。モンスターを倒すためだけに使っていたし、呪いだと聞いて多用は躊躇われていたし。牢も鎖も切るのは簡単だろう、だが手錠はどうやって切ろうか……いや、ノーレン・スミスに殺される。
妄想に終止符を打った頃、また物音が聞こえた。
「あっ……起きてますね、瑞希」
もう一人のワガママ姫、夏目由梨花が現れた。
手にはお盆を抱え、数個の皿を載せている。
「由梨花、出してくれ」
「出しません。それに挨拶も無しですか?」
「状況がおかしいだろ、なんで監禁されてんだ!?」
「ほ~う、口答えしますか?」
「──ッ!?」
瞬間、幻痛。
骨を砕かれる激痛と、骨を繋ぐ激痛が、右腕を襲う。
この女に歯向かったら、また痛い思いをする──自衛の為に、脳が再現した幻痛。
「おはようございます……」
「おはようございます。まずはこちらをどうぞ、朝食です」
「呑気すぎるだろ!?」
「は?」
「ありがたく頂きます……」
格子の下に空いた隙間から、お盆ごと滑り込ませてこちらへ送る。
異世界では珍しい、米を中心にした料理だった。
「これ和食? 焼き魚ってのは珍しいな、それに野菜も……漬物?」
「似たモノを使って再現したのです、お口にあいますか?」
「あぁ、すごい美味しい」
「そうですか……後でウィーザを褒めなければ」
「なぜに?」
「さあ?」
パンを食べるのが当たり前の生活をしていたが、まさか日本の料理を口にすることが出来るとは。思い入れがあるワケではないが、いい加減パンには飽きていた。
昨日の食堂ではお粥っぽい何かを頂いた気がするが、あのゲロ事件は思い出したくない。
「瑞希を閉じ込めている理由ですが」
荒々しく削られた木製の箸を使い、おかずである焼き魚の頭を食べ終えた頃、由梨花が口を開いた。
柵の前で正座をする姿勢は、まさに大和撫子というべき美しさ。
「あなたの力が暴走した為です」
「暴走?」
何を言っている、暴走したのは由梨花じゃないか。俺の腕を粉砕したことは忘れていないぞ、金貨を奪ったことも。
「あの少女を殺そうとしたこと、覚えていますか?」
「はあ?」
あの少女ってどの少女だ? 街では多くの子供とすれ違った、誰の事か分からない。
いや、そもそも。
「殺すって……そんなことするワケないだろ」
「やはり無自覚ですか……あちら側に揺れてはいないだけマシですかね」
「あちらってどちら?」
「死縛者ですよ」
「は……?」
からん、と箸が石畳みの床へ落ちる。
「死縛者って……俺が!?」
忘れもしない、精神へ忍び込んだ異形の怪物。
全てを否定し、理性を失った転移者の成れの果て。
自分も、化け物になるのか。
「違いますから落ち着いて下さい、瑞希」
抑えた声で、諭すように言葉を続ける。
声を聞く度に、鼓動は段々と静かになっていく、
「あなたなりの慈悲だったのでしょう、昨日のあの事件は」
「事件?」
「グラナ、という名の少女……覚えていますか?」
「あぁ……なんとなく」
箸についた汚れを落としながら、昨日の記憶をまさぐる。
そうだ、公園で出会った少女だ。泣き謝って、頭を下げ続けた奴隷の少女。
「戦場と日常の落差は、精神を不安定にさせます。あなたは我を忘れ、剣を彼女に向けたのですよ」
「え……」
「ただの破壊衝動だったのなら、私の声も届かなかったでしょうね。自己肯定はしているのです、あちらには絶対に行かせません……ですが念のため、今日一日はここで過ごして貰います」
「破壊……衝動……?」
ふざけるな、そんなもの持ってはいない──叫びは虚無へと消え失せる。
『大暴れしたいんでしょ?』と、記憶の中の誰かが囁く。異世界の調停者、シエル・バーンズがいつか口にした言葉だった。
激変する日常は、情緒不安定になる。
殺人が許される戦場と、制約だらけの日常との軋轢。
笑い方を忘れたのはいつからだったろう。
「幸い、大事にはならなかったのですから安心して下さい。目撃者への根回しは完璧です、軍に気付かれる恐れもないでしょう」
在りし日の夢と、死後の夢。
叶えるためには、争いが必要だと誰かが言う。
「俺が、殺そうとした……?」
罪もない、いたいけな少女を?
「はい、魔法を使って殺そうとしました。腕を折るのが正しかったかは分かりませんが、結果としては上々でしょう」
カチリ。
声は届かない。
ハッキリと思い出したのだ。
言霊を唱えて熱が集まる感覚も、魂を壊せるのだと歪んだ笑みを浮かべる感覚も、鮮明に思い出した。
「ち、違う……」
そんなこと、望んでいない。
殺すのは敵だけだ、壊すのは敵だけだ。これ以上、この身で罪を犯すつもりなど無い。
だというのに、何故。
「違う……」
人殺しなんて、馬鹿げたことをしようとしたのだ。
救済だなんて、出来もしないことをしようとしたのだ。
「違う……」
主人公になんて、なれるワケないじゃないか。
「否定しようとも事実は変わりませんよ。私が止めなければ、確実に殺していました」
同年代の上司は、冷徹な視線を向けて叱る。
それが怖くて、俯いてしまった。
「ゴメンなさい……」
自然と謝罪の言葉が漏れた。
何故だろう、幾度となく口にした気がする。
「私に謝られても困ります。班長として、血の闘争団としての責務を果たしたにすぎません」
「ゴメン……」
相手を違えていると知っていても、謝らずにはいられない。
真に謝罪するべきはあの少女だというのに。
「まあ、あなたの気持ちも分かりますがね。“奴隷だなんて可哀想だ、助けてあげないと”という所でしょうか」
由梨花は小さな溜め息を吐き、誰かの心情を考察した。
違う、もっと醜悪で、残酷で、陰鬱な感情だ。
「いいですか、ここはゲームの世界などではありません、確実に存在する異世界です。モブキャラなどどこにもいません、皆が物語を紡ぐ主人公なのです。余計な介入、ましてや殺害など許されません」
そんなことは百も承知だ。
実際に生きている人がいて、懸命に働いている人がいる。誰かの帰りを待ってくれている人もいるのだ、今ここにはいなくとも。
水槽の脳や哲学的ゾンビという思考は何度も繰り返したが、結局、考えるだけ無駄だった。
「私たちはただ、敵を討つ為に存在する異分子です。この世界へ堕とされた異端者です。だからといって、秩序を乱して良いという言い訳にはなりませんよ」
意図せずして来訪した異世界。
災厄をもたらす自分たちは、まさに癌だ。
「ゴメン……」
「謝られても困ると言ったでしょう。まず、あなたの心の弱さをどうにかしなければならないのです」
怒られることは、苦痛ではなかった。
由梨花に嫌われてしまうのではないか──それが一番怖かった。
「心……?」
衣擦れの音と、地面を強く蹴り上げる音に顔を上げる。
少女は高らかに、祈りの言葉を口にした。
「生涯忠誠、命を懸けて!」
直立不動のまま、声を張り上げる。
海兵隊の胸に宿る深い森。
「行いが悪ければ叱ります、道を違えれば連れ戻します、変り果てたら殺します。だから瑞希、私を信じて下さい」
哀れみなど無い、同情など無い。
力強い信念を宿した瞳に、貫かれた。
「私は決して裏切りません、約束を違えません。だからどうか、信頼して下さい」
信じなければ裏切られることは無い──そんなことは知っている。
人間は結局一人、孤独であることが強さになる──それも知っている。
それでも。
「この世界で、共に生きていきましょう」
隣に誰もいないのは、寂しい事だから。
「ワガママ姫を信じろって……?」
「何ですかその蔑称は。バカにしていますよね?」
「事実だ。ていうか何だよ、どっかの洋画で言ってそうなセリフだったな、もう一回言ってくれ」
気を使われるのがおかしくて、つい軽口を言ってしまう。
それに殺意満々な相手を信じるバカが何処にいるのか。
それでも。
「嫌ですよ。アレはマリーの受け売りです、聞きたいなら彼女にどうぞ」
「マジかよ……」
テキトーな冷やかしだというのに、真面目に返されてしまった。団長に聞くのは躊躇われる。
「それにしても、本当にあなたは人の話を聞きませんね。奴隷というワードがきっかけでしょうが、あなたが思っているほど、この世界の奴隷は悪い扱いを受けていませんよ」
「へ……?」
話題は変わり、グラナのものへ。
落ち着いて話をする為か、由梨花はゆっくりと正座になおり、目線を合わせた。
「執事やメイド、と言えば分かりやすいですか? 殆どが過酷な労働を強いられず、十分な対価を受け取っています」
「へえ……古代エジプトみたいな?」
「あれはピラミッド建設ですよ。確かに、発掘されたものから当時の奴隷の生活が分かりますが」
世界史は苦手なんだ、そんなことは知らない。
「まぁそういうことです、決して悪いイメージを抱かないで下さい」
「じゃあ、なんであんな格好で? そういうプレイか?」
「貧相な発想ですね、では下げますね」
「悪かった、だから下げないで」
「は?」
「すみませんでした、どうか全部食べさせて下さい」
「ちっ」
「えぇ……」
まだ残っている朝食を死守し、落ちてしまった箸の汚れを払う。
手の届かない場所まで退避させるのを見届けた後、由梨花は言葉を続けた。
「唯一の形見らしいですよ。だから、孤児院でもずっと着ていたとか」
「孤児院……?」
「頑なに着替えを拒否したらしいので、諦めてそのまま出歩いたそうです。あの人もあの人です、自分の印証を悪くするだけだというのに」
「あの人……? え、誰のこと?」
「頭が薄いあの男ですよ。隣にいたでしょう」
「薄い……あぁ、頭のことか」
「立派な人なのですがね……」
グラナを連れ歩いたジェントルマンのことで間違いないようだ。
奴隷を侍らせた、髪の薄い大富豪。
「グラナは使用人として引き取られたそうです。今頃は立派なメイド服に着替えているでしょう」
「使用人?」
「言い方を変えれば奴隷です」
「性奴れ──」
「は?」
「すみません……」
厳とした声音と、強張った表情で遮られる。
下ネタは気に入らないようだ。
「疑うのなら、明日にでも見に行くと良いでしょう。とあるホテルで働いています、それはそれは豪勢なホテルです」
「ラブホ──」
「は?」
「すみません……」
言いたいことも言えない、こんな間柄で信頼云々とは図が高い。
それでも。
「まあ……案内してあげますよ」
親しき中にも礼儀あり。
「どうも……」
共に約束した仲ではないか。
命を燃やす旅に出て、必ず帰る約束をした。
「そうだ、俺の金を使い込んだことは忘れてないからな?」
「あっ……」
事の危険度は低いが、立派な犯罪だ!
「服も何も買えてないんだぞ!? どうしてくれるんだ、金を返せ!」
「初任給はお世話になった人の為に使うのですよ? わざわざ瑞希が購入する手間を省いたのです、むしろ感謝して欲しいくらいですよ」
「ふざけんな、ティアにお土産でも買おうと思ってたんだよ! 俺の財布はどこだ、部屋に置いたままか?」
「安心して下さい、私が持っています」
「は?」
ゴソゴソとまさぐったかと思うと、見覚えのある巾着袋を取り出した。すっかりとしぼんでいるソレは、俺の物によく似ている。
というか俺のだ。
「返せー!」
「牢屋生活に不要でしょうから、これは私が預かります」
「犯罪だぞ!? イケナイことなんだぞ!?」
「うるさいですね、全て使いますよ?」
「それは恐喝なのか!?」
人質の命が危険だ、このままでは洋服だったり香水だったり光物だったりに変わってしまう。
「そうだ、私が瑞希の服を買ってきてあげますよ。残りの金貨なら、丁度一着分は購入できますから」
「は、はあ!?」
「サイズは把握しています、心配しないで下さい」
「心配なんかするかー!」
この女、どこか狂っているのではないだろうか。
「まぁまぁ……おや? 瑞希、あの硬貨はどこへやりました?」
袋をまさぐりながら、由梨花が問う。
「あの硬貨?」
「日本の硬貨ですよ。昨日はあったんですが……」
「そこに混ぜてた筈だぞ。俺は金貨と間違えないし、由梨花が会計に使ったんだろ。許さないからな」
「言ったでしょう、価値はないと。しかし、私も使った覚えはありません」
金本位制であるこの国で、アルミや銅で製造された円硬貨に価値は無い。
それは日本人である俺たち二人は知っていて当然。
「じゃあ?」
「どうしてないのでしょう?」
未知の硬貨を貰って、大はしゃぎしていた少女の姿が脳裏に浮かぶ。
と共に、一つの疑念が生まれた。
「まさか」
「まさか、かもしれませんよ」
街へ出向く直前、マリーが釘を刺していた。
「スリ?」
「でしょうね。しかし、いつスられたのでしょう?」
由梨花が使っていた時にはあった。しかし、今はない。
空白の時間に、俺は買い物をしていない。
帰り道にでもスリにあったか? いや、人通りの無い道を通って帰ったのだ、スリになんて遭遇していない。
「まさか」
「まさか?」
思い出した。
とある公園で、ほんの一瞬、ポケットから逃げ出していた。
あの少女とぶつかった際に、いつのまにか落ちていた。
「まさかだよな?」
「はぁ?」
奴隷の少女がスリをするなんて、まさかだろう。
由梨花の話を聞く限り、スリという悪事を働かずとも生きていけるのだから。
「まさか……」
「大丈夫ですか?」
ふつふつと、とある感情が湧いてきた。
「ここから出せ由梨花! あいつスリだ! あいつに盗まれたんだ!」
確証は無い。
しかし、状況的に判断した結果、そうとしか思えない。
「出しませんよ。出た所でなにをするのですか? ホテルへ宿泊するのですか?」
「取り戻しに行くんだよ、俺の610円!」
「その執着心はどこから生まれているのですか」
「いいから出せー!」
価値がないのは分かってる、だが取り戻さなければ。
唯一所持していた、別の世界の物品。
大切な、繋がり。
「今日一日は許しません、ここで過ごしていて下さい」
「はあ!?」
「このホテルも悪くはないですよ? 三食付きますし、清掃はされていますし、ドラキュラが出るという逸話もあります」
「コウモリでも住み着いてるのか!? そんなのイヤだ、出してくれ!」
「いいではないですか、精神が鍛えられます。私が情報を集めておきますから、ここで大人しく待っていて下さい」
「いやだー!」
「では、優雅な食事を続けて下さい」
「待ってくれー!」
祈り届かず、由梨花は牢屋を後にする。
静寂が戻った時、不意に蓬莱の玉の枝の話を思い出した。
車持皇子がかぐや姫に求婚し、条件としてリクエストされた物品だ。皇子は自身の財力をもって、ありもしない枝を作ったのだ。
全ては楽園へ至るため。
かぐや姫を迎え入れ、幸せな生活を築く為。
「僕がいて、良かったって……思う?」
きっと、これは俺の望み。
自身の記憶を用いて、ありもしない幻想を作ったのだ。
由梨花が姿を消した途端に現れた、頭上をへ視線を向ける少年を。
「もちろん……」
いつかの青春。
決別しなければならない過去。
「俺も……いて良かった」
もっと知りたい。
もっと話したい。
もっと思い出したい。
「でも……今は、望まない」
それでも。
ここにいる俺が全てだ。
情緒不安定な、心の弱い俺が全てだ。
「もう、出てくるな」
囚われていたのは俺だ。
理解してくれる友がいる。
理解しようとしてくれる仲間がいる。
受け入れてくれた姉がいる。
受け入れてくれた家族がいる。
だから。
強くなるために、別れよう。
「そっか……えへへ、嬉しいな」
寂し気に笑って、少年は消えた。
静かな部屋で、残りの朝食を胃に収めた。
孤独が嫌いなワケではない。
ただ、心の隙間を埋めたいだけだ。
そんな過去の自分とは、今日でお別れ。
昼と夜は通常の食事で、パンとサラダの一般的なもの。
運んできたのは、まさかのヴァルター・タリスマンだった。処刑人でも現れたかと驚くと、露骨に傷付いた顔をされた。
曰く、妹から逃げる口実として、配膳任務に志願したとのこと。妹のフリーデから執拗に迫られ、碌に休めない日々を過ごしているらしい。食事を運ぶと、すぐに隣の牢屋へ入って眠り始めた。どうせならもっと話をしたかったが、頬がこけるほどやつれていたので躊躇われた。
コウモリ男だな、なんて思った。
ノーレンに付き、由梨花に付き、ふらふらと滑空するこの騎士が、なんとなくそう思えた。妹との関係は、話してくれるまで聞かないでいよう。
大切な、仲間だから。
大切な、家族だから。
夢を見よう。
あの子の元へ帰る夢を。
お土産は何がいいだろう、都で流行している物がいいだろうか。
何を持って行ったとしても、きっとはにかんだ笑顔を向けてくれる。
そうだ、手紙は何て書こう。
最近起きたことでもいいか。最近……ゲロ事件? 粉砕事件? 碌な事がない。まあ、ありのままを書いていいだろう。
何を書いたとしても、きっと……やばい、この世界の言語で書けない。日本語なんて読めないぞ、あの子には。誰かに書いてもらおう、隣で寝てるヴァルターでいいか。
劣悪な環境のホテルで、満たされる夢の華を咲かせた。
花壇は胸の奥にしまったまま。
物足りなさを堪えて。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる