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プロローグ的な
曹長、異世界人へ②
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「釣れねぇ……」
愚痴を零しながら竿を手繰る。
休日には釣りをすることが、アハト・カヴェナンターの息抜きだった。というのも、娯楽という名の付く施設が存在しないこの島では、それくらいしかすることが無いためである。
学校に通う生徒など片手で数えるほどしか存在しない程、人口は少ない島。そんなこと気にもせず、少年少女はたくましく生活しており、釣り竿の先に見える浅瀬では元気に水泳大会を開催中だ。
針がかかっては危険なので、今日の釣りはおしまい。
釣果はゼロだが特段気にはならない。結局は時間つぶしだ、ただ波の音を聞いて、魚の撥ねる姿を見て、鳥の囀りに耳を傾けて、時を過ごす。
存外悪くないものではあるが、いい加減飽きてきていた。
(これが軍人としての生き方には思えないな……)
アハトはイデアル・プトラオム王国から派遣された軍人であり、この島に彼を含めた小隊が駐留し、とある任務を継続している。
つまらない日常。
これとアレを守ることが任務だということは理解しているが、どうも納得いかない。
(考えるだけ無駄だな。どうせ後一年すれば警備人員は交代するし、俺は内地に戻れるんだ)
あと、一年。
そうしたら、この島を出る。
本来いるべき場所で、闘える。
「アハト! ねえアハト!」
「ん?」
帰りの身支度をしていると、聞き慣れた声が名を呼んだ。
「一緒に帰ろ!」
肌を褐色に焼いた少女が、とてとてと浜から小走りに歩いてくる。
帰る──とはいっても、ここから歩いて十分もかからない。島を一周するのだって半日あれば容易である。どこに誰の家があるのかは、頭に完璧に埋め込まれているのだ。まあそれはいい。
自宅である寮、その向かいの雑貨屋に住んでいるこの少女が、わざわざ一緒に帰ろうとする理由は明白だ。
一つ、魔物に襲われたくないから。
二つ、島の外に出したくないから。
魔物の支配地域から最も遠く絶海の孤島であるこの島に、魔物は滅多に出現しない。だからこそ海で呑気に泳げるのだが、極々稀に湧いて出る。その場合は駐留しているアハトたち軍人と、島の自警団が相手をする。
二つ目の理由は簡単だ。この島で、漁師だったり庭師だったり料理屋だったり、危険の少ない人生を選んで欲しいと訴えるのだ。刺激も何もない、平和で気怠い生活を。
「今日は何か釣れた? またボウズ? あはは、漁師には向いてなさそうだね」
「またって言うな。もう少し粘ればきっと釣れてたさ」
「ホントかなー? 毎週のとある曜日には、我が家に魚料理が並んでないけれど?」
「知らないな。マリンが買えばいいだろ、あるいは素手で捕まえるとか」
「泳ぎが苦手なの知ってるくせに、そんなこと言うんだ」
「散々教えてあげただろ」
「もっと教えて欲しいな、時間も多めにとって。一年くらい」
どれだけ苦手なんだ、という言葉は飲み込む。
あと、一年。
呪文のように繰り返される言葉は、いつの間にか俺を縛っていた。
「ねえ……アハトはさ、そんなにこの島が嫌いなの?」
黙ったアハトを見かねて、マリンはいつものセリフを吐く。
「そりゃ、マリンだって都に行きたいと思うけどさ……のんびりするのもいいじゃない? 海で遊んで、魚を釣って、山を登って……それなりに生きるのも、悪くないと思うけどなぁ」
呟くように、掻き消えそうな言葉を紡いだ。
「一緒にいたいのになぁ……。お姉ちゃんも、そう思ってるのに」
それっきり、黙ってしまう。
特段、島が嫌いというわけではない。それなりに悠々自適な生活を送ることに、嫌悪感など湧いてはい無い。この少女と同じ時を過ごすことにも苦痛など無い。無言の空間も、まるで当然であるかのように不快どころか心地よい。
しかし、刺激が足りない。
最後に魔物が姿を現したのは半年前。海を渡ってアンデッドが数体のみ這い上がり、人間どころか家畜にさえ被害は出ず、アハトが到着するよりも先に他の軍人によって討伐されたというなんとも呆気ない事件だ。
きっかけが、欲しい。
自分がここに存在していることを証明できる、きっかけが。
「そういえば、さ」
まだ何か言い足りないのか、マリンが口を開く。
「もうすぐムート祭りだね。軍人さんたちも参加するんでしょ?」
「あぁ……もうそんな季節か。通りで、センチネルがいつも以上にピリピリしているわけだ」
「あはは、あの中尉さんは神経質だよね。その点、アハト・カヴェナンター曹長は軍人らしさがまるでありません」
マリンはビシ、と指を突き付けて宣言する。
(コイツにとって、俺は近所の兄ちゃん程度の存在か……)
自分に言われるのは構わないが、あまりにも危険な物言いである。この会話を上官であるシルヴィア・センチネル中尉に聞かれでもしたら、マリンに鉄拳が食らわせられかねない。
「あまり王国軍人を舐めるなよ。それに曹長ってのは下士官では最上級なんだ、エリートなんだからな」
「難しい話は分かりませ~ん」
「散々教えてやった筈なんだが? クリスタさんからも聞いてないのか?」
「無茶な野戦を繰り返して昇進したなんて知りませ~ん」
口をへの字に曲げてそっぽを向く。
(天邪鬼なヤツ……いや、子供なんだから当然か。分かりやすい程純真な心)
「そんなことより」
「そんなことかぁ」
もっと構って欲しかったのか、マリンはうなだれてしまう。
「ムート祭りか……今年で最後になるかもな」
それは島で年に一度行われる一大行事だ。豊穣への感謝、慰霊の為の儀式、それらを内包した一夜限りのお祭り騒ぎ。
当然アハトたち駐留軍人も参加するが、飲酒は硬く禁じられている。警備こそが彼らの本懐である為だ。
「いつものように飲んで騒いで終わるだろうけど。区長も太っ腹だよな、一度でどれだけの金貨が飛んでいくのやら」
「うん……」
「ベリアル・マキーナも見納めだな。後任の為にも、蔵へ封印する時には綺麗に磨いておいてやるか」
「…………」
「マリン?」
反応が返ってこないことを心配して顔を覗き込むと、瞳を真っ赤に染めたマリンがいた。
「嫌だよぉ……最後だなんて、言わないでよぉ……」
微かに聞こえるような弱々しい声。
「お姉ちゃんを助けてくれた恩人なのに……何も恩返し出来てないのに……勝手にいなくならないでよぉ……」
グスグスと嗚咽が漏れ聞こえてきた。
(純真無垢……どうしてそこまで信じられるんだか。一度折れれば立ち直れない程に脆い精神は命取りだ。いや、この平和な島だからこそ……)
「いいかマリン、あれは軍人として当然の務めだったんだ。お前が気負う必要は無いし、クリスタさんも恩を感じる必要は無い」
「うぐぅぅぅ……」
「そんな顔するなよ、まだ一年あるんだから。どれだけ成長出来るだろうな? 俺好みの女だったら、上に無理言って任務を継続させて貰おう」
隊長直伝であるこの言い回しは心底嫌いではあるが、空気を変える為ならば仕方ない、甘んじて利用する。
「ほんとっ!?」
「嘘だよ」
「…………」
凍り付いたマリン。それを見て、内心では慌てながらも新たな提案を冷静に選び出す。
「じゃ、まだ日が登ってるし海で泳ぐか。じっくり教えてやるよ、鬼のようにな」
「ほんとっ!?」
「ほんと」
「やったー!」
コロコロと表情を変えるマリンがおかしくて、つい口元が綻んでしまう。
(マリンには笑顔が似合ってる。愛想笑いばかりのアイツらよりもよっぽど人間らしい……これで年が同じくらいだったら、もしかしたら……)
邪な考えは振り払って、マリンに手を引かれながら砂浜へと歩を進めた。
「厳しくいくぞ、覚悟はいいな? 元・鬼軍曹の異名は伊達じゃないことを思い知らせてやる」
「はいはーい!」
忠告を左から右へ受け流し、マリンは心底嬉しそうにはしゃぎ回る。
(まぁ、いいか。この日常が戦争神経症を和らげてくれたんだし、俺も恩返しをしなきゃいけない。この一年で、どれだけのことが出来るのか……)
刹那の瞬間思い返したのは、内地での勤務風景。
終わることの無い戦争の日々。
その中で、ただ感情を殺して戦い続けた。
「ん……?」
アハトたちの目の前には見慣れた海岸が広がっている、それ自体には何も異常がない。だが、一つだけ、ありもしない異常存在が混ざっていた。
「何あの人、見たことないねー。でも綺麗な服!」
見慣れない洋服に身を包む少女が、浜辺を優雅に散歩している。それを見て、マリンの瞳には好奇の輝きが爛々と光っていた。
(嘘だろ……どうしてお前たちが、ここにいる!?)
ゆっくりとマリンの手を引き、アハトの後方へと下がらせる。身軽な少女は思うままに宙を舞い、何故そんなことをされたのかと不思議そうな──ともすれば間抜けな顔を浮かべた。
「ど、どうしたのアハト──」
マリンの声を置き去りに、警戒を強めて歩を進める。
まずは判断しなければならない。こいつが、本当にそうなのか。
「あ、第一村人発見! 金髪! それ地毛!? 明らかに日本人じゃない顔! 背も高い! 巨根そう!」
見慣れない黒髪の少女は、アハトを目撃すると途端にパァっとした笑顔を浮かべ、理解出来ない言葉を次々に連ねていく。やがて恥だと思い返したのか、一つ咳払いして改めた。
「あぁっとこの言い方は失礼ね。えと……初めまして。私は生徒会長の園崎──」
それを無視し、静かに、厳とした声で問う。
「お前、何者だ」
後ろ手に隠した掌に雷光を纏い、その存在を確かめた。
愚痴を零しながら竿を手繰る。
休日には釣りをすることが、アハト・カヴェナンターの息抜きだった。というのも、娯楽という名の付く施設が存在しないこの島では、それくらいしかすることが無いためである。
学校に通う生徒など片手で数えるほどしか存在しない程、人口は少ない島。そんなこと気にもせず、少年少女はたくましく生活しており、釣り竿の先に見える浅瀬では元気に水泳大会を開催中だ。
針がかかっては危険なので、今日の釣りはおしまい。
釣果はゼロだが特段気にはならない。結局は時間つぶしだ、ただ波の音を聞いて、魚の撥ねる姿を見て、鳥の囀りに耳を傾けて、時を過ごす。
存外悪くないものではあるが、いい加減飽きてきていた。
(これが軍人としての生き方には思えないな……)
アハトはイデアル・プトラオム王国から派遣された軍人であり、この島に彼を含めた小隊が駐留し、とある任務を継続している。
つまらない日常。
これとアレを守ることが任務だということは理解しているが、どうも納得いかない。
(考えるだけ無駄だな。どうせ後一年すれば警備人員は交代するし、俺は内地に戻れるんだ)
あと、一年。
そうしたら、この島を出る。
本来いるべき場所で、闘える。
「アハト! ねえアハト!」
「ん?」
帰りの身支度をしていると、聞き慣れた声が名を呼んだ。
「一緒に帰ろ!」
肌を褐色に焼いた少女が、とてとてと浜から小走りに歩いてくる。
帰る──とはいっても、ここから歩いて十分もかからない。島を一周するのだって半日あれば容易である。どこに誰の家があるのかは、頭に完璧に埋め込まれているのだ。まあそれはいい。
自宅である寮、その向かいの雑貨屋に住んでいるこの少女が、わざわざ一緒に帰ろうとする理由は明白だ。
一つ、魔物に襲われたくないから。
二つ、島の外に出したくないから。
魔物の支配地域から最も遠く絶海の孤島であるこの島に、魔物は滅多に出現しない。だからこそ海で呑気に泳げるのだが、極々稀に湧いて出る。その場合は駐留しているアハトたち軍人と、島の自警団が相手をする。
二つ目の理由は簡単だ。この島で、漁師だったり庭師だったり料理屋だったり、危険の少ない人生を選んで欲しいと訴えるのだ。刺激も何もない、平和で気怠い生活を。
「今日は何か釣れた? またボウズ? あはは、漁師には向いてなさそうだね」
「またって言うな。もう少し粘ればきっと釣れてたさ」
「ホントかなー? 毎週のとある曜日には、我が家に魚料理が並んでないけれど?」
「知らないな。マリンが買えばいいだろ、あるいは素手で捕まえるとか」
「泳ぎが苦手なの知ってるくせに、そんなこと言うんだ」
「散々教えてあげただろ」
「もっと教えて欲しいな、時間も多めにとって。一年くらい」
どれだけ苦手なんだ、という言葉は飲み込む。
あと、一年。
呪文のように繰り返される言葉は、いつの間にか俺を縛っていた。
「ねえ……アハトはさ、そんなにこの島が嫌いなの?」
黙ったアハトを見かねて、マリンはいつものセリフを吐く。
「そりゃ、マリンだって都に行きたいと思うけどさ……のんびりするのもいいじゃない? 海で遊んで、魚を釣って、山を登って……それなりに生きるのも、悪くないと思うけどなぁ」
呟くように、掻き消えそうな言葉を紡いだ。
「一緒にいたいのになぁ……。お姉ちゃんも、そう思ってるのに」
それっきり、黙ってしまう。
特段、島が嫌いというわけではない。それなりに悠々自適な生活を送ることに、嫌悪感など湧いてはい無い。この少女と同じ時を過ごすことにも苦痛など無い。無言の空間も、まるで当然であるかのように不快どころか心地よい。
しかし、刺激が足りない。
最後に魔物が姿を現したのは半年前。海を渡ってアンデッドが数体のみ這い上がり、人間どころか家畜にさえ被害は出ず、アハトが到着するよりも先に他の軍人によって討伐されたというなんとも呆気ない事件だ。
きっかけが、欲しい。
自分がここに存在していることを証明できる、きっかけが。
「そういえば、さ」
まだ何か言い足りないのか、マリンが口を開く。
「もうすぐムート祭りだね。軍人さんたちも参加するんでしょ?」
「あぁ……もうそんな季節か。通りで、センチネルがいつも以上にピリピリしているわけだ」
「あはは、あの中尉さんは神経質だよね。その点、アハト・カヴェナンター曹長は軍人らしさがまるでありません」
マリンはビシ、と指を突き付けて宣言する。
(コイツにとって、俺は近所の兄ちゃん程度の存在か……)
自分に言われるのは構わないが、あまりにも危険な物言いである。この会話を上官であるシルヴィア・センチネル中尉に聞かれでもしたら、マリンに鉄拳が食らわせられかねない。
「あまり王国軍人を舐めるなよ。それに曹長ってのは下士官では最上級なんだ、エリートなんだからな」
「難しい話は分かりませ~ん」
「散々教えてやった筈なんだが? クリスタさんからも聞いてないのか?」
「無茶な野戦を繰り返して昇進したなんて知りませ~ん」
口をへの字に曲げてそっぽを向く。
(天邪鬼なヤツ……いや、子供なんだから当然か。分かりやすい程純真な心)
「そんなことより」
「そんなことかぁ」
もっと構って欲しかったのか、マリンはうなだれてしまう。
「ムート祭りか……今年で最後になるかもな」
それは島で年に一度行われる一大行事だ。豊穣への感謝、慰霊の為の儀式、それらを内包した一夜限りのお祭り騒ぎ。
当然アハトたち駐留軍人も参加するが、飲酒は硬く禁じられている。警備こそが彼らの本懐である為だ。
「いつものように飲んで騒いで終わるだろうけど。区長も太っ腹だよな、一度でどれだけの金貨が飛んでいくのやら」
「うん……」
「ベリアル・マキーナも見納めだな。後任の為にも、蔵へ封印する時には綺麗に磨いておいてやるか」
「…………」
「マリン?」
反応が返ってこないことを心配して顔を覗き込むと、瞳を真っ赤に染めたマリンがいた。
「嫌だよぉ……最後だなんて、言わないでよぉ……」
微かに聞こえるような弱々しい声。
「お姉ちゃんを助けてくれた恩人なのに……何も恩返し出来てないのに……勝手にいなくならないでよぉ……」
グスグスと嗚咽が漏れ聞こえてきた。
(純真無垢……どうしてそこまで信じられるんだか。一度折れれば立ち直れない程に脆い精神は命取りだ。いや、この平和な島だからこそ……)
「いいかマリン、あれは軍人として当然の務めだったんだ。お前が気負う必要は無いし、クリスタさんも恩を感じる必要は無い」
「うぐぅぅぅ……」
「そんな顔するなよ、まだ一年あるんだから。どれだけ成長出来るだろうな? 俺好みの女だったら、上に無理言って任務を継続させて貰おう」
隊長直伝であるこの言い回しは心底嫌いではあるが、空気を変える為ならば仕方ない、甘んじて利用する。
「ほんとっ!?」
「嘘だよ」
「…………」
凍り付いたマリン。それを見て、内心では慌てながらも新たな提案を冷静に選び出す。
「じゃ、まだ日が登ってるし海で泳ぐか。じっくり教えてやるよ、鬼のようにな」
「ほんとっ!?」
「ほんと」
「やったー!」
コロコロと表情を変えるマリンがおかしくて、つい口元が綻んでしまう。
(マリンには笑顔が似合ってる。愛想笑いばかりのアイツらよりもよっぽど人間らしい……これで年が同じくらいだったら、もしかしたら……)
邪な考えは振り払って、マリンに手を引かれながら砂浜へと歩を進めた。
「厳しくいくぞ、覚悟はいいな? 元・鬼軍曹の異名は伊達じゃないことを思い知らせてやる」
「はいはーい!」
忠告を左から右へ受け流し、マリンは心底嬉しそうにはしゃぎ回る。
(まぁ、いいか。この日常が戦争神経症を和らげてくれたんだし、俺も恩返しをしなきゃいけない。この一年で、どれだけのことが出来るのか……)
刹那の瞬間思い返したのは、内地での勤務風景。
終わることの無い戦争の日々。
その中で、ただ感情を殺して戦い続けた。
「ん……?」
アハトたちの目の前には見慣れた海岸が広がっている、それ自体には何も異常がない。だが、一つだけ、ありもしない異常存在が混ざっていた。
「何あの人、見たことないねー。でも綺麗な服!」
見慣れない洋服に身を包む少女が、浜辺を優雅に散歩している。それを見て、マリンの瞳には好奇の輝きが爛々と光っていた。
(嘘だろ……どうしてお前たちが、ここにいる!?)
ゆっくりとマリンの手を引き、アハトの後方へと下がらせる。身軽な少女は思うままに宙を舞い、何故そんなことをされたのかと不思議そうな──ともすれば間抜けな顔を浮かべた。
「ど、どうしたのアハト──」
マリンの声を置き去りに、警戒を強めて歩を進める。
まずは判断しなければならない。こいつが、本当にそうなのか。
「あ、第一村人発見! 金髪! それ地毛!? 明らかに日本人じゃない顔! 背も高い! 巨根そう!」
見慣れない黒髪の少女は、アハトを目撃すると途端にパァっとした笑顔を浮かべ、理解出来ない言葉を次々に連ねていく。やがて恥だと思い返したのか、一つ咳払いして改めた。
「あぁっとこの言い方は失礼ね。えと……初めまして。私は生徒会長の園崎──」
それを無視し、静かに、厳とした声で問う。
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